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財務状況の報告義務 情報公表と新システム両方の報告が必須
今年度から、原則として全ての介護サービス事業者に財務状況の報告が義務化された。注意が必要なのは、介護サービス情報の公表制度と来年1月に開設される予定の「介護サービス事業者経営情報データベースシステム」(以下、DBシステム)の2つの報告が求められる点。報告する内容や期限も異なる。厚生労働省は、情報公表制度での報告の関連通知を10月18日に発出。DBシステムは8月以降実施上の留意事項やQ&A、11月28日には運用マニュアルを公表している。財務状況を公表する規定は、社会福祉法人や障害福祉サービス事業所、医療法人で先行して設けられていた。
報告する内容も期限も異なる
今回のそれぞれの義務化について、情報公表制度では施行規則を今年4月に改正し、従来、事業者に求められる報告内容に財務状況の項目が新たに加わった。
DBシステムは同じく4月施行の改正介護保険法に、介護事業者の経営情報を収集するデータベースを整備し、国民に向けて分かりやすくなるよう、属性等に応じてグルーピングされた分析結果の公表を位置付けたことによるもの。
情報公表制度への報告内容に財務状況を追加した理由について、厚労省は「利用者の介護事業者の選択に役立ててもらうため」と説明する。
これに対してDBシステムは、昨今の物価や水道光熱費の高騰、災害・新興感染症による影響を踏まえた支援策の検討を行う上で、3年に1度の介護事業経営実態調査を補完することを主な目的とする。それぞれ制度の趣旨とともに、報告する内容や期限なども異なる点に注意しなければならない。いずれも適切に報告しなければ、運営基準違反で行政の指導対象となり得る。
DBシステムは同じく4月施行の改正介護保険法に、介護事業者の経営情報を収集するデータベースを整備し、国民に向けて分かりやすくなるよう、属性等に応じてグルーピングされた分析結果の公表を位置付けたことによるもの。
情報公表制度への報告内容に財務状況を追加した理由について、厚労省は「利用者の介護事業者の選択に役立ててもらうため」と説明する。
これに対してDBシステムは、昨今の物価や水道光熱費の高騰、災害・新興感染症による影響を踏まえた支援策の検討を行う上で、3年に1度の介護事業経営実態調査を補完することを主な目的とする。それぞれ制度の趣旨とともに、報告する内容や期限なども異なる点に注意しなければならない。いずれも適切に報告しなければ、運営基準違反で行政の指導対象となり得る。
情報公表制度
財務三表をアップロード・公表
情報公表制度での報告では、事業者は事業所・施設(会計の区分をしていないなど、やむを得ない場合は法人単位でも可)の財務三表をPDFファイルなどで同システムへアップロードする。
財務三表は、貸借対照表、損益計算書(社会福祉法人会計では事業活動計算書)、キャッシュフロー計算書(同資金収支計算書)のこと。ただし、会計基準上、作成が求められていない書類の報告までは求められておらず、資産、負債、収支の内容がわかる簡易な計算書類でも差し支えないものとされている。また、「会計基準上、キャッシュフロー計算書の作成が求められていない場合、必ずしも報告する必要はない」とQ&Aで示している。
10月に関連通知を国が発出し、同システムの実施主体である都道府県と政令市から、管内の事業所に対してマニュアルや報告期限が通知され始めている。例えば、広島県では報告・公表を4回のスケジュールに分け、最も早い事業者は12月2日が報告期限、1月20日に公表開始を予定している。
財務三表は、貸借対照表、損益計算書(社会福祉法人会計では事業活動計算書)、キャッシュフロー計算書(同資金収支計算書)のこと。ただし、会計基準上、作成が求められていない書類の報告までは求められておらず、資産、負債、収支の内容がわかる簡易な計算書類でも差し支えないものとされている。また、「会計基準上、キャッシュフロー計算書の作成が求められていない場合、必ずしも報告する必要はない」とQ&Aで示している。
10月に関連通知を国が発出し、同システムの実施主体である都道府県と政令市から、管内の事業所に対してマニュアルや報告期限が通知され始めている。例えば、広島県では報告・公表を4回のスケジュールに分け、最も早い事業者は12月2日が報告期限、1月20日に公表開始を予定している。
介護サービス事業者経営情報データベースシステム
前期会計に基づき、介護事業の収益・費用などを報告
DBシステムは1月の開設と同時に、事業者がシステム上で報告できるようになる。こちらも報告単位は、原則として事業所・施設ごとだが、会計を区分していないなど、やむを得ない場合にはサービス・拠点別や法人単位での報告が認められている。
