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外国人介護士の生活習慣を共有するセミナー開催

外国人介護士の生活習慣を共有するセミナー開催

 外国人介護士の採用が進む中、介護施設等では、日本人と異なる外国人の生活習慣への理解が求められている。そんな中、「ジルバブについて正しく知ろう~介護施設でのジルバブ着用について考える~」というオンラインセミナーが開かれた。主催したのは、外国人介護士の支援を行う張福祉コンサルティング代表の張悦さん。ファシリテーターは、外国人介護士の労働者事情に詳しい蔵本孝治さんが務めた。

“ジルバブ”は神様のお守り

 “ジルバブ”は、イスラム教徒の女性が髪や首などを覆うために使う服飾品。介護施設内で働く外国人介護士が就業中に着用する場合があり、生活習慣の違いから、職員や施設入居者から戸惑いの声も挙がっているという。「イメージや印象で偏見を持たずに、相互理解を深めることで、外国人労働者が働きやすい環境を作りたい」と蔵本さんは開催の趣旨を話す。

 ゲストは、2008年にEPA第1期生の外国人介護士を採用したことで知られる、社会福祉法人「福祉楽団 杜の家なりた」(千葉県)の上野興治施設長。同施設で働く介護福祉士のイスナ・オクタフィアニさん、有料老人ホームで就業中の、介護士ヌル・ハサナーさんもコメントした。

 上野施設長は、「お姫様に介助してもらうわけにいかないわ」と入居者に言われた経験を話す。ジルバブを被った外国人介護士にお世話される入居者が、その姿をお姫様だと思ったというエピソードだ。入居者は1カ月ほどで慣れてくれて、その後は、ジルバブでのトラブルはないと話した。

 イスナさんは、ジルバブはとても大事なもので、小さい頃から被るように両親から教わった。日本ではじめに勤めた施設で、被ってはいけないと言われた。介護福祉士を取得して、被ってもよい今の施設に転職した。ヌルさんは、高校生の時からずっと被っているが、「神様が守ってくれる気がするの」と上手な日本語でハミカム。今の施設では、ジルバブに関するルールは無く、入居者の安全を第一に考えて着用していると二人とも話す。「洋服に合わせてジルバブの色も工夫するの」と娘らしい一面も覗かせた。

 ジルバブ着用を認めない介護施設の理由としては、「ジルバブは不衛生?」「介助の時にひっかかる?」「ジルバブ」をとめるピンが危険?」「入浴介助の時に暑い(熱中症になる)?」「認知症の利用者にひっぱられる?」「利用者がジルバブをみておどろく、こわがる?」などだと蔵本さんは分析する。その一つ一つにゲストの外国人介護士からコメントがあったが、入居者と介護者双方の安全を考えて、問題なく対応していることが分かった。

 このセミナーでは、とにかく一度、日本人もジルバブを着けてみようという内容も盛り込み、参加した介護職員らも用意した布で巻き方を教わり、異文化を肌で体験した。体験者からは、「ジルバブを着用してみて一体感のようなものが湧いた」というコメントも出た。

 参加した日本人介護職の感想としては、「日本ではキリスト教には理解があるが、イスラム教には知識が少ないし、偏見があるのではないか」「これまでジルバブをイスラム教の女性への抑圧というイメージで見ていたが、イスナさんやハサナーさんの話を聞いて、違う印象をもった」「認めない人にも理由や価値観があるので、それを知って歩み寄っていくことが必要」「ヨーロッパではルール(色や着用方法)を決めてジルバブ着用を認めているケースがあるので、日本の介護施設でもルールを作って認めていくという方向になるとよい」など前向きな意見が目立った。

 蔵本さんは、今回、セミナーを通じてゲストに質問をしていく中で、ジルバブを通した文化の違いについて「施設側の不安は杞憂かもしれない。着用上の工夫をすれば解決できそうな問題だ」と締めくくった。今後、外国人介護士を受け入れる際の参考にして欲しい内容だ。今回のセミナーの様子はYouTubeでも配信している。

第86回ワールドケアカフェ 「ジルバブについて知ろう」前半

張福祉コンサルティングのYouTube配信(毎週金曜日、20時から配信中)
https://www.youtube.com/channel/UC2gJVd3hT7D7v47sL-rlFpA

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