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NPO福祉用具ネット 大切な教育&マネジメント力

NPO福祉用具ネット 大切な教育&マネジメント力

 1998年設立の福岡県立大学福祉用具研究会が、2002年にNPO福祉用具ネットとして独立した。メーカーの福祉用具の開発や販路開拓などに関わり、20年の歳月が経った。「メーカーは多額の資金を投入して開発に汗を流し製造し、流通は多様なニーズに合わせて用具を販売・レンタルし、介護現場はしっかり学んで用具を根付かせ、利用者が自分のために用具を使う」。そうした中で活動してきた大山美智子事務局長(看護師、69歳)と、ものづくり支援センター長の坂田栄二副理事長(68歳)にお会いした。

ヒューマニー製造中止

 2017年秋、介護保険のレンタル対象の尿吸引ロボ「ヒューマニー」(ユニ・チャームヒューマンケア)が製造中止になった。開発支援に積極的に取り組んだNPO福祉用具ネットの大山美智子さんは、自身のブログで、要因をこうつづっている。「介護で一番大変なのが排泄ケアです。現場では、うまく使えなかった。一番の原因は、おむつの当て方。製品は使いやすく作られていたが、取り扱いが苦手なひとが多かったのです」と。メーカーは状況を打破できず製造中止に追い込まれた。

 同ネットものづくり支援センター長の坂田栄二さんは、九州日立マクセルでヒューマニーの開発を担った技術者だった。「事業になる数字の桁が違うのです」と坂田氏は言い切った。

 いまはボランティアの身だが、メーカーの開発アドバイザーもしている。製造中止2年になるが、高齢者の夜間での利用や障がい者の移動時の活用など機能やサイズでこれに代わるものはないとして継続して使われている。

最初から完璧なものはない

 「最初から完璧なものはありません。電気カミソリは100年前に開発されましたが、今も改良が続けられています。用具は開発から製造・流通・販売・利用まで、切磋琢磨されてより良いものに育つのです。また、生活歴にない福祉用具の場合、利用者は用具を使うことに時間もかかる。受容するタイミングまで、あきらめずに向かい合うことが必要な場合もあります」と坂田さん。

 福祉用具には、多様な生活支援ニーズに対応する用途、機能の全く異なる多種類の製品がある。集約すると大きな市場になるが、工業製品として個々の用具の出荷数は一般製品市場とは同一に論じることはできない。坂田さんは、社会になくてはならない福祉用具の事業特性を説明する。

あることを現場が知らない

 17年度の「ふくおか医療福祉関連機器開発・実証ネットワーク」事業で、1500の県内の介護施設・事業所のニーズ調査が実施された。介護現場から用具に関わる要望が数百件寄せられた。大山事務局長は、「しかし、そのおよそ85%がすでに製品化されていたのです」と。「現場が製品のあるのを知らない。ケアマネジャーも知らない人が多い。知っているのと知らないのではまったく違う」。同ネットが身を寄せる福岡県立大学は看護師や介護職を養成するが、その先生たちも福祉用具に対する理解がまだまだという。医療介護の専門職を養成する教育に福祉用具が溶け込んでいないと感じると話す。

 毎年秋に福岡県北九州市で開催される「西日本国際福祉機器展」に同校の卒業生が見学に行き、用具の説明を受けて、見て、使う。この経験がたいへん評判がよい。「看護学部の先生の福祉用具に対する関心も上がってきました」と大山事務局長。

技術認定プロジェクト試験

 「車いすに、月200円、300円で着脱できるアームサポートやフットサポートを付けることができる。これらを使うことで車いすの乗り降りがたいへん楽になる。リフトが使われている施設では、妊娠している職員でも移乗介助ができる。一方で、血行阻害のおそれがある円座が医療や介護現場で依然使われている例もある」とも。

 リハビリ職のOTやPTは、身体や病気がわかる福祉用具の専門家としてその役割が期待されるが、「国家試験に福祉用具は2問程度しか出題されないため、勉強の順番が後回しになるとも聞く」と話す。

 NPOでは3月に福祉用具の技術認定プロジェクト試験を実施する。今年3回目で、これまで49人が合格した。試験では、プレゼンテーション能力など、医療介護現場で用具導入のマネジメント力を含む10項目が問われる。道具を使った介護技術を伝える力を重視する。

 「私たちは、利用者を企業と介護現場、教育機関、行政などとつなぐ接着剤の役割をしています」 とお二人は結んだ。
開発支援に携わった「 きのこグリップ」

開発支援に携わった「 きのこグリップ」

(シルバー産業新聞2020年1月10日号)

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