DBシステムで報告する財務情報は、前期の損益計算書に基づく介護事業の収益や費用など。情報公表制度のように会計書類のアップロードではなく、定められた項目をシステム上で入力する仕組みだ。
収益は介護事業全体の額のみ必須で、在宅サービスや施設サービスといった内訳まで入力するかは任意。一方で、費用は人件費や水道光熱費の上昇などを把握するため、給与費や水道光熱費なども必須項目としている。収支以外に、職種ごとの人数(会計期首時点)なども必ず記載する。兼務の場合は、主に従事する職種でカウントする。職種ごとの給与・賞与は任意項目とされている。
同省老健局認知症施策・地域介護推進課の長光隆佑課長補佐は、「このシステムで報告いただく情報も含めて今後の支援策などが検討される。より詳細に実態を把握するために、任意項目も可能な限り報告をお願いしたい」と呼び掛ける。
DBシステムで報告する財務情報は、前期の損益計算書に基づく介護事業の収益や費用など。情報公表制度のように会計書類のアップロードではなく、定められた項目をシステム上で入力する仕組みだ。
収益は介護事業全体の額のみ必須で、在宅サービスや施設サービスといった内訳まで入力するかは任意。一方で、費用は人件費や水道光熱費の上昇などを把握するため、給与費や水道光熱費なども必須項目としている。収支以外に、職種ごとの人数(会計期首時点)なども必ず記載する。兼務の場合は、主に従事する職種でカウントする。職種ごとの給与・賞与は任意項目とされている。
同省老健局認知症施策・地域介護推進課の長光隆佑課長補佐は、「このシステムで報告いただく情報も含めて今後の支援策などが検討される。より詳細に実態を把握するために、任意項目も可能な限り報告をお願いしたい」と呼び掛ける。
会計ソフトからの取り込みも
システム上での直接入力以外に、会計ソフトがDBシステムと連携対応している場合にはCSVファイルを作成し、取り込ませることも可能。同省では業務負担や入力ミスの軽減のため、連携対応している場合にはファイルの取り込みを推奨している。使用する会計ソフトベンダーなどへ対応予定を確認するのも事前にできる準備の一つだ。
入力した情報はグルーピング化して公表される。この点も、事業者個々の財務諸表が公表される情報公表制度と大きく異なる。
入力した情報はグルーピング化して公表される。この点も、事業者個々の財務諸表が公表される情報公表制度と大きく異なる。
大半は来年3月が初回の報告期限
報告期限は初回に限り、多くの事業所が来年3月末まで。具体的には24年3月~12月に会計期末を迎えた法人が該当する。これに当てはまらないのは決算月が1月か2月の法人。25年1月期末の会計に基づき3カ月後の4月までに報告し、25年2月期末の場合は5月までに報告する。
2回目以降は原則として決算月3カ月以内が報告期限。したがって、3月決算の法人は23年4月―24年3月の会計期間に基づく報告を来年3月までに終え、さらに6月までに24年4月―25年3月の報告を行う必要がある。
2回目以降は原則として決算月3カ月以内が報告期限。したがって、3月決算の法人は23年4月―24年3月の会計期間に基づく報告を来年3月までに終え、さらに6月までに24年4月―25年3月の報告を行う必要がある。
GビズIDアカウントの取得が必要
DBシステムが開設される1月から報告ができるようになるが、それまでに準備しておきたいのがGビズIDのプライム、メンバーのアカウント。GビズIDは、一つのID・パスワードでさまざまな行政サービスにログインできるアカウントで、法人代表者や個人事業主などが取得できる。DBシステムのログインに必ず必要になるため、現時点で保有していないのであれば申請が必須だ。代表者のマイナンバーを使ってオンライン申請すれば最短で即日発行されるが、書類郵送申請の場合は、通常1週間程度かかると説明されている。
詳しい申請方法などは、同IDのWEBサイト(https://gbiz-id.go.jp/top/)で確認できるが、注意しなければならないのがアカウントの種類。「エントリー」のアカウントではDBシステムへログインできないため、「プライム」または「メンバー」のアカウントが必要だ。
詳しい申請方法などは、同IDのWEBサイト(https://gbiz-id.go.jp/top/)で確認できるが、注意しなければならないのがアカウントの種類。「エントリー」のアカウントではDBシステムへログインできないため、「プライム」または「メンバー」のアカウントが必要だ。
(参考)会計基準とは
情報公表制度、DBシステムの報告ではいずれも法人等で採用している会計基準を報告する。法人種別に表の会計基準を採用していることが多い。8月2日に発出された実施上の留意事項では、「報告する収益・費用の項目」と対応する「会計上の勘定科目」が会計基準ごとに示されている。