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特養ながまち荘 誰もが社会から切り離されない雇用機会の提供

特養ながまち荘 誰もが社会から切り離されない雇用機会の提供

 済生会が運営する特養「ながまち荘」(山形市、岩﨑勝也施設長)では、刑余者の就労支援・再犯防止や、高齢者・障がい者雇用などに取り組んでいる。多様な人材の就労の場づくりや、介護人材確保に繋げている。

 同施設では2012年より社会貢献事業として保護観察者の施設での社会貢献活動の受入れを実施。また17年からは就労支援、山形刑務所での受刑者への職業セミナーや、認知症サポーターの養成なども行ってきた。

 岩﨑施設長は「保護観察対象者の社会貢献活動受入れ当初は、刑余者に対して怖いイメージがあった。しかし、実際に触れあってみると全員がそうではないということが分かった」と振り返る。

 取組みをきっかけに岩﨑氏は犯罪や非行をした人の立ち直りを地域で支える「保護司」の辞令を受けた。18年からは同施設では協力雇用主として満期釈放後の刑余者の雇用をスタート。これまで11人を雇い入れ、現在4人が勤務している。

 業務主査の手塚敬一郎氏は「罪を犯してしまった人の中には、貧困や家庭状況など育った環境により罪を犯してしまった場合が考えられる。刑期を全うし更生した刑余者が社会に復帰した後、しっかりと受け入れる場を作ることは、再び犯罪に手を染めない環境づくりとしてとても重要だ」と強調する。

 刑余者雇用は通常の採用プロセスと同様、面接で適性を評価し、法人理念や考えに共感して勤務ができると判断した場合に採用。勤務内容は他の職員と変わらない。刑余者雇用の取組みはオープンにしているが、いつ・誰を刑余者として採用したか公開することはない。

 「更生した一個人として採用している。先入観を持たず刑余者が働きやすい環境を守ることも我々の仕事だ」と岩﨑氏。「合わせて、既存職員が安心できる環境ももちろん重要。個々の性格や適性を判断し、性犯罪や依存性の高い薬物使用者については雇用は行っていない」と説明する。

障がい者雇用率5%

 同施設での障がい者雇用率は22年時点で5.0%と、国が定める法定雇用率2.3%を大きく上回る。国が実施する「精神・発達障害者しごとサポーター」育成にも力を入れ、職員33人がサポーターとして活躍する。

 「十分能力があるのに、障害を理由に就労の場がない人が多い。就労支援事業では得られる賃金は限られ、障がい者が自立して生活するには十分とは言えない」と手塚氏。障害特性や個人の能力を把握して、その人ができる業務を振り分けたり、勤務時間を調整することで、働き続けられる環境を整えている。

 このほか、高齢者雇用では、認知症サポーターのスキルアップにつなげる独自講座「認知症サポーター活性化事業」に参加する就労意欲のある高齢者を積極的に採用し、現在6人が働いている。

 「リネン交換や、掃除、電気交換などの業務を障がい者や高齢者に行ってもらうことで、介護職が専門的ケアに専念できる。また、多様な人材を受入れる中で、誰もが働きやすい職場づくりにも繋がっている」(手塚氏)

 岩﨑氏は「社会福祉法人は介護だけではなく社会貢献や、地域交流、情報発信など幅広く取組んでいる。我々が持つ施設や人的資源を上手く活用して地域を支える福祉拠点となるよう今後も取組んでいきたい」と語る。
(シルバー産業新聞2023年7月10日号)

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