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「不眠」の解消とシニアビジネスの可能性(1)/村田裕之(連載149)

「不眠」の解消とシニアビジネスの可能性(1)/村田裕之(連載149)

 今回から数回に分けて、「不眠」の解消とシニアビジネスの可能性をテーマにお話する。中高年になると睡眠障がいに悩む人が多いと思う。睡眠の質の低下は、いわゆる「睡眠負債」につながり、さまざまな病気のリスクを上げることになる。

なぜ、よく眠ることが大切か?

 健康寿命の提唱者で疫学研究の第一人者である東北大学の辻一郎教授らの研究によれば、女性2万3995人を7年間追跡し、睡眠時間と乳がんの発症リスクの関係を調べた結果、平均睡眠時間が6時間以下の人は、7時間の人に対して乳がんのリスクがおよそ1.6倍になるという知見が得られている。

 この研究で示されている睡眠時間は、あくまで平均であり、必ずしも7時間寝れば睡眠の質がよいというわけではない。しかし、人を対象にした睡眠の質と病気のリスクとの関係を示した重要なデータだ。

 これ以外にも、多くの疫学研究において睡眠の質の低下が、がんの発生、脳機能の低下など重大疾患につながる可能性が指摘されている。

 実は、睡眠中には脳の中の老廃物を脳の外に洗い流す仕組みが働いている。睡眠中に脳の神経細胞の周囲の空間が拡がり、神経細胞を洗い流すリンパ液の流れが大幅に増加する。

 すると昼間よりも効率よく老廃物を回収できるようになり、老廃物を含んだリンパ液は静脈に沿って脳外へと運び出される。

 この仕組みがうまく機能しないと脳内にβアミロイドなどの蓄積が増えることがわかっている。つまり、睡眠の質が低い状態が長く続くと、アルツハイマー病のリスクが高まるのだ。

寝ている間に脳で記憶が整理統合される

 また、レム睡眠(眼球運動が活発で浅い眠りの状態)の間に脳は記憶を整理統合していることもわかっている。これは毎日の覚醒中(起きて活動している間)に入ってくる情報で脳がパンクしないために、取捨選択して古い情報を捨てる作業が必要になるからだ。「寝る子は育つ」というが、実は子供だけでなく「寝る大人も育つ」のだ。

 人生のおよそ3分の1は眠りだ。人生100年時代には、およそ33年眠ることになる。この長い期間にわたって、毎日を元気にいきいきと過ごすためには、毎晩ぐっすりとよく眠れること、つまり良質の睡眠が不可欠である。

 にもかかわらず、冒頭に述べたように中年期以降になると睡眠障がいに悩まされる人が増えていく。現状、日本人の40歳から59歳で約5人に1人が、60歳以上だと約3人に1人が何らかの睡眠障害を抱えているといわれている。

睡眠障がいにはどのような種類があるのか?

 睡眠障がいには精神生理性不眠(いわゆる不眠症)をはじめ、むずむず脚症候群、周期性四肢運動障がい、睡眠時無呼吸症候群、概日リズム睡眠障がい、ナルコレプシーなどがある。

 このうち、最も多く見られるのが不眠症で、①寝つきが悪い(入眠障がい)、②眠ってから頻繁に目覚めてよく眠れない(中途覚醒)、③早く目覚めすぎて困る(早朝覚醒)、④休息感が欠如している(熟眠障がい)の4種類が見られる。

 こうした夜間の睡眠トラブルがあり、日中の調子がすぐれない状態が3カ月以上続くなら、不眠症だ。一方、多少夜間に目覚めても、その後すぐ眠れ、日中は元気な人、早く目覚めても散歩などをして快く過ごせる人は不眠症とはいわない。

不眠症の要因にはどのようなものがあるか?

 不眠症の要因には、①環境要因(暑さや寒さ、明るさ、時差がある場所などによるもの)、②身体要因(年齢や性差、頻尿、痛み、かゆみなどによるもの)、③心の要因(悩みやイライラ、精神的ストレスなどによるもの)、④生活習慣要因(アルコールやニコチン、カフェインの摂取、薬の副作用などによるもの)などがある。

 一方、ナルコレプシーという睡眠障がいでは、真っ昼間に突然睡魔に襲われてぐっすりと眠り込むという症状が見られる。この症状が現れる人は特定の白血球の血液型を持つことがわかっている。ナルコレプシーは他の睡眠障がいとは異なり、遺伝要因による睡眠障害だ。(つづく)

【村田アソシエイツ代表・東北大学特任教授 村田裕之】

(シルバー産業新聞2019年9月10日号)

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