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福岡県の介護保険 ノーリフティングケア実現へモデル施設選定

福岡県の介護保険 ノーリフティングケア実現へモデル施設選定

 福岡県は県内60市町村がある中で、33市町村が福岡県介護保険広域連合に属する。「広域連合では、県の保健圏域をもとに8つの支部を設置し、本部・支部・市町村で事務を分担している。効率的・効果的に事務を行い、ノウハウや専門職を共有しながら事業を進めるなど、広域連合のメリットを活かし、介護保険制度の円滑な運営に向け取り組んでいる」と、介護保険課企画主査の緒方巌さんは話す。

福岡県身体拘束ゼロ宣言

 1998年に県内10カ所の病院が全国に先駆け「抑制廃止福岡宣言」を行った。その流れを受け、身体拘束を禁止する介護保険法の施行後、県では介護サービスの質向上へ向けた取り組みを促そうと、身体拘束ゼロに取り組む施設の登録を始めた。県内の介護施設・事業所を対象に、身体拘束ゼロに向けて取り組むことを宣言した施設・事業所を登録し公表する「福岡県身体拘束ゼロ宣言」を行っている。

 参加する事業所は、▽身体拘束廃止をトップが決断し、責任を持って取り組む▽委員会設置など、多職種が話し合う機会を設け、より良いケアを目指す▽最新の知識と技術を職員が学ぶ機会を設け、積極的に取り入れる▽やむを得ず身体拘束を行う場合は、「緊急性」「非代替性」「一時性」の要件を徹底して遵守する――などの6項目に沿った取り組みを行うことを宣言し、具体的な取組内容も明記した「宣言書」を県へ届け出る。

 届け出た事業所には、県から「宣言ポスター」を送付し、掲示してもらう。11月1日時点で1232事業所が登録されている。県では取り組みを拡げようと、県内の特養・老健・介護医療院などの施設と連携し、身体拘束ゼロの取り組みを実地見学やオンラインで共有したり、意見交換などを行う機会も設ける。

 「取り組みを進める施設では、居室のドアが動いたら音が鳴るよう工夫したり、見守りシステムを活用して、離床やトイレ利用の頻度などを把握し、転倒リスクを評価し、未然に転倒を防ぐ介助などを実施するなど、様々な取り組みが行われている」と指定係長の江口和代さんは話す。
「身体拘束ゼロ宣言」をした事業所が掲示するポスター

「身体拘束ゼロ宣言」をした事業所が掲示するポスター

特養など35施設が環境改善へ実践

 県では、スライディングボードやリフトなどの福祉用具を積極的に活用するなどし、介護現場での持ち上げや抱え上げ、引きずりなどのケアをなくし、介護職員の腰痛減少や介護の質向上を図ろうと、「ノーリフティングケア普及促進事業」を20年度から実施している。

 同事業では、県内4地区でそれぞれモデル施設を選び、ノーリフティングケアを定着させるため、マネジメント体制の整備へ向けた取り組みを進める。福祉用具の活用・開発を支援する活動を行う「NPO福祉用具ネット」に委託し、マネジメント研修を行うとともに、先行して取り組む施設が、他施設へ助言・支援などを行う。「職場環境改善を目指す取り組みは、施設全体で動かす必要があるため、管理者にノーリフティングケアへの理解を促すことを重視し、研修を進めている」と高齢者地域包括ケア推進課企画主査の折尾敬敏さんは話す。

 現在、モデル施設は特養を中心に35施設が選定され、▽取り組み1年目の「新規取組施設」(13施設)▽取り組み2年目で、新規施設へのアドバイスやより高度な指導者養成に取り組む「メンター施設」(11施設)▽取り組み3年目以上で、指導者養成研修を受講しながら、前述施設への支援や地域での情報発信を担う「アドバイザー施設」(11施設)――が活動している。

 年度末にはモデル施設による報告会を開催し、それぞれの取り組みを共有。レポートは県ホームページにも掲載し、広く現場への周知を図っている。昨年度からは、県内4地区それぞれで、モデル施設が中心となり、ノーリフティングケアに取り組む施設同士で定期的に勉強会を行う「地域連絡協議会」も立ち上がった。
 21年度は各地区で3回開催し、取り組み事例の共有や意見交換などを通じて、施設間の連携を深めた。モデル施設では、職場環境が改善し腰痛を訴える職員が減るなど、一定の効果が上がっている。
(シルバー産業新聞2022年12月10日号)

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