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ケアマネアンケート「担当件数の逓減制緩和」評価する41%・評価しない56%

ケアマネアンケート「担当件数の逓減制緩和」評価する41%・評価しない56%

 21年度介護報酬改定に向けて介護給付費分科会の審議報告が取りまとめられた。本紙では11月~12月にかけて、全国のケアマネジャーを対象に、居宅介護支援の見直しの内容についてアンケートを実施。153件の回答が得られた。調査の結果、逓減制の緩和について「評価できる」と回答したケアマネジャーは41%、「評価できない」が56%と、評価が二分。「評価できる」とした意見は、その多くがICTの活用による効率化を前提に、持ち件数を増やせるとする声だった。一方で「評価できない」とした意見では、負担増や質の低下を懸念する声が多く上げられた。医療機関への通院同行の報酬化については、80%が「評価できる」と回答。適切なケアプラン作成に必要な業務として好意的にとらえる意見が多くあげられた。退院・退所加算の要件として福祉用具専門相談員などがカンファレンスに参加することについては83%が評価できると回答。適切な福祉用具活用に向けて多くのケアマネジャーが福祉用具専門相談員の参加の必要性を感じていることが分かった。

 2021年介護報酬改定に向けて、居宅介護支援では40件目から適応されていた逓減制を、ICT機器の活用や事務職員の配置を要件に45件目から適用する案が示された。

 逓減制の緩和について評価できるかどうかを尋ねたところ「評価できる」と答えたケアマネジャーが41%、「評価できない」が56%となり、「評価できる」を上回る結果となった。

 その理由を自由記述で尋ねたところ、「評価できない」と回答したケアマネジャーから多くあげられたのが、ケアマネジャーの負担が増えることを懸念する意見。

 「年々、ケアマネに求められる役割が多くなり、業務量が増えている。1人当たりの件数が増えると利用者・家族が満足できる支援は難しい」(青森県、女性)や「緩和すれば担当人数はどうしても増えていくと思われる。事務職を置いたとしても多くの時間がかかってしまう」(富山県、女性)といった意見など、ICTにより業務を効率化しても、それ以上に負担が増えることを懸念する意見が多くあげられた。

 また、質の確保を心配する声も多くみられた。「一人ひとり異なったニーズを抱える利用者の支援であり、担当件数が多くなるとケアマネジメントの質の維持・向上をめざすことが難しくなると思う」(富山県、女性)や「ケアマネの仕事は介護保険以外もある。ICTの活用や事務職員の配置で負担軽減できるのは、ごくわずかではないか。その状態で担当件数を増やして今と同じ質を確保できるとは思えない」(茨城県、女性)などの意見が寄せられた。

 持ち件数の増加により時間をかけて最適なプランを立てるのが難しくなることから慎重に考える意見があげられた。

 一方で、「評価できる」と答えたケアマネジャーで多かったのが、ICTの活用による業務の効率化を期待する意見。「逓減制により事業所は、新規依頼を受けにくくなっている。ICTの活用等によって業務の負担が減れば数を増やしても質の低下を免れると思う」(茨城県、男性)や「ケアマネジメントの業務内容は担当数が増えても変わらないのに、減算となることで質が低下すると認識されていることに不満があった。ICT活用など時代にあったケアマネジメントができることで質も向上するのではないか」(鹿児島県、女性)など、ICTの活用により、質を確保しつつ持ち件数を増やせるとする意見が多くあげられた。

 テクノロジーの活用=負担軽減・質の向上と必ずしも現場が感じているわけではなく、効率化と質の担保の両立を実現する取組を求めていることが改めて明らかになった。

 今回の改定では、これまで任意で行われていたケアマネジャーの医療機関への通院同行による情報連携を報酬化する案も提示されている。

 アンケートでは通院同行への報酬上の評価についても意見を尋ねた。その結果80%が「評価できる」と回答。「主治医の照会に苦労しているケアマネが多くいる。診察に同行することで、顔の見える関係づくりができ、病気に関する情報収集などもできるという利点もある。一方で外来受診は時間がかかるため、そこに対する評価をしてもらうことでさらに医療との連携が進む」(鹿児島県、男性)など、これまで任意だった、医療機関へ同行しての情報連携が積極的に進むと、好意的な意見が多くあげられた。

 「評価できない」とした意見では、「通院への同行が業務的になっていく要素があり、その結果業務への負担がさらに増える可能性がある。回数制限、あるいは、プランの変更や担当者会議の条件つきであればいいと思う」(鹿児島県、女性)など、報酬への位置づけで必須業務ととらえられ、常に同行を求められることを不安視する声も上げられた。

退院・退所時の専門相談員参加 評価83%

 アンケートでは退院・退所に関する加算の要件として、福祉用具専門相談員がカンファレンスへ参加することへの評価も聞き取った。その結果83%のケアマネジャーが「評価できる」と回答。在宅復帰後の適切な福祉用具活用につなげられることで、多くのケアマネジャーが好意的にとらえていることが分かった。

(シルバー産業新聞2021年1月10日号)

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