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栄養・食支援で結果出す 「在宅栄養専門」 管理栄養士

栄養・食支援で結果出す 「在宅栄養専門」 管理栄養士

 日本栄養士会は2011年度より厚生労働省の委託を受けて、管理栄養士専門分野別人材育成事業を進めている。17年度より日本在宅栄養管理学会と協力し、複雑困難な栄養の問題を有する重症疾患等の在宅療養者へ、より高度な知識・技術で栄養管理を行う資格「在宅栄養専門管理栄養士」を創設、23人が認定を受けている。

在宅栄養専門管理栄養士になるには

 在宅栄養専門管理栄養士になるには、まず日本栄養士会の特定分野管理栄養士・栄養士制度の「在宅訪問管理栄養士」の取得が必須となる。同資格は在宅医療に関わる多職種との連携、疾患や栄養状態に適した栄養・食支援ができる管理栄養士の育成を目的とし、在宅栄養管理学会が中心となり11年度にスタート。17年度末時点で849人が取得している。

 在宅栄養専門管理栄養士は、そこからさらに講義・演習・実習を受け、かつ①在宅栄養の実務経験を通算3年以上②症例提出5例③学会発表1回以上(論文発表1編以上)――と、実践だけでなく学術的なアプローチも必要。その上で試験に合格すれば認定となる。
 在宅栄養専門管理栄養士になるまで(日本栄養士会HPより)

 在宅栄養専門管理栄養士になるまで(日本栄養士会HPより)

 南大和病院(神奈川県大和市、医療法人新都市医療研究会「君津」会)の管理栄養士・宮司智子さんは認定者の1人。「在宅栄養の症例を発信していくことが大きな役割の一つ。栄養改善、誤嚥予防や再入院の減少、さらに家族の介護負担軽減など、実績をエビデンスとして、在宅栄養の必要性を示す責務があります」と説明する。

 また、スーパーバイザーとしての役割も在宅訪問管理栄養士との違いだと宮司さん。「在宅訪問管理栄養士のうち、実際に在宅栄養を提供しているのは半数ほど。未経験の人たちへ、どうすれば訪問に行けるのかを指導していく地域の中心的役割も担います」と述べる。

 管理栄養士 宮司智子さん

「在宅は楽しい」

 同法人は「地域に根ざした医療」をコンセプトに、退院先の施設・自宅を想定した入院生活を心がける。食事についても、あらかじめ退院先で対応可能な食事内容へ調整を行い、円滑な退院支援につなげている。

 普段は同法人の病院での外来・入院患者の栄養管理が主体の宮司さん。現在、在宅訪問は1人あたり月4件ほどこなす。退院・退所後の利用者もいれば、外部のケアマネジャーからの依頼も。地域のケアマネ連絡会へ出向くなど、普及活動の芽が出始めているという。

 「病院との大きな違いは、生活全体の視点で食・栄養の課題解決を行うこと」と宮司さんは強調。初回訪問では冷蔵庫の中身や食器の大きさもチェックし、可能な限り生活環境、食習慣の把握に努める。また、生活動線も確認し転倒等の予防も。「必然的に、他職種との情報共有も高まります」。そうしていく中で、介護保険の知識も不可欠だと感じ、16年にケアマネジャーの資格も取得した。

 「在宅では療養者それぞれの生活があり『普通』はありません。訪問一つひとつが勉強で、新たな発見です。その方の生活に合わせた栄養管理は難しくもありますが、栄養の維持・改善が見られた時が在宅の楽しさでもあります。いつも全力投球で訪問しています」。

質を高め、数を増やす

 勤務20年目の宮司さんは現在、法人内の管理栄養士を束ねる立場。在宅栄養を担う人材育成にも精を出す。「病棟でケアにあたっていた管理栄養士が、退院後は自宅へ訪問する。こうした流れを今まで以上に作っていきたい。顔なじみなので、療養者さんも安心されると思います」。

 また、同法人は日本栄養士会認定の「南大和認定栄養ケア・ステーション」を設置。今後は医療機関に属さないフリーランスの管理栄養士と連携することで、地域の在宅栄養のニーズを面で支えていきたいと宮司さんは話した。
(シルバー産業新聞2018年8月10日号)

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