連載《プリズム》

経済を支える社会保障

経済を支える社会保障

 老後の安心がなければ、消費は増えない。2014年度の全国消費実態調査(16年3月総務省発表)では、高齢者単身世帯のうち、要介護認定を受けて「居宅サービス等を利用している世帯」についてみると、消費支出に占める護サービスの割合は8.7%だった。(プリズム2016年6月)

 介護サービスへの支出は1割近くを占めていることが分かる。利用者負担の負担感は強い。居宅サービス等を利用している高齢者単身世帯の平均年齢は、82.1歳。要介護認定を受けていない世帯の平均年齢は74.0歳。両者には約8年の開きがある。介護サービスを受けている世帯は、交通・通信、教養娯楽などの支出割合が低い。一方、保健医療費の支出割合は高くなっている。

 高齢無職単身世帯の家計収支は、預貯金の取り崩しで成り立っている。男性の実収入は月13万9385円で、このうち92.5%は年金などの社会保障給付だ。女性は男性より1万円程度、実収入が少ない。支出との差額は、男女とも、月3万円強で、毎月、預貯金など金融資産が取り崩されている。

 そのストックだが、高齢単独世帯の貯蓄高は、300万円未満が25.6%、300~1500万円が40.5%、1500万円以上が34.2%。貯蓄を保有している世帯のみの集計だが、開きが大きい。

 年齢層別で単身世帯の貯蓄高・年間収入をみると、収入の一番多い50歳代は男性で貯蓄1482万円、収入497万円。女性で貯蓄1383万円、収入359万円。60歳代は貯蓄高が最も高く、男性で貯蓄1611万円、収入260万円。女性では貯蓄1622万円、収入215万円。70歳以上になると、男性で貯蓄1501万円、収入268万に、女性で貯蓄1432万円、収入215万円になる。

 調査では、消費が抑制傾向にある。介護や医療の利用者負担が上がると、その他の消費が抑えられる傾向がみられた。預貯金残高が減れば、さらに消費が抑制される。年金、医療、介護の社会保険制度は、老後の安心ばかりか日本の経済をも支えている。

(シルバー産業新聞2016年6月10日号)

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