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地域特集・山形 介護の魅力発信で離職率9.2%

地域特集・山形 介護の魅力発信で離職率9.2%

 山形県は2022年10月時点で高齢者人口約36万2000人、高齢化率は34.8%と、全国平均の29.0%を大きく上回っており、県民の3人に1人が高齢者という、全国有数の高齢県となっている。

 高齢者数は25年に約36万6000人でピークを迎える見込みだが、年少人口・生産年齢人口の減少に伴い高齢化率は今後も上昇を続け、40年には41.0%に達する見込みだ。

 要介護認定者数は00年の2万7850人から22年3月時点には6万3560人と約2.3倍に。要介護認定率は00年の9.8%から、22年3月時点で17.6%と7.8ポイント増加。25年18.5%、40年21.7%と更なる増加を見込む。

 高齢者支援課の佐藤伸介課長補佐(総括・介護指導担当)は「要介護認定率を分析すると、15年の19%をピークに減少し、現在一定水準を維持している。国の推計によれば、山形県は現時点と25年・40年の認定率の差が最も少ない県となっている。一度同程度のピークを経験していると言えるが、少子高齢化の影響により、今ある介護サービスをどう維持していくかが大きな課題となる」と分析する。18年度末時点で、要介護1~5の認定率は全国18位の18.3%で、全国平均の18.7%と同等である一方、要支援1~2の認定率はわずか3.5%(全国平均5.2%)と全国4位と低い。

 佐藤氏は「比較的元気に過ごしている人の割合が高く、生活に困難が生じた段階で要介護認定を受けているためではないかと考える」と話す。

小多機の月額給付全国の2.5倍

 サービス別の給付月額では、特養、老健、通所介護に次いで、地域密着型サービスの認知症対応型共同生活介護(グループホーム)と、小規模多機能型居宅介護の利用が多くなっている。

 特に小多機は、第1号被保険者1人あたりの給付月額が全国平均599円に対し、同県では1527円と約2.5倍。
「小多機については要介護度が高い人の利用割合が多いことが、給付月額が高い要因の1つといえる。利用者の生活に合わせてサービスを組み合わせることができる小多機を上手く活用して、住み慣れた自宅での生活に繋げていただいていると考えている」(佐藤氏)。

 同県では、在宅療養生活を支えるサービスとして、▽定期巡回・随時対応型訪問介護看護▽小規模多機能型居宅介護▽看護小規模多機能型居宅介護――の普及を強化している。23年6月時点で、定期巡回13カ所、小多機126カ所、看多機7カ所。定期巡回と看多機は看護師の確保が困難等の理由から一部地域のみでの実施に留まっている。

通いの場と生きがいづくり

 同県では「高齢者一人ひとりが自分らしく健やかに安心して暮らせる“幸せやまがた”の実現」を基本目標として、①介護予防や認知症施策、在宅医療との連携を推進②介護サービスの充実とサービスを提供する基盤の強化③高齢者が安心して暮らせるための地域共生社会の実現――の3つの施策を掲げている。

 ①の「介護予防や認知症施策、在宅医療との連携を推進」の1つである、介護予防・生活支援・社会参加の推進では、健康教室等の参加でポイントを貯めて協力店などで割引を受けられる「やまがた健康マイレージ事業」等を実施し、若い時からの自発的な健康づくりの取組を促進している。

 また、県内には、市町村が設置を促進する、高齢者が趣味の活動や介護予防を行う住民主体の通いの場(月1回以上開催)が1576カ所あり、高齢者の6.4%が参加している。21年からはコロナ禍であっても通いの場を継続できるよう、デジタルを活用した通いの場のモデル事業を実施。対象地域の参加者にタブレット端末を貸し出し、説明会や操作説明等のサポート体制を整備した上でオンライン会議システムを活用して運動教室などを行った。

 介護予防・日常生活支援総合事業で、住民主体のB型を増やすため、担い手の養成に取組んでいる。「現在71カ所整備されているが充分とはいえない。事業立ち上げ補助も行ったが、そもそも担い手が不足していることから、その養成に力を入れている」と同課地域包括ケア推進主査の紀伊邦彦氏は振り返る。15年から実施している「担い手養成講座(実践講座)」の累計受講者は242人。「介護予防の視点からも健康づくりと社会参加は非常に重要。住民自らが活躍できる場を増やしていきたい」と同課の池田里恵課長補佐(地域包括ケア推進担当)は話す。各市町村が、担い手と担い手を求める通いの場や介護予防教室をマッチングする研修事業を展開し、総合事業の拡大を後押しする。

離職率9.2%多世代に介護の魅力発信

 同県では人材確保・定着に向けた魅力発信として、「やまがたKAiGO PRiDE(カイゴプライド)キャンペーン」を実施している。介護現場で働く職員にスポットをあてて、介護職を目指したきっかけや仕事のやりがい、魅力を写真や動画で発信する。

 同課介護人材育成主査の堀川伸一氏は「介護職は賃金水準が低く、厳しい労働環境というネガティブなイメージが就労の妨げになっている。介護職はかっこいい・やりがいがあるということを現場で活躍する職員から発信してもらい、介護のイメージアップに繋げていきたい」と取組みの狙いを話す。

 今年度からは新たに、現役介護職員や介護職経験者向けに魅力発信の方法を学ぶ「KAiGO PRiDEアンバサダー養成研修」を開始。中学・高校での出前講座や、介護施設で職員のセルフリスペクトを高める対話型講座、介護の日のイベントなどでの魅力発信に取組んでいる。

 また、地元新聞社が主催する小学生向け仕事体験イベント「キッズタウンやまがた」への介護ブース出展も定期開催。

 「新聞広告を出すと1週間もたたずに定員になるほど注目を集めている。子供だけではなく、保護者の介護への理解向上も期待している」(堀川氏)

 同県では、東北地方で初めて「外国人介護人材支援センター」を設置。介護事業所と県が連携して、外国人介護職員の仕事や生活上の悩みごとや困りごとの解決・解消に取組み、定着を図る。研修や説明会の実施の他、地方で働く外国人職員にとっては方言が勤務の壁になっていることから、「やまがた方言マニュアル」も作成している。

 堀川氏は「山形県では、在留資格の切り替えのタイミングで給与面などを理由に外国人職員が県外に移動することが課題の1つとなっていた。都市部は給与が良い反面、家賃や物価が高い傾向がある。地域特性などもしっかり伝えて、県内定着を進める必要がある」と訴える。

 こうした取組が効を奏し、21年時点の山形県内の介護施設・事業所における介護職員の離職率は9.2%となり、全国の離職率14.1%を大きく下回っている。

 堀川氏は「これまで県および関係機関・団体で取組んできた人材確保・定着の取り組みが貢献していると思われるが、今後は働き手世代の減少が進み、より人材確保が困難になることが予想される。多世代に介護の魅力を発信し、介護の仕事の理解促進に取組んでいきたい」と語る。

(シルバー産業新聞2023年7月10日号)

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