地域力発見
地域包括とNPOがダブルケアカフェを開く 宮下今日子
「相談してみませんか?パパ・ママのお父さん、お母さんのこと」というチラシを作り、地域に配布しているのは、東京都杉並区の地域包括支援センター「ケア24方南」。子育て中の人に、高齢の家族についての相談も受け付け、さらにダブルケアラー向けのカフェを年に4回のペースで開いている。早速、会場を提供している「カフェミスポンヌ」(杉並区和泉)を訪ねてみた。
「カフェミスポンヌ」は、子どもから大人まで、また高齢者も過ごせるような、お洒落で明るい雰囲気。プレートランチや手作りスイーツ、コーヒーや紅茶にもこだわり、クリームソーダやナポリタンなど、懐かしいメニューが並ぶ。オーナーの鷹尾めぐみさんは“店は地域の生活の一機能”という信念をお持ちで、夕方には子どもの学習スペースとしても開放している。地域の方々の暮らしを見守る拠点だ。
ダブルケアカフェは、前回紹介した「NPO法人こだまの集い」と「ケア24方南」が、社協の助成などを受けて共催している。その日は、約10人の方が参加し、4人の子どもの姿もあった。大きなテーブルに当事者らが座り、それを専門職が取り囲む。専門職は、保健師、社会福祉士、ダブルケアラー支援のNPO、ケアマネジャーらで、アドバイス役を担う。参加者はリラックスした雰囲気の中、体験や思いを一人ひとり話していた。
ケアラーを独自に調査
「NPO法人こだまの集い」は、ダブルケアの相談機関がほとんどなかった頃に、大学の研究者と一緒にダブルケアについての調査研究を行っている(調査期間20年10月~21年1月。「ダブルケア家族の生活課題とその支援方策に関する研究―ケア開始からのプロセスに着目して」(武蔵野大学人間科学部社会福祉学科・渡邊浩文教授)。
調査では、実際にダブルケアを経験した29人にヒアリング。それぞれ異なる事情を分類して、負担を軽減する支援策を検討することを目的としている。
調査によると、ダブルケアが始まった時の年代で最も多いのは30代(62.1%)で、続いて40代(27.6%)。妊娠中に介護が始まったケースは17.2%あった。子育てより介護が先に始まったケースは27.6%。背景には晩婚・晩産化の影響がある。
仕事の有無については、正社員が27.6%。主婦(主夫)は37.9%と分かれたが、ダブルケアは、子育てと介護に仕事も加わり、まさに3重苦になっていることが分かる。
また、その時の要介護者の特徴について、60代が最も多く、要介護4が27.6%で最も高い。さらに認知症の割合は58.6%もあった。認知症については、要介護者のBPSDが増悪した場合ほどケアが困難になる状況が把握されている。
ケアラーから見た要介護者は、実母、実父、義母、義父の順で続き、嫁として介護を担う実態も把握されている。
報告書では「少子高齢化と晩婚・晩産化が同時に進展」していることを背景に、家事・育児・介護・仕事を重層的に担う女性への負担が集中している点と、雇用機会の喪失を引き起こす点が大きな課題だとしている。
妊娠、認知症などが負担
調査は29人もの経験者をインタビューした労作で、例えば、「3才と1才児を抱えながら、母の介護も日中は一人で担っており、何一つ思い通りにならなくて、自分の時間もなく、逃げ場もなく愚痴を吐ける仲間もいなかったので精神的に辛かった」「認知症の母への対応方法が分からなかった」「三男が生まれた頃、義父の徘徊、不潔行動」があったなど、深刻さが窺える。
妊娠中のケア、要介護者の重い認知症が重なると最も深刻な事態に陥ってしまうようだ。
相談先の作り方がカギ
調査報告書では、「すでにつながっている保育所や、病院、学校、行政機関などからのアウトリーチが必要な状況である」とまとめている。ダブルケアカフェは、アウトリーチの一つの方法になるだろう。
今回紹介したカフェでは、子育てと、母親や義母の介護、認知症の対応に追われている様子や、引っ越しも余儀なくされる事態など、様々な苦労が可視化されている。
