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7月以降、メーカー7割が値上げへ 「経営への影響ある」94%

7月以降、メーカー7割が値上げへ 「経営への影響ある」94%

 急激な円安や物価・原材料・物流費等の高騰によって、福祉用具メーカーは昨年1月~今年7月に38%が値上げを実施済で、今後(7月以降)に値上げを予定・検討するメーカーは68%に達することが本紙の緊急アンケートで分かった。経営への影響についても「非常に大きい」「大きい」を合わせて94%が影響大と回答し、「まったく問題ない」(3%)、「どちらともいえない」(3%)は少数だった。メーカーからは、顧客である貸与事業所に値上げを依頼しやすいように「一時的でも、福祉用具上限価格の停止や一律引き上げを実施してほしい」「介護保険の利用限度額を緩和してほしい(物価スライド等)」など、国・厚生労働省に早急な対応を求める回答もあった。緊急アンケートは、主要メーカー194社を対象に、本紙が7月中旬~月末に実施。40社が回答した。

 福祉用具メーカーの約7割が今後、値上げに向けて動き出す。そのうち半数の35%(14社)は昨年来2回目の値上げとなり、1回目の値上げだけではコスト高を十分にカバーできていない。

 背景には「値上げで吸収できないほどコストが増大」「配送や営業にかかる費用は1.5倍となった」「値上げなしでは年間1000万円以上の損失を試算」など、経営への影響が「非常に大きい」「大きい」を合わせて94%に達していることがある。

 「サプライチェーンを見直し、製品の統廃合などを進める」「国の制度に左右されない製品カテゴリーの創出(制度外商品の開発)」「生産国の変更を検討」など製品の安定供給への企業努力を続ける意見が多かったが、「24年改正が固まるまで商品開発は保留」など、メーカー活動の要である製品開発に影響が及んでいる例もあった。

小幅値上げの背景

 値上げ幅は、昨年1月から今年7月までに実施したメーカーは平均12.1%(最高25%~最低6%)、7月以降に実施予定・検討するメーカーは平均12.4%(30%~2%)。小幅な値上げを繰り返す背景には、介護保険制度での福祉用具レンタル料金が「一物一価の原則」(同一事業所の同一商品は同一価格)や「上限価格」(上限価格を上回れば、その貸与は保険給付の対象外)に縛られることから、メーカーにとって顧客である福祉用具貸与事業所の理解が得られないことがある。

 また、福祉用具レンタル卸事業者から「レンタル商材の値上げをすれば、カタログ掲載落ちするかもしれない」と強い態度で迫られ、苦慮しているという意見もあった。

 そもそも福祉用具貸与事業者の立場に立てば、他事業者との競争の中で貸与価格に転嫁しにくいことだけでなく、一物一価の原則のため、もし貸与価格を引き上げれば、全利用者に経緯説明をして、契約をし直す人的コストと手間が受け入れがたいことがある。

 上限価格についても、すでに上限近い価格設定の事業者ほど値上げの余地は少なくなるという、制度的課題がある。

国の対応求める声

 対応策の一つとして、テクノエイド協会発行のTAISコードを取り直すメーカーもある。製品仕様に小変更を加えて新たなTAISコードを取得することで、値上げ後の価格に基づいた上限価格が設定されるというもの。福祉用具貸与事業者にとっても、既存の利用者への契約し直しのコストや手間が省ける。

 ただ、本紙アンケートではこれについて「別TAISコード取得は考えない」と78%のメーカーが回答。「別TAISは有効と考えられるので検討はするが、制度上おかしな話だ」と、正攻法で経営危機を克服したい意向も明らかになった。

 民間レベルの対応の域を超える物価・材料高騰や介護保険制度上の課題を前に、「消費税率10%改定時に一律平均・上限価格を引き上げたときのように寛大な対応(例えば上限価格の一時撤廃など)を希望」「状況に応じて対応できる国の特例措置を検討してほしい」「介護保険の利用限度額を緩和してほしい(物価スライド等)」など、国の特例や救済措置を求める声も高まっている。

 あるメーカーは国の関係各所に直接相談したが、「公正取引委員会からは『違反事実を申告してください』、中小企業庁からは『厚労省に直接話をできる立場にない。貴重な意見として報告する』との返答で、厚労省からは明確な回答をもらえていない」と、不満を訴える声もあった。

(シルバー産業新聞2022年8月10日号)

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