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リフトやインカムで個別ケア 特養「神の園」(京都・精華町)

リフトやインカムで個別ケア 特養「神の園」(京都・精華町)

 1972年に特養を創設し、地域の高齢者介護に関わりおよそ50年になる、社会福祉法人カトリック京都司教区カリタス会。03年6月の建替時に全室個室ユニットケアとなり、30年間続いた一斉ケアから小規模ケアに転換。「24時間シート」で利用者情報を共有化し、記録のICT化とともに、数年前からリフトやインカムなども導入した。「個別ケアを推し進めると、リフトに行き着く」と、齋藤裕三施設長(55)は話した。

小規模ケアの改革

 介護保険が始まる2年前の1998年、NPO法人で子育て支援などに携わっていた当時33歳の齋藤裕三施設長は、高齢者総合福祉施設「神の園」にデイサービスの運転手として職を得た。結婚し第2子が生まれ定職に就きたいと思った。やるからには勉強してスキルを上げたいと、介助員としても働きながら通信制の大学で社会福祉を学んだ。02年に社会福祉士の資格を取り、翌年には介護福祉士に合格し、続けてケアマネジャーになった。施設が、建替の条件だった全室個室ユニットケアに転換したのはその頃だった。ユニットケアへの転換は高齢者福祉へ邁進する齋藤さんにとって天命だったが、冷静にその必要性を捉えていた。
認知症ケア研修の 講師も務める齋藤施設長

認知症ケア研修の 講師も務める齋藤施設長

 「他施設のグループホームを見てユニットケアの良さが分かっていました。入所者の9割が何らかの認知症で、それまでの身体的ケア中心から認知症ケア中心へ変えていく必要があったのです。しかし、集団ケアが当たり前だった施設にとって、入居者一人ひとりに沿った個別ケアへの切り替えは職員には戸惑いが大きかったと思います。実際、ユニットケアを機に辞めていった人もいます」。幸い、齋藤さんは当時の施設長からユニットケアの展開を委ねられるようになった。

 「全室個室で顔の見える関係を築きながら小規模ケアへ展開を図ろうとしました。その人の嫌がることをしない。食事もムリに食べさせない。後で食べてもいい。そうすると、よい感情が生まれ、入所者と職員の関係性が良くなるのです」と、徐々に日々のケアの中にユニットケアの良さが浸透し、職員の中に「尊厳の保持」や「利用者本位」が定着していったという。

ユニットケア第2章

 「7時半に朝食を食べる人もいれば、9時の人もいます。個別ケアの結果です。人員体制は利用者1.9人対職員1.0人で対応しています。利用者1.6人の体制まで充足したことがありますが、経営的に続けることができず、職員の負担軽減を図りながら現在の人員体制で進めることになったのです」

 個別ケアの推進と職員の負担軽減の両立をめざし、同施設では「24時間シート」やインカムの活用、リフトやモジュラー型車いすなどの導入を図った。

 7年前、利用者ごとの1日のケアを書き込んだ「24時間シート」の活用が始まった。パソコン上の24時間シートに、聞き取った利用者ニーズを入力して、一人ひとりの暮らしの状況が分かるように一覧表示した。ケア情報がモニター画面で共有されることで、ベテランも新人も安心して介護にあたることができるようになった。いま、ケア記録のICT化に取組み、さらにサービスの質の向上とケアの効率化の両立を目指している。

 「全室個室のため、職員全員がインカムを持って連携したケアを行っています。コミュニケーションがスムーズになり、チームワークも高まります」と言う。
喫茶室では、テレビを見ながらおいしいコーヒーやお菓子を楽しむ

喫茶室では、テレビを見ながらおいしいコーヒーやお菓子を楽しむ

親和性のよいリフト

 年2、3回、同施設では、むつき庵の浜田きよ子さんによる排せつケアの研修が行われている。リフトやモジュラー型車いすの導入など、福祉用具の活用にもアドバイスを受けている。 

 リフトは、各ユニット1台の床走行式が活用されている。「個別ケアとリフトは親和性がよいのです。ユニットケアでは介護時間がばらけます。トランスファーについてもリフトを活用することで、安心安全に行えて介護負担も軽減されるのです」と、齋藤施設長は一人ひとりのケアを推進していくと、必然的にリフト導入に行き着くと話した。同時に最適なポジショニングを実現するためにモジュラー型車いすも導入された。ユニットケアで増えた労働負荷を業務支援ソフトの活用やリフトなどの最新機器の活用で相殺していく。人材が不足する中で、利用者の体重の増加や職員の高齢化という背景があるという。

 リフトは使い勝手のよいモリトー製が導入された。「基礎ケア委員会」を設けて、各ユニットから出席してリフト研修を行う一方、主任に向けに「リーダー会議」も設置された。

 「人が安全に持ち上げられる重さは、数kg程度にすぎないのです。人を幸せにするのが福祉職ですが、継続して介護に当たるにはリフトなどの活用が欠かせません」

 現在は、個浴用に入浴用リフト「つるべー」(モリトー)4台、スタンディングマシン(アイ・ソネックス)4台も新たに設置された。

 4月には、新卒4人の採用が行われる予定。まず特養で学び、介護福祉士の資格を取得して在宅などの他部門へ転換する。インカムやリフトなどの最新福祉機器の導入は、優れた人材の確保にもつながっていると齋藤施設長は話している。
職員全員がインカムをもって瞬時に状況を共有する

職員全員がインカムをもって瞬時に状況を共有する

(シルバー産業新聞2021年3月10日号)

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