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【特集】介護食品売れ筋動向(とろみ調整剤編)

【特集】介護食品売れ筋動向(とろみ調整剤編)

 「売れ筋動向」シリーズ2回目となる本号ではとろみ調整剤を紹介する。データの提供元は前回に続き、介護用品卸大手のウェルファン、ケアマックスコーポレーション、豊通オールライフ。

用途が幅広い「無味・無臭・無色」がスタンダード

風味と見た目を損なわないシンプルタイプが主流

 日本介護食品協議会がこのほど発表したユニバーサルデザインフード(UDF)の生産金額によると、2013年のとろみ調整剤は38億900万円で前年比14.3%増。UDF全体に占める割合は28.6%となっている。

 とろみ剤は水やお茶などの飲料だけでなく、味噌汁やスープ、また普通食の調理過程で少し混ぜて全体的なまとまりを良くするなど、あらゆる食事シーンでの活用がはかられてきた。

 現在は1つの商品で用途の幅が広く、かつ食品本来の風味を損なわず、利用者が違和感なく摂取できる無味・無臭・無色タイプがケアの現場では主流とされている。

 これに伴い、各メーカーの商品差別化は溶けやすさ、とろみの持続性、口腔内でのベタつきなどにある程度限定され、商品ラインナップも各メーカーおおむね2~3種類程度となっている。

介護ルートはウェルハーモニーと明治が牽引

 3社ともにランクインしたのはウェルハーモニーと明治。特にウェルハーモニーは、ウェルファンで64.2%、ケアマックスで47.8%と高いシェアをもつ。手袋や腰部ベルトなどの介護用品を扱う同社ならではの、介護ルートへの供給力の強さを示している。

 同社の「トロミーナ」は粉末状で溶かしやすい。100gあたりのエネルギー量は256kcalとカロリーは控えめ。

 また、明治の「トロメイクSP」は飲料の種類や温冷を問わず使用でき、汎用性が高い。ドラッグストア、スーパーへの展開も含め、売上はこの3年間で2倍に伸びている。

 9月には家族介護者向けの新商品「おうちで簡単トロメイク」をリリース予定。パッケージに食品ごとの使用量を明記し、初めての人でも使いやすい工夫を施すなど、在宅をより意識した商品展開をはかる。

家族介護者の使いやすさを支援し在宅市場を活性化

病院・施設から在宅へ継続利用

 2位以下についてみると、豊通オールライフでシェアを明治と分け合うクリニコは、もともと管理栄養士や看護師、STへの訴求を通じ、病院中心の販売展開を行ってきた。

 退院時の食事指導で推奨されてきたことで、在宅での継続利用につながってきたと考えられる。そのため、商品を知っている利用者家族からの(通販)直接購入も多い。

 同社主力商品の「つるりんこQuickly」は、ベタつきがなく飲み込みやすくまとまる点が、専門職からの高い評価を得ている。

 同様のルートを辿るのがニュートリーの「ソフティアS」。とろみをつける液体の物性を問わず、同じ添加量で同じ粘度を作れる点が、嚥下困難者への頻回な食事提供を行う病院・施設で支持されている。今後、在宅へは新たなチャネルの拡張を模索しているという。

 また、ホリカフーズは、病院・施設へミキサー食などを40年以上提供してきた。在宅は00年からのスタートだが、リピート率の高さから介護卸ルートに特化している。販売店からデイサービスなどの介護事業所へも提供されている。

 同社「とろとろトロミー」は、腸内環境に働きかけるキシロオリゴ糖が配合されているのが特徴。
使いやすさ、短時間調整の商品ラインナップ

 とろみ調整剤の使用方法は、飲料に入れてすぐに15~30秒程度かき混ぜ、その後とろみが完全につくまで一定時間置くのが一般的。お茶だと数分、牛乳や濃厚流動食だと数十分かかる場合もあり、不慣れな家族介護者は、食事時間に合わせた調整がうまく行えないことも多い。

 こうした状況に対し、メーカー各社はより簡便に使用できるタイプの商品開発に努め、在宅での利用の伸びを支えている。

 日清オイリオは91年の発売以来、ロングセラーを続ける「トロミアップエース」が根強い人気だが、その後リリースした「トロミアップパーフェクト」は少量・短時間でとろみがつくタイプ。嚥下困難者は脱水リスクも高いことから、急な水分補給にも対応しやすい。

 さらに、「トロミアップパーフェクトEN」は牛乳・濃厚流動食専用。とろみがつく時間がおよそ3分の1に短縮される。同様の商品ラインナップを保有するのはクリニコなど。

 また、首都圏を中心に病院・施設への介護食卸を主事業とするヘルシーフードも、自社ブランドの商品「トロミスマイル」を展開。飲料に入れて数秒経ってからかき混ぜてもダマができない特性をもつ。

「とろみ調整剤」・・・飲み込む力が低下した人に対し、飲料などに混ぜて使う食事補助剤。とろみのない液体を飲むとむせを起こしやすく、また誤嚥が原因で肺炎を発症するリスクがある。商品の大半は粉末状で、1回使い切りの個装タイプから業務用の数kg入りのものまである。
(シルバー産業新聞2014年8月10日号)

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