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三重県玉城町の総合事業 地域の強み生かし多様な選択肢

 三重県のほぼ中央にある玉城町は、10月から新総合事業を始めている。人口は約1万5700人で高齢化率は24.8%、認定率は15.8%と全国平均よりやや低めに留まる。要支援者は、認定を受けている619人のうち、9.8%の61人。

 三重県のほぼ中央にある玉城町は、10月から新総合事業を始めている。人口は約1万5700人で高齢化率は24.8%、認定率は15.8%と全国平均よりやや低めに留まる。要支援者は、認定を受けている619人のうち、9.8%の61人。「介護保険サービスを使わず、町の予防事業やボランティア活動によって、状態をキープしている人が多い」と玉城町地域包括支援室の野口美枝さんは説明する。

 15年度は既存サービスを活用しつつ、新体制構築に伴った整備期間と位置づけられ、本格的な始動は16年4月からとなっている。玉城町の新総合事業の特徴は、総合事業と地域資源を組み合わせ、双方の取組みの課題を補完していく点だ。

総合事業と地域資源の相乗効果

 野口さんは「既にある地域の基盤を、新総合事業という新たな仕組みによって強化していきたい」と話す。

 例えば訪問型サービスD(移動支援)では、町が東京大学大学院との共同研究をしながら運営している「元気バス」を活用する。元気バスは、利用者が事前に申し出た乗車場所・時間に向かい、目的地まで送迎してくれるオンデマンド形式のバス。玉城町社会福祉協議会に申請・登録すれば、町民なら誰でも無料で利用できる。42のコンパクトな町内に166カ所ものバス停があり、高齢者の移動手段としても多く用いられてきた。

 しかし足腰の弱った人や、認知症の人が利用する場合、バス停への移動やバスの予約が1人では困難という課題もあった。新総合事業では、その課題に対し生活支援サポーターを活用することで対応する。生活支援サポーターは居宅に訪問し、バスの予約や付き添いなどを行う。同室室長の西村美紀子さんは「生活支援サポーターによって、従来の利用者以外にも元気バスの利便性を実感してもらえるはず。地域資源の積極的な使用にも繋げてほしい」と外出支援効果にも期待を示した。また、元気バス利用者の間で総合事業の認知度が広まる逆のパターンも考えられるという。

 生活支援サポーターは訪問型サービスBでも活用予定。現在は人材育成中で、両サービスとも16年度から登用される。

 他にも総合事業によりバージョンアップしたケースとしては、町営の運動機能向上教室「悠ゆう塾」が通所型サービスC(短期集中予防)になった例などがある。

 悠ゆう塾は週に1度、町の保健福祉会館で開かれ、保健師が指導する。筋力や柔軟性、バランス感覚の向上など、さまざまな観点から複数の運動を組み合わせ、1クール(4カ月)で総合的な運動機能向上を目指す。西村さんは「総合事業化することで、予防給付の人たちも利用可能となる。多様なニーズにあったサービスの選択に繋がり、予防効果が高まるはず」と説明。さらにサービスを強化できないか検討しているという。

 また悠ゆう塾を卒業した人が機能維持のために通える「悠ゆう塾OB会」は一般介護予防活動支援事業になった。同事業でも利用者の1割負担が必要だが、元々無料のサービスだったため、当面は利用者負担はない。

サービスの多様性を重視

 一方で、各サービスの独自性にも配慮する。西村さんは「全てを総合事業化してしまうと、各団体の理念やメリットを潰してしまう場合もある。既存のサービスの特徴ごとに総合事業との兼ね合いを図り、多様性を担保していく」と説明した。

 公民館で定期的に開催されている「柔らかクラブ」では体操などを行う。元は認知症予防からはじまった地域住民主体の取組みだ。通所型サービスB(住民主体の支援)に乗せ換えることもできるが、地域住民の主体性を重視する観点から、あえて移行しなかった。
  「総合事業化することで、行政が一方的に制約を押し付ける形になるのは本意ではない。総合事業化せず、行政から独立した形でももちろんサポートはする」と野口さん。
つどい場 協(かなう)

つどい場 協(かなう)

 柔らかクラブと並行する形で、町も新たな「住民主体」の選択肢づくりに取組んでいる。その1つが「つどい場 協(かなう)」だ。町内の空き家を利用し、日中の居場所として10月17日から開放している。高齢者だけでなく、さまざまな町民が集まり連日賑わっているという。

 「住民が自分のできることを生かし、楽しみながら活用してくれている。クリスマス会なども自主的に開かれた。受身ではなく、自分たちで創りあげていこうと住民が取り組む場となった」と手ごたえを話す。

 今後は町内の他の空き家でも、同様の取組みを検討する。

地域との連携がポイント

 野口さんは総合事業実施のポイントとして、住民と行政の密接な連携の重要性をあげる。

 「行政側が地域資源を把握したうえで、利用者自身が適切な選択をできるような仕組みを作っていく。その過程で信頼が生まれ、地域の風通しも良くなる」(野口さん)。地域の強みを生かしつつ、さらなるサービス充実が目指すところだと強調した。
(シルバー産業新聞2016年1月10日号)

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