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介護保険制度の改善求め 要望続々

介護保険制度の改善求め 要望続々

 次期介護保険制度改正に向けて、介護業界の各団体や自治体から要望が相次いでいる。すでに、人材不足によって介護サービスが利用できない事態も発生しており、要望の多くは、物価高騰への対応や、深刻な人手不足とその解消に向けた報酬の引上げ等、制度の根本的な見直しとなっている。

 介護事業者や職能関連等の12団体は、10月19日、岸田文雄総理に宛て「物価高騰対策および介護現場で勤務する職員の処遇改善に関する緊急要望」を提出した。今年度の緊急経済対策・補正予算に、光熱水費、食材費の物価高騰へのさらなる対応や、介護職員の処遇改善を要望した。

 要望に先立ち、介護関係8団体は「介護現場における賃上げ・物価高騰・離職者等の状況調査」(4726カ所)を緊急に実施。結果からは、23年度の賃上げ率が1.42%で、春闘の賃上げ率3.58%を大きく下回っている状況が分かった。また、これに伴い、離職者が顕著に増加。特に経験豊かな中堅職員の離職率は50%近く増加している。介護職員が他業種へ流出している例も多くみられた。

 すでに、厚労省の雇用動向調査によると、医療・福祉における入職超過率は、今年度、はじめてマイナスとなり、退職者は入職者を上回った。また、人件費の捻出については、これ以上の捻出は不可能と答えた割合は47.5%で、事業の効率化(29%)を大きく上回っているのも調査結果から分かった。

東京都が緊急提言

 また東京都は、10月10日、「介護報酬改定等に関する緊急提言」を発表した。今年度の最低賃金の引き上げで、東京都は過去最大の引き上げ額、1113円となった。コロナ禍後、様々な業種がコロナ禍で手放した人材の獲得が激化し、その中で公定価格で運営する介護現場では、人材が流出する恐れが現実的になった。そのため以下の緊急提言を行い、介護報酬改定の考え方がまとめられるタイミングを捉えて、国へ緊急提言するとしている。

Ⅰ 大都市にふさわしい介護報酬及び施設基準の見直し(3提言)
Ⅱ 介護職員等の処遇改善(2提言)

 介護報酬改定については、東京都の人件費割合や物件費・土地建物の取得費等の実態の把握や分析を適切に行うことも求めている。
東京都の提言概要

東京都の提言概要

新たに介護支援専門員の処遇改善求める

 東京都の提言には新しく介護支援専門員の処遇改善も含まれた。提言理由は以下の3点。

▲国はこれまで、試験の受験要件の見直しなどにより、介護支援専門員の資質や専門性の向上を図ってきたがその一方で、処遇改善加算については、介護支援専門員を対象としてこなかったため、その専門性に見合った給与となっていない。
▲近年、介護支援専門員証の交付者数は過去10年間の平均以下に留まっており、都内で実務に従事する介護支援専門員数は、令和元年度をピークに横這いで推移するとともに、60歳代から70歳代が全体の3分の1を占めている。都内の保険者や事業所からは、職員の高齢化による離職などの要因により、介護支援専門員が不足しているとの声が上がっている。今後、介護サービス需要の拡大が見込まれる中、将来的に介護支援専門員の不足が懸念されている。
▲介護支援専門員の安定的な確保に向けて、その業務の専門性に見合った給与となるよう、新たに提言する。

労働者団体からも要望

 介護の労働者団体の最大手、日本介護クラフトユニオン(NCCU)は、10月18日、宮﨑政久厚労副大臣と面会し、62万2365筆の署名を手渡した。署名活動は、すでに7月に厚労大臣に提出している「介護報酬改定に係る要請書―介護人材確保のために―」を実現するため同月から実施してきた。

 要請事項は次の2点。
1.介護従事者が、介護の仕事を安心・安定して永く続けることが出来る水準に介護報酬を設定してください。
2.ご利用者・ご家族そして介護従事者が、理解し納得できるよう簡素な仕組みの介護報酬を設定してください。

 組合員からは、訪問介護事業所で、介護職員の不足によって介護サービスの提供を断わらざるを得ないケースが出ていることや、施設系事業所では空き室があっても、利用者を受け入れられない状態も広がっていること。今春の賃上げでは、一般企業の賃上げ率が3.58%であったのに対して、NCCUの組合員の賃上げ率は有額回答で1.6%、しかも半数以上の組合員は賃上げがゼロで、定期昇給もなかったことなど、高い賃金アップを実現した一部事業者とは異なり、深刻な実態が露呈している。

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