連載《プリズム》

一か百かでないBCP

 災害発生後の72時間(3日間)は、人命救助のタイムリミットとされるが、介護保険事業所に義務づけられているBCP(業務継続計画)においても災害備蓄品の量は、3日分が基本になる。3日間持ちこたえれば、行政や支援者など、外からの助けが期待できるからだ。

  しかし、能登半島地震では災害規模と地域特性のために、奥能登では2カ月経った今も、支援ルートが限られることから、壊滅的な住まいの状況や、水などのインフラは復旧していない。
 
  中能登の七尾市でも、日々の生活を支える水道が止まり、復旧は4月以降になると行政から説明されている。元日の発災時は大津波警報で一斉に高台へ逃げた。電気はまもなく復旧し、段差や亀裂、波打つ道路は懸命の工事で車が安全に通れるようになった。ただ、水がないので、料理は思うにまかせず、トイレはペットボトルで流し、風呂には入れず、洗濯もできない。災害はいつも想定外だが、インフラが戻らない中でのBCP策定や備蓄品の準備は、ほんとうに難しい。
 
   2011年5月10日号の本紙で、当時の厚労省老健局の川又竹男振興課長は、「『平時』を前提として組み立てられている介護保険制度として、未曾有の大震災にどう対応していくのか、様々なことを考えさせられた」と語っている(18面アーカイブス)。今年4月から介護保険事業所で、自然災害と感染症のBCP策定が基本として義務づけになる。

  自らも被災する中で、退避が困難な要介護高齢者を、在宅や施設でどう守るのか。地震国日本の介護に突きつけられた避けられない難問だ▼BCPの答えには、一か百かはないのだろう。能登でも、BCPがあったから、戸惑いながらも何とか対処することができたという声が多かった。振興課長は、安否確認やサービスの継続のためにケアマネジャーの役割が非常に重要と述べている。

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