在宅栄養ケアのすすめ

訪問栄養へ円滑につなげるために  中村育子

 介護保険の居宅療養管理指導で管理栄養士が訪問するには①栄養介入の必要性に気づく②管理栄養士を見つける③医師の指示をもらう(②・③は逆の場合も)――と幾つかのハードルをクリアする必要があります。

 ①については、これまでも幾度かお話ししてきたように、自宅へ定期的に訪問するケアマネジャーやヘルパーこそ、口腔・栄養状態の変化に気づきやすい立場にあります。まずはルーティーンとして、体重を毎月測るようにしましょう。食事量は綿密な栄養計算は不要で、食前・食後にメニュー写真を撮るだけでも十分です。こうしたスクリーニングも報酬上での評価が拡大してきています。

 ちなみに「ご飯食べられていますか?」の声かけは大切なコミュニケーションですが、スクリーニングとしては不十分です。食べていなくても、返す言葉で「食べているよ」と答える利用者が多いので確証が得られません。栄養・口腔の専門職はこうした部分の裏をとり、本当にどの程度食べられているか、家族介護力(特に買物・調理に関して)や経済力など含めたアセスメントが行えます。

 また、退院支援を適切に行っている医療機関はメディカルソーシャルワーカー(MSW)が貴重な情報源となりますので、ケアマネジャーは連携が必須でしょう。退院時カンファレンスの時点で栄養介入の是非が確認できるので、初月から訪問栄養が入れるケースも多くあります。

地域に出て多職種を知る

 ②について、「在宅訪問ができる管理栄養士」はまだまだ足りていません。在宅栄養管理学会のホームページでは実施機関の一覧を見ることができますが、その数は十分とは言い難い現状です。居宅療養管理指導は外部の医療機関や栄養ケア・ステーション等の管理栄養士との連携による算定が可能となった背景も、担い手不足によるものです。

 私の考えでは、主治医と同じ医療機関の管理栄養士が訪問するのがベストです。電子カルテ、医療情報が共有しやすく、栄養評価に必要な検査を依頼しやすい点が理由です。前号で紹介しましたが、今回の診療報酬改定では在支診・在支病の運営基準に「管理栄養士が訪問栄養を行う体制整備」が努力義務化(在支病は義務化)されます。

 管理栄養士を見つけるきっかけの一つとして、多職種が集まる勉強会等への参加をお勧めします。以前、私が在宅栄養を行っていた東京都足立区では、医療・介護の多職種研修会が活発でした。そこで初めて在宅の管理栄養士に会ったという人もいました。在宅は特に職種どうしの接点が少なくなるので、より顔の見える関係が大切になります。

利用者のニーズを伝える
 
 ③の主治医の指示書は、普段から在宅医療を展開している診療所であればお願いしやすいでしょう。しかし、指示書を出したことがほぼない医師の場合、必要性がいまいち伝わりません。根拠と、利用者・家族が希望している旨をきちんと説明することが重要です。

 根拠とは客観的な情報、つまり冒頭に挙げた体重の推移などです。そして経験上、ニーズを伝える最も効果的な手法は、主治医が往診等で自宅を訪問する際に同席し、その場で「利用者・家族が必要だと感じている」ことを認識してもらえるよう工夫しましょう。

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