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ケアマネジメントの標準化 脳血管疾患、大腿骨頸部骨折の支援内容を整理

ケアマネジメントの標準化 脳血管疾患、大腿骨頸部骨折の支援内容を整理

 ケアマネジャーの資質の向上を図る観点から、現在、国でケアマネジメントの標準化に向けた取組みが行われている。このほど、その基礎資料の一つとして「適切なケアマネジメント手法の策定に向けた調査研究事業」の報告書がとりまとめられた。同報告書では、成果物として脳血管疾患と大腿骨頚部骨折の2つの疾患に絞り、97項目の支援内容を整理。ケアマネジャーとして、必要な知識を共有し、誰もが効果的なアセスメントやモニタリングが行えるようにすることで、質の標準化を図っていく。 

 そもそもは、昨年6月に閣議決定された政府の「ニッポン一億総活躍プラン」の中で、自立支援と介護の重度化防止を推進するため、「ケアマネジメントの標準化に向けた分析手法の検討」が位置付けられたのがきっかけ。昨年末にとりまとめられた介護保険部会の意見書でも、「今後、ケアマネジメント手法の標準化に向けた取組みを順次進めていくことが適当」と、国が主導してケアマネジメントの標準化を実現していく流れになっている。

 こうした背景の下、厚生労働省では2016年度の老健事業で、「適切なケアマネジメント手法の策定に向けた調査研究」に着手。この度、委託先の日本総合研究所が報告書をまとめた。

脳血管疾患と大腿骨頚部骨折に限定

 利用者の生活上の課題は様々で、一括りにケアマネジメントの標準化を図るのは不可能なため、今回の調査研究では、要介護状態になる原因疾患の上位で、地域連携クリティカルパスがすでに作成されている①脳血管疾患②大腿骨頚部骨折の2疾患に限定。さらに退院後3カ月までのⅠ期と4カ月目以降のⅡ期に分ける形で標準化の検討が行われた。

 具体的には、ケアマネジャーの知識や能力によって差が生じやすいアセスメントとモニタリングに着目し▽分析に必要な最低限の知識▽想定される支援内容を確認するためのアセスメント項目▽想定される支援内容――に整理し、共有化を図っていく手法がとられた。同じ原因疾患や状態に対して想定される支援内容のパターンを整理することで、標準化を図っていく考え方だ。

97項目に及ぶ支援内容に整理

 報告書では、調査研究の成果物として、疾患別・期別のケアに関して、97項目に及ぶ支援内容に整理(脳血管疾患Ⅰ期33項目、Ⅱ期34項目、大腿骨頚部骨折Ⅰ期18項目、Ⅱ期12項目)。

 例えば、脳血管疾患のⅠ期の場合だと、長期の基本方針を①再発予防②生活機能の維持・向上――に分類。さらに②生活機能維持・向上の場合では▽日常生活環境における身体機能状態の継続的な把握ができる環境を整える▽リハビリテーションの継続がなされる支援体制を整える▽状態に合ったADL/IADLの機能向上がなされる支援体制を整える▽必要な栄養量と食事の支援がなされる支援体制を整える――など14項目が並び、そこからさらに「ADL/IADLの状態と、改善や維持に関する見込み」「日常生活の中で、ベッド以外で過ごす機会、場所、時間がどの程度か」といったアセスメント項目やモニタリング項目が並ぶ(日常生活環境における身体機能状態の継続的な把握の場合)。

17年度も引き続き調査研究

 今回の成果物の活用方法は、まずは項目の一覧表を確認して、ケアマネジメントの視点や支援内容を参照し、詳細について確認する必要があれば、本編の当該箇所を閲覧する方法が示されている。

 現場のケアマネジャーのほか、ケアマネジャーの指導を担当する者、地域包括支援センター、自治体の担当者などに利用してもらうことを想定している。

 ただし、留意点として、利用者の生活上の課題は様々なので、今回整理した全ての支援内容が全員に必要というものではないこと。本人の生活状況、地域の特性などを総合的に捉え、「個別化」の視点に立ったケアプランの作成が必要となる。

 さらに今回整理した内容についても、今後、検証作業を踏まえた更なる改善の余地があるとして、完成版ではなく、あくまで暫定版として活用することなども留意点に挙げられている。

 報告書は日本総合研究所のホームページ(https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/pdf/170331_keamanesyuhou.pdf)よりダウンロードできる。

 厚生労働省では、17年度も引き続き「適切なケアマネジメント手法の策定に向けた調査研究事業」を実施し、今回の整理に基づく手法の実証、参考テキストの作成などを行っていく考え。
(シルバー産業新聞2017年5月10日号)

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