地域包括支援センターの関根麻里絵さんは「普段接することもなく、制度自体も複雑で、ネット検索しても分からないことも多い。若い世代は高齢や障がいに関する知識が不足しやすい」と話し、高齢、障がい、母子保健等の専門職が関わる意義を指摘する。
実際、ケアマネジャーやヘルパーが、家庭をまるっと見ることで、ダブルケアラーが救われたケースも出ているそうだ。
ダブルケアカフェは、前回紹介した「NPO法人こだまの集い」と「ケア24方南」が、社協の助成などを受けて共催している。その日は、約10人の方が参加し、4人の子どもの姿もあった。大きなテーブルに当事者らが座り、それを専門職が取り囲む。専門職は、保健師、社会福祉士、ダブルケアラー支援のNPO、ケアマネジャーらで、アドバイス役を担う。参加者はリラックスした雰囲気の中、体験や思いを一人ひとり話していた。
ケアラーを独自に調査
「NPO法人こだまの集い」は、ダブルケアの相談機関がほとんどなかった頃に、大学の研究者と一緒にダブルケアについての調査研究を行っている(調査期間20年10月~21年1月。「ダブルケア家族の生活課題とその支援方策に関する研究―ケア開始からのプロセスに着目して」(武蔵野大学人間科学部社会福祉学科・渡邊浩文教授)。
調査では、実際にダブルケアを経験した29人にヒアリング。それぞれ異なる事情を分類して、負担を軽減する支援策を検討することを目的としている。
調査によると、ダブルケアが始まった時の年代で最も多いのは30代(62.1%)で、続いて40代(27.6%)。妊娠中に介護が始まったケースは17.2%あった。子育てより介護が先に始まったケースは27.6%。背景には晩婚・晩産化の影響がある。
仕事の有無については、正社員が27.6%。主婦(主夫)は37.9%と分かれたが、ダブルケアは、子育てと介護に仕事も加わり、まさに3重苦になっていることが分かる。
また、その時の要介護者の特徴について、60代が最も多く、要介護4が27.6%で最も高い。さらに認知症の割合は58.6%もあった。認知症については、要介護者のBPSDが増悪した場合ほどケアが困難になる状況が把握されている。
ケアラーから見た要介護者は、実母、実父、義母、義父の順で続き、嫁として介護を担う実態も把握されている。
報告書では「少子高齢化と晩婚・晩産化が同時に進展」していることを背景に、家事・育児・介護・仕事を重層的に担う女性への負担が集中している点と、雇用機会の喪失を引き起こす点が大きな課題だとしている。
妊娠、認知症などが負担
調査は29人もの経験者をインタビューした労作で、例えば、「3才と1才児を抱えながら、母の介護も日中は一人で担っており、何一つ思い通りにならなくて、自分の時間もなく、逃げ場もなく愚痴を吐ける仲間もいなかったので精神的に辛かった」「認知症の母への対応方法が分からなかった」「三男が生まれた頃、義父の徘徊、不潔行動」があったなど、深刻さが窺える。
妊娠中のケア、要介護者の重い認知症が重なると最も深刻な事態に陥ってしまうようだ。
相談先の作り方がカギ
調査報告書では、「すでにつながっている保育所や、病院、学校、行政機関などからのアウトリーチが必要な状況である」とまとめている。ダブルケアカフェは、アウトリーチの一つの方法になるだろう。
今回紹介したカフェでは、子育てと、母親や義母の介護、認知症の対応に追われている様子や、引っ越しも余儀なくされる事態など、様々な苦労が可視化されている。
地域包括支援センターの関根麻里絵さんは「普段接することもなく、制度自体も複雑で、ネット検索しても分からないことも多い。若い世代は高齢や障がいに関する知識が不足しやすい」と話し、高齢、障がい、母子保健等の専門職が関わる意義を指摘する。
実際、ケアマネジャーやヘルパーが、家庭をまるっと見ることで、ダブルケアラーが救われたケースも出ているそうだ。