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医療・認知症・複雑化する地域課題に立ち向かう

医療・認知症・複雑化する地域課題に立ち向かう

 第9期介護保険事業計画(24~26年度)がスタートした。24年介護報酬改定で、国は質の高いケアマネジメントや必要なサービスが切れ目なく提供されるよう、地域の実情に応じた柔軟で効率的な取組の推進を掲げた。ヤングケアラーなど多様な課題への対応、看取りへの対応強化、在宅や高齢者施設における医療ニーズへの対応、感染症や災害への対応力向上などをテーマにする。第9期の「地域包括ケアシステムの深化・推進」を俯瞰する。

 第9期介護保険事業計画の2年目には団塊の世代が75歳の後期高齢期を迎える中で、2040年にかけて、介護ニーズが増大する85歳以上人口が5年間でおよそ100万人のペースで増え続ける。一方で、支え手となる生産年齢人口は急速に減少。その困難を乗り越え、介護保険は必要性の高まる地域包括ケアシステムの構築に向けて踏ん張る必要がある。

多様化する地域課題への対処

 地域の事業所のリーダー役を評価する、居宅介護支援事業所に設定されている特定事業所加算が見直された。居宅介護支援事業所では、「ヤングケアラー、障がい者、生活困窮者、難病患者等、他制度に関する知識等に関する事例検討会、研修等に参加していること」が要件に加わり、多様化・複雑化する課題に対応するための取組の促進をめざす。一方で、(主任)ケアマネジャーの専任要件について、居宅介護支援事業者が介護予防支援の提供や地域包括支援センターの委託を受けて総合相談支援事業を行う場合は、兼務を認めた。また、運営基準減算があると同加算が取得できないとする規定を削除した。

 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(定期巡回)、小規模多機能型居宅介護(小多機)、看護小規模多機能居宅介護(看多機)の3サービスの総合マネジメント体制強化加算に、地域住民の相談対応や多様な主体による生活支援サービスを組み入れるなど、地域連携の推進を要件とする同加算(Ⅰ・1200単位)が新設された一方、従前加算は(Ⅱ・1000単位→800単位)減額された(図)

高い医療ニーズへの対応

 訪問看護と看多機について、緩和ケア、褥瘡ケア、人工肛門ケア、人工膀胱ケアの専門研修を受けた看護師や、特定行為研修を修了した看護師が計画的な管理を行う専門管理加算(250単位/月)が新設。また、訪問看護について、看護師の退院・退所時の初回加算が、従前が退院翌日以降の算定とするのを、退院当日に算定した場合の初回加算(Ⅰ)を新設し、翌日以降初回訪問した場合は初回加算(Ⅱ)とした。

 居宅療養管理指導(薬剤師)に、在宅の末期がん患者や重度者への対応として、医療用麻薬持続注射療法加算(250単位/回)と在宅中心静脈栄養法加算(150単位・回)を新設した。また、老健の短期入所療養介護の総合医学管理加算の算定日数が、7日間から10日間に延長された。

 在宅の難病患者などに看護師が対応する療養通所介護に、短期利用型(1335単位/日)が新設されたほか、基準で定める看護師の配置に加え、看護職員を常勤換算で3以上確保するなどを要件にした重度者ケア体制加算(150単位/月)が新設。看多機には、登録者1人当たり平均提供回数が週4回に満たない場合は所定単位数の70%相当で算定するが、「週平均1回に満たない場合」を含めるとともに、計画外の訪問や宿泊を行った場合の緊急時対応加算を574単位/月から774単位/月に増額した。

退院後早期のリハビリ実施

 退院後早期に連続してリハビリを実施するために、退院した利用者の通所リハビリや訪問リハビリの計画作成に当たり、医師ら従業者に対して、医療機関のリハビリ実施計画書等を入手し内容を把握することが義務づけられた。また、リハビリ事業所の理学療法士等が退院前カンファレンスに参加し共同指導を行った場合の、退院時共同指導加算(600単位/回)が新設された。

