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ケアマネアンケート 利用者負担「原則2割」 反対83%

ケアマネアンケート 利用者負担「原則2割」 反対83%

 7月末に政府がまとめた来年度の予算案の中に、「利用者負担見直しを含む介護保険の持続性確保」が明記された。これを受け、本紙では8月から9月にかけて全国のケアマネジャーに「介護保険の利用者負担見直し」についてアンケートを実施。276件の回答が得られた。調査の結果「介護保険の利用者負担を原則2割に拡大すること」について「賛成」と答えたケアマネジャーは16%、「反対」は83%と、大多数のケアマネジャーが原則2割負担に反対の立場であることが分かった。また、「居宅介護支援への自己負担の導入」についても、「反対」が79%と、こちらも「反対」が大多数を占める結果となった。

 政府は7月29日の経済財政諮問会議で、来年度の予算編成に向けた基本的な考え方をまとめた。その中で、社会保障については、次期介護保険制度改正に向けて「利用者負担見直しを含む介護保険の持続性確保」を明記。異例の書き込みは、利用者負担を原則2割に拡大することや、居宅介護支援に利用者負担を導入することなどが念頭にあるとみられている。

 これを受け、本紙では全国のケアマネジャーを対象に「介護保険の利用者負担見直し」に関するアンケートを実施。276人のケアマネジャーから回答を得た。

Q1.介護保険の利用者負担を原則1割から2割に拡大することについて

 アンケートでは、まず、介護サービス利用の際の自己負担割合を原則1割から原則2割に拡大する案について尋ねた。その結果「賛成」と答えたケアマネジャーは16%、「反対」は83%と、大多数のケアマネジャーが「反対」の立場であることが分かった。

 自由記述でその理由を尋ねたところ「反対」と答えた意見で最も多かったのは、「介護サービスの利用控えにつながる」という意見。「高齢者の年金収入額は変わらないまま2割負担になると、生活が圧迫され、サービスの利用を控える利用者が増加する」(栃木県、女性)、「1割負担でも利用ができない人もいる。2割になれば、さらに利用ができなくなる利用者が出る」(鹿児島県、男性)などの意見が寄せられた。

 また、「サービスを受けるのを見直す人が増え、自立のための支援を受けられなくなり、ADLが低下する恐れがある」(熊本県、女性)、「必要なサービスの利用に制限がかかり、状態悪化するケースが出てくる」(愛媛県、女性)など、サービスの利用控えによって、状態像の悪化を招くことを危惧する意見も多く届いた。

 その他には、「介護が必要な本人のみならず、その家族にも多大な影響を及ぼす可能性がある」(鹿児島県、女性)、「利用者の負担増により、サービス利用回数が減り、利用者や家族の不安が懸念される」(熊本県、男性)といった、利用者だけでなく、家族の負担を
懸念する声も目立った。

 一方「賛成」と答えた意見で多かったのは、「介護保険料の増加や高齢者の人数がとても多くなっている中、必要なことだと思う」(愛媛県、無記入)、「国の財政を考えると仕方ないのではないかと思う」(和歌山県、男性)など、制度の持続可能性確保のためにはやむなしという声。

 ただし、そうした意見でも、「一律の値上げではなく、所得制限を緩和するのであれば賛成」(和歌山県、女性)、「利用者増加による負担の拡大は仕方ない。ただし、高齢者で年金が月額3万円以下の人も多く、一律拡大には反対」(熊本県、女性)など、負担能力に応じて柔軟に対応するべきという意見が大半を占めた。

Q2.居宅介護支援に自己負担を導入することについて

 アンケートでは居宅介護支援の自己負担導入についても尋ねた。その結果「賛成」は16%、「反対」は79%と、こちらも反対が大きく上回る結果となった。

 「反対」と答えた意見で特に多かったのは、「経済的な理由でサービスを控える方が出てくるのではないか」(長崎県、女性)、「ケアマネジメントにお金がかかるとなると、サービスを使わない人が多くなる可能性が大きい。低収入の人は我慢するケースが増えるのではないか」(北海道、女性)など、自己負担の導入によって、サービスの利用控えにつながるとする意見。それによって、利用者や家族に様々な問題が生じることを案じる意見が多数寄せられた。

 次いで多かったのが、自己負担の導入によって、ケアマネジメントの公正・中立が脅かされるとする意見。「公正中立な立場での目線でなく、要望に応えがちなプランになるリスクがある」(長崎県、女性)、「セルフケアプランが増え、ケアプランの質の低下、仲介業者の関与などが出てくるのではないか」(鹿児島県、女性)などの声が届いた。

 一方、「賛成」については、「ケアマネの存在は発足当時よりはるかに周知されており、利用者も多い。介護保険サービスの一つであり、要であることを知ってもらうために、自己負担はあって良いと思う」(愛媛県、女性)のようにケアマネジャーの立場や仕事をより理解してもらうための一つの手段になるとの声が目立った。

 その他には、「ケアマネのマネジメント力の向上に繋がればいいと思う」(熊本県、女性)など、自己負担導入によって、ケアマネジメントの質の向上につながることを期待する意見などがあった。

(シルバー産業新聞2022年10月10日号)

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