連載《プリズム》

老人よ、竹やり訓練を行うのか

老人よ、竹やり訓練を行うのか

 地球はひとつでも、世界はひとつになれない。第2次世界大戦が終わった束の間を除いて、ずっと各地域で紛争や戦争が繰り返されてきた。敗戦国、日本の憲法には、その束の間の、人々の平和を願う理想が込められている。(プリズム2015年7月)

 日本の警察官や自衛隊のピストルや大砲が理由もなく人に向けられることはこれまでなかった。しかし、いま日本は、いつもどこかで殺戮が行われてきた世界の中に組み込まれようとしている。

 高齢化率は26%。14歳以下人口は65歳人口の2分の1以下という老人大国の日本で、だれが武器をもって戦うというのか。次代を担う若者ばかりを戦地に向かわせることはできない。太平洋戦争末期、1944(昭和19)年10月、「兵役法施行規則」の見直しによって、徴兵年齢が、男性は16~60歳まで、女性は17~40歳まで広げられた。平均寿命が50歳にも満たなかった時代である。それが60歳まで徴兵に取られるとすれば、万一、将来の日本で徴兵制になれば、少なくとも男性は健康寿命の72歳程度までは徴兵される可能性がある。「老人よ、体を鍛えておけ」とばかりに、地域支援事業で、竹やり訓練が行われないとも限らない。政府の武力攻撃事態法などが想定する世界は、映画やテレビやゲームのような世界ではない。銃弾に当たれば、血が流れる。

 「文化芸術懇話会」という名称の自民党の勉強会で、安全保障関連法案や米軍普天間基地移転に対する新聞報道に対して、出席した議員や作家から、「(そうした新聞は)潰さなければいけない」などの発言があった。近隣諸国からの侵略を未然に阻止するために在留米軍基地の存在は不可避という考えから、それに反対するような新聞や報道は一切認められないという主張だったのかも知れない。しかし、発言や執筆によって自説を世に問うのが仕事の人たちである。「異論は認めず潰せ」では、文化、芸術が泣く。武力攻撃事態法にある「日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならない」という規定も、武力攻撃の前には吹っ飛んでしまうだろう。戦争の前夜には、言論統制が行われる。歴史を繰り返してはならない。

(シルバー産業新聞2015年7月10日号)

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