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107の医療・介護施設展開 人材育成から福祉のまちづくりまで

107の医療・介護施設展開 人材育成から福祉のまちづくりまで

 10法人107の医療・介護施設・事業所を運営する「つしま医療福祉グループ」。「ノーマライゼーション」の実践から、地域包括ケアシステムの構築、現在はまちづくりまで、その取組は年を追うごとに広がっている。北海道で地域の注目の事業者を取材した。

「ノテ地域包括ケアシステム」を構築

 対馬徳昭代表(写真)が25歳の時に特別養護老人ホームを見学し、「老人福祉を一生の仕事にしよう」と決意したのが、「つしま医療福祉グループ」創設のきっかけ。1983年に母体となる「社会福祉法人ノテ福祉会」を設立し、全国に先駆けてデイサービスを展開するなど、住み慣れた自宅や地域で暮らし続けられる仕組みを模索してきた。特に在宅介護の切り札として制度化された、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と小規模多機能居宅介護の開発に注力し、特別養護老人ホームに、小規模多機能と定期巡回を組み合わせた先駆的な「ノテ地域開発包括ケアシステム」を構築。在宅介護の限界点を高める取組として、北海道だけでなく、仙台市や船橋市(千葉県)など、東日本の各地で広がりをみせている。

「ノーマライゼーション」の実践

 対馬代表が特にこだわっているのが、「ノーマライゼーション」の実践だ。起業して間もない頃、デンマークの先進的な介護が新聞で紹介されたのを見て、真実を自分の目で確かめようとデンマークを訪問。そこで、人々が安心して歳を重ね、高齢になっても生きがいと誇りを持って暮らしている姿を目の当たりにし、衝撃を受けた。「高齢者や障がい者が特別視されることなく、地域で暮らす個人として、社会参加できる『ノーマライゼーション』の考えが浸透し、高度で総合的な福祉制度が確立されていた」(対馬代表)。

 その思想を日本でも実現しようと取り組んだのが、グループの総本山となっている「アンデルセン福祉村」だ。総面積7万6000㎡の土地に、高齢者施設や障がい者就労継続支援事業所、学校を集積させ、高齢者や障がい者、介護従事者、外国人技能実習生、学生など、世代や国籍の異なる人たちが多様性の中で日常を過ごすコミュニティを形成。さらに、職員250人のうち、60歳以上が8割を超える、グループのNPO法人「シニアアクティブ」のスタッフが、「アンデルセン福祉村」の施設管理や利用者の送迎などを行い、生き活きと活躍している。

 また、就労支援の一環として、障がい者の通年雇用を目的に、敷地内に湧く温泉水を利用して、トラフグ養殖事業も展開。給餌や水質管理、清掃などの業務は、グループの就労継続支援A型事業所に勤務する障がい者やNPO法人の高齢者が従事し、「極上の養殖トラフグ」を道民の身近な食材として普及させている。

地域共生社会を実現する「ココルクえべつ」

 さらに、江別市が2018年から取り組む「生涯活躍のまち」構想の整備事業者にも選定され、昨年から「ココルクえべつ」の名称で事業がスタート。高齢者や障がい者施設・住居のほか、障がい者就労継続支援A型事業所のパン工房、レストラン、温泉入浴施設、交流農園、パークゴルフなどを整備し、高齢者や障がい者らの暮らしを支えるとともに、年齢や障がいの有無、国籍を問わず、多世代が交流し、共生できる社会を、北海道や江別市、地域の住民らと作り上げている。

医療と介護の人材育成

 ノーマライゼーションの実践から、地域包括ケアシステムの構築、やがてはまちづくりへと、「つしま医療グループ」の取組は年を追うごとに広がりを見せている。ほかにも、2014年には日本医療大学を開学し、医療・介護の人材育成や認知症研究に取り組むほか、昨年10月からは日本医療大学病院を社会福祉法人ノテ福祉会が事業継承。「ノテ地域包括ケアシステム」をもう一段進化させる」と、対馬代表は意欲を見せる。今後も同グループの取組から目が離せない。

(シルバー産業新聞2022年3月10日号)

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