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実証試験で見守り全床導入 夜勤加配0.6人緩和を想定

実証試験で見守り全床導入 夜勤加配0.6人緩和を想定

 好日苑大里の郷(北九州市、社会福祉法人春秋会)は3ユニット29床の地域密着型介護老人福祉施設を主体に、GHなどを併設する複合施設。そのうち特養は、北九州市による介護ロボット等開発・導入実証事業の実施施設に2016年に選ばれ、カメラ式とバイタル式の2種類の見守りセンサーを全床に導入し先駆的に取り組んできた。

夜勤職員配置加算7月算定を想定

 同施設は、21年度介護報酬改定で見守り機器導入による夜勤職員配置加算の加配要件が緩和されたことをうけ、0.6人の加配による算定を見込む。3カ月の試用期間の間に、委員会や周辺機器導入の検討を行い、7月から算定できるように準備を進めている。

 見守り機器の導入以外に、緩和した要件で算定するには定期的な委員会の開催が必要になる。「事業所で行う会議の中で話し合う機会を設けるなど、既存の会議などを活用する形で効率的に準備していく」と施設長の渡辺英雄氏は説明する。

 並行して進めているのが、メーカーとの連携。渡辺氏は「仮に不具合が発生した場合、代替機などがすぐに用意できないと加算要件を満たせなくなる可能性もあるので、メーカーと対応についての話を進めている」と述べる。

 また、加配人数を0.6人に緩和するには、インカムの活用が必須。「過去に試験的に活用したところ、活用のメリットを感じられないとの声が現場職員から上げられたため、導入を見送った。この機会に、なぜ活用が進まなかったか、前回の課題を整理し、導入へ向けて再度検証を図る」(同氏)。

人手不足解決の一助となるか

 同施設ではこの数年人手が確保しにくくなっているという。「将来、今以上に介護業界全体で人手不足が進む不安もある。その中で必要な人員を確保するには報酬上での緩和策なども必要。見守り機器をすでに導入していた今回のタイミングで要件緩和が示されたことは、非常に大きなメリットだった」と渡辺氏は話す。

夜勤緩和の効果は検証済み

 活用している見守り機器は、カメラ付きで起き上がりや端座位等をスマホなどの端末から随時確認できる機器と、バイタルが計測できるもの。通知があった際はカメラの画像で利用者のベッド上の状態をあらかじめ把握することで、緊急性の判断が可能になり、不要な訪室を減らすことができるようになった。

 課長代理の西村優子氏は「見える化ができたことで事故につながるケースが減少し、職員の安心が得られている。ナースコールだけでは必死で走っても間に合わなかったケースが、今はかなり減らすことができた」と話す。

 一方で、「機器を過信することで事故が防げない懸念もある。命にかかわるような急変が機器の不具合で通知されないと重大事故につながってしまう」と渡辺氏。利用者の状態を確認するため、定期的な巡視も必ず行うように努めている。

 実証事業の効果検証では夜間の見守り時間が62%減少し、夜勤人員を3人から2人に減らすことができた。「夜勤の負担が大きいことは長い間課題だった。3人体制では月に職員1人当たり7回夜勤につく必要があったが、導入により5回程度に減らすことができた」と渡辺氏は話す。実証試験終了後も効果を維持するため、提供された見守り機器を継続利用している。

(シルバー産業新聞2021年5月10日号)

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