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洛和会ヘルスケアシステム わずか3カ月でペーパーレス化を実現

洛和会ヘルスケアシステム わずか3カ月でペーパーレス化を実現

 洛和会ヘルスケアシステム(京都市、矢野裕典理事長)が京都と滋賀を中心に展開する訪問介護事業所「洛和ヘルパーステーション」では、今年1月より介護記録ソフト「ケアウイング」を導入し、わずか3カ月で全8事業所(全利用者約1560人、ヘルパー約210人)のペーパーレス化に成功した。大幅な業務効率化とコスト削減を実現した裏では、管理者やサービス提供責任者の大きな苦労があったという。7人のサービス提供責任者が在籍する山科事業所を取材した。

 洛和ヘルパーステーションでは、ICT活用が主流となる以前から、業務での紙をなくす構想があった。

 訪問介護のスケジュール管理や、利用者宅でのサービス記録の効率化を検討するさなか、展示会でケアウイング(ロジック)を知り、導入を決定。今年1月から職員向けの研修を始め、本格使用を開始した3月からは完全ペーパーレス化を実現し、活動記録表がゼロに。大幅な経費削減と業務効率化に成功した。

月初の残業を大幅に削減

 経費削減に最も貢献したのが活動記録表をなくしたこと。以前は、訪問介護事業全体で月に約1万1000~1万2000枚、山科事業所だけで4000枚の活動記録表を作成していた(写真)。さらに新規の利用者に対しては、関わるヘルパー1人につき、指示書や自宅の地図、アセスメントシート、訪問介護計画書、手順書など、最低5枚の書類を渡しており、膨大な紙が消費されていた。ソフト導入後、これらの確認や入力は全てスマホで行えるようになった。

 さらに、月初には、サ責がレセプトと給与計算のために約1週間残業続きだったのが、現在は残業がゼロに。作業も2~3日で完了している。山科事業所では、昨年12月は職員1人あたり平均月24時間ほどの残業が、今年5月には5.5時間にまで減少。従来は約4000枚の活動記録表を一枚ずつ確認し、五十音順に利用者とサービス提供者ごとに並べ替え、再度ダブルチェックを行うなど作業に膨大な時間が割かれていた。

 現在は、記録ソフトのケアウイングと既存の請求ソフトを連携させ、業務量を大幅に削減できている。

電話応対の負担減少

 業務改善に大きく貢献したもう一つの要素は、電話対応の削減。同法人では、特定事業所加算の算定に必要な、サ責の事前の指示、ヘルパーからの事後報告を電話で行っていた。サービス終了ごとに報告の電話があり、状態に変化があった時や、現場でのトラブル、キャンセルに伴う予定変更などに対応するため、山科事業所でも6回線が常に鳴り止まず、サ責が対応に追われていた。

 同ソフト導入後は、指示書が画面に表示されるため自動的に指示受けが完了する。スケジュール管理もソフト上で行うことができ、電話対応が減った結果、オペレーション担当の人数を削減できた。これによりサ責の負担が大きく減少し、急なヘルパーの欠勤時にも自身が対応できる余裕が生まれた。

 以前は、全ての電話をフリーダイヤルで対応していたため、フリーダイヤル代のみで月20万円以上の電話代が発生していたが、現在はその費用も大幅に削減できている。

 また、ヘルパー会議などの連絡事項をソフト上で一斉に送ることが可能となり、各ヘルパーが情報を確認したかどうかも、既読表示で判断できるように。これまでは、山科事業所だけでも80人以上のヘルパーに電話やメールを送り、返事の確認をしなければならなかったが、現在は大幅に時間と労力を削減できている。

利用者への説明・同意取得にサ責が尽力

 大幅な業務効率化と費用削減の成功には、管理者とサ責の苦労が伴い、現場の協力も不可欠だった。

 まずは利用者への説明。これまで紙に書いて手渡していたサービス報告も、ペーパーレス化で紙がなくなる。必要な場合は、メール等で代替可能であることを伝えた。利用者宅への入退室記録に必要なICタグを自宅に置かせてもらうことなど、導入に先立ち、サ責が利用者宅を全て訪問し、同意書をもらった。本人が認知症で、家族が遠方にいる場合には電話や郵送を利用した。全利用者から同意を得るまでに数カ月を要したという。

データ移行には多大な労力

 使用開始に向けての初期設定や、ヘルパー・利用者の情報の取り込みにも多くの時間を費やした。山科事業所では、約300人の利用者に対し、サ責7人が1カ月以上かけて作業した。

 もともと使用していた基幹ソフトからのケアウイングへのデータ移行は、サ責が行った。しかし、名前や住所などの基本情報しか自動で共有できず、計画書や細かい手順書は形式の違いもあり、随時手入力する必要があった。

 同法人では、ソフト活用を迅速に進めるため、まずは入退室記録に必須な個々の利用者のスケジュールを優先して入力した。ヘルパーがスケジュールをもとに入退室の管理ができるようになることと並行して、手順書などの入力を進めた。

ヘルパーに寄り添い操作をサポート

 また、高齢のヘルパーにソフトに慣れてもらうことは大変だった。同法人のヘルパーの年齢構成は、最多が60代で、最高齢は80歳を超える。

 メーカーから管理者とヘルパー向けに行われた研修後の1カ月間は、従来の紙の記録とケアウイングの使用を並行して行った。

 その後も、使用方法のわからないヘルパーには、サ責が1対1で個別対応した。文字入力が難しい場合は、音声入力を活用し、孫にスマホの使い方を聞きながら努力していたヘルパーもいたという。

 当初は「前の画面へ戻る方法がわからない」など、見たことない画面に行くと対応がわからず頻繁に電話がかかってきていたが、導入後半年が経つ現在では、多くのヘルパーが操作に慣れてきたそうだ。 

 導入当初には、大きな反発や退職者が出ることを懸念していたが、管理者やサ責がヘルパーに寄り添い、不安を除くために丁寧に対応したことが導入成功の要因という。

 同法人の今年度の目標は、ソフト導入によるサ責の生産性向上。業務効率化とさらなるサービス充実への取り組みはこれからも続く。
(シルバー産業新聞2023年7月10日号)

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