特養等の医療体制充実

 緊急時など医療ニーズの増大に対応して、介護保険施設の医療提供体制の充実が図られた。

 ▽特養の配置医師が通常の勤務時間外に対応した場合、日中でも配置医師緊急時対応加算を算定可▽特養に月12回以上透析の送迎を行った場合に、特別通院送迎加算を新設▽老健の所定疾患施設療養費の対象に、慢性心不全の増悪を追加▽介護保険施設が施設内で対応可能な医療の範囲を超えた場合に①急変時に医師または看護職員と相談できる体制を常時確保②診療を行う体制の常時確保(特定施設、認知症対応型共同生活介護は①・②が努力義務)、さらに介護保険施設について、③医師の診察と入院を原則受け入れる体制の確保などを義務づけ▽協力医療機関との定期的な会議を開催する協力医療機関連携加算を新設――。

看取り・ターミナルケアの推進

 看取りやターミナルケアについては、▽訪問入浴介護に訪問看護ステーション等の連絡体制の確保や看取りの職員研修などを要件に看取り連携体制加算(64単位/回)を新設▽訪問看護、定期巡回、看多機のターミナルケア加算を、診療報酬と同様に、2000単位/死亡月から2500単位に引き上げ▽訪問看護、看多機に、看護師が情報通信機器を用いて離島等に居住する利用者の死亡診断を補助した場合の遠隔死亡診断補助加算(150単位/回)を新設▽末期がんに限られていた居宅介護支援のターミナルケアマネジメント加算を「終末期の医療やケアの方針に関する利用者・家族の意向の把握」を前提に限定を外す。また、特定事業所医療介護連携加算をターミナルケアマネジメント加算の算定を年5回以上から15回以上に▽老健のターミナルケア加算は死亡日前々日~死亡日の加算額を引き上げ、死亡日45日前~31日前の加算額を引下げ――などを行う。

高齢者施設の感染症対策の向上

 新型コロナウイルス感染症流行時、要介護高齢者の病院での受入れが困難であったことから、24年改定では、高齢者施設等の感染症対応力の向上が図られた。

 第2種協定指定医療機関との間で、または感染対策向上加算を届出する医療機関との間で、感染症発生時の対応について体制を確保する高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)(Ⅱ)を新設。さらに、今後のパンデミックに備えて、施設内療養を行う介護保険施設や居住系サービスに、新興感染症等施設療養費を新設。同じく、感染症の診察等を行う協定締結医療機関との連携や対応に努めるとした。

認知症ケアの推進

 昨年、認知症基本法が成立し、国や自治体の役割が明確になった。24年4月からは全介護従事者に認知症介護基礎研修が完全義務化。こうした中、認知症ケアについては、▽訪問介護、訪問入浴介護、定期巡回、夜間対応型訪問介護について、認知症専門ケア加算の対象者を、(Ⅰ)は認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上とし、(Ⅱ)は、同Ⅲ以上が20%以上とする▽訪問リハビリについて、集中的な認知症リハビリを実施した場合に、週2日を限度に、認知症短期集中リハビリテーション実施加算(240単位/日)を新設▽(地域密着型)通所介護の認知症加算を見直し、認知症の者が占める割合を15%以上とし、認知症ケア事例検討会や技術的指導の会議の定期開催を義務づける▽小規模多機能の認知症加算に、認知症ケアの専門研修修了者の配置や指導・研修の実施を評価する上位区分を設ける▽認知症対応型共同生活介護と介護保険施設に、認知症の行動・心理症状(BPSD)の発現を未然に防ぐための平時からの取組として、新たに認知症チームケア推進加算(Ⅰ)(Ⅱ)を設ける▽老健の認知症短期集中リハビリテーション実施加算は、入居者の居宅等を訪問し生活環境を把握してリハビリ計画を策定する同(Ⅰ・従前と同じ240単位/日)、訪問がない場合は同(Ⅱ・120単位/日)とする。

 訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、居宅療養管理指導の24年度改定は、診療報酬改定に合わせて、今年6月1日に施行される。

(シルバー産業新聞2024年4月10日号)

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