介護保険と在宅介護のゆくえ

コロナ対策、加算対策に追われる事業所の支援を/服部万里子(連載108)

コロナ対策、加算対策に追われる事業所の支援を/服部万里子(連載108)

 2月17日から、医療従事者に対し新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。4月中旬からは、高齢者約3600万人へのワクチン接種が計画されている。6月以降に基礎疾患のある人820万人、その後高齢者施設の従事者200万人という計画である。

在宅介護職へのワク チン接種を

 その一方、実施主体である自治体に対し、 「いつ、どれくらいのワクチンが届くのか」という情報が十分に示されない中で、それぞれの対応が具体化しづらい状況である。

 介護保険サービスの利用者の75%は、居宅でサービスを利用している。しかし、このケアにあたるヘルパーやデイサービス、ショートステイの従事者、そしてケアマネジャーには、ワクチン接種やPCR検査が計画されていない。自宅で過ごす高齢者は、マスクや手洗い・消毒が十分でない場合も少なくない。訪問時にはマスクをしてもらうが、このような高齢者の介護にあたる介護職で、ワクチン接種を希望する人へ道を開こう。

急ぐ改定への取り組み

 21年度介護報酬改定は0.7%アップというが、基本単価のアップはごくわずかで、①生活機能向上連携加算②サービス提供体制加算③認知症専門ケア加算④科学的介護推進体制加算――などの加算への対応で報酬がアップする仕組みである。このための現状把握や体制準備が事業所に求められている。

 サービスごとに、介護職の介護福祉士の取得率、勤続年数、その割合を算出し、今後の加算アップに向けた研修計画を策定すること。また、事業所ごと利用者の「認知症自立度」の算定、スタッフの認知症研修(基礎研修、実践者研修、実践リーダー研修、指導者研修)の実施状況と、今後の研修計画を策定することが求められる。これらがコロナで疲弊する介護職の処遇のアップにつながるであろうか?

特定事業所集中減算の強化

 居宅介護支援では、介護サービス情報の公表と合わせて、前6カ月の居宅介護支援事業所の全ケアプランに占める、福祉用具、訪問介護、通所介護の各利用割合の提出、さらにサービスごとの同一事業所の割合の提出を求め、同一事業所割合が80%を超えると、基本報酬の200単位減算と特定事業所加算の取り消しがなされる。

 厚労省のデータでは、20年11月審査分で居宅サービス受給者は、予防も合わせて403万人。うち、福祉用具貸与は245万人(全体の61%)、通所介護は116万人(29%)、訪問介護104万人(26%)にのぼる。

 介護が必要になる原因のトップが認知症になり、要介護者がいる世帯のトップが独居である状況の中で、これらサービスの果たす役割は大きい。国は小規模多機能などの介護度別定額報酬へ移行したいと考えているようだが、利用者の選択権を優先すべきであろう。
(シルバー産業新聞2021年3月10日号)

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