インタビュー・座談会

ケアマネ協・七種副会長 「安ければ良い」と誤解招く

ケアマネ協・七種副会長 「安ければ良い」と誤解招く

 4月23日開催の財政制度等審議会財政制度分科会では、ケアマネジャーに対し、「複数の事業所のサービス内容と利用者負担について説明を義務化」することが提案された。これに対し、3日後の26日に、日本介護支援専門員協会は実態を踏まえた検討を求める意見を表明。同協会の七種秀樹副会長に財務省案の問題点を聞いた。

「複数紹介」不要のケースも

 まず誤解を与えないように断っておくと、当協会の主張は「複数事業所の紹介」自体を否定するものではない。現場のケアマネジャーは利用者の自己選択を支援するため、常に適切な情報提供に努めている。利用者・家族の要望やケアマネジャーが必要と判断すれば、当然、複数の事業所を紹介している。
 
 ただ、今回の財務省案は利用者の求めに依らず、複数事業所の紹介を義務化するとしている。当協会が行った緊急調査では、複数事業所の紹介が利用者から求められる割合は「ほとんど求められない」45.1%、「全く求められない」が3.9%という結果だった。18年度介護報酬改定で、複数事業所の紹介やケアプランに位置づけた理由を求めることができることを、利用者へ説明しなかった場合、運営基準減算が適用されるようになった。しかし、「複数の事業所の紹介ができます」と説明していても、およそ半数のケアマネジャーが「ほとんど」もしくは「全く」求められていないと回答している。
 
 実際の現場では、主治医の勧めだったり、友人が利用している事業所だったりと、利用者が初めから事業所を決めているケースもある。そこへ無理に他の事業所を紹介することはあまり現実的とはいえないのではないか。却って混乱やケアマネジャーに対する不信感を招くケースもある。
 
 さらに懸念するのは、不必要に費用の多寡だけが強調されれば、利用者に「安い事業所のほうが良いのか」という誤解を生んでしまうかもしれない。質の高い取り組みを加算で評価する介護保険と全く逆方向の考えだ。調査でも、利用者が事業所選択で最も重視しているのは「職員の雰囲気や態度、相性」30.8%、「サービスの専門性の高さ」22.4%、「取り組み内容(加算等も含む)」17.0%と続く一方、自己負担費用を最も重視するのは1割未満。もちろん費用も大事なのは間違いないが、実際には事業所の雰囲気や専門性、取り組みを重視して選ぶ利用者が多いのは明らか。6割超のケアマネジャーが複数事業所の費用比較を、「全く」もしくは「ほとんど」求められていない。
 
 こうした中で、仮に義務化されたとしても、財政審で想定されているような価格競争は起こらないと考える。もし検討を進めるのであれば、現場の実態や影響を踏まえ、慎重になされるべきだ。

自己負担化「指摘は現実と乖離」

 また「居宅介護支援費の利用者負担」導入については、すでに18年4月に意見表明した通り、大きな懸念を抱いている。居宅介護支援費の自己負担がないことで、「利用者からケアマネジャーの業務の質へのチェックが働きにくい構造になっている」という指摘だが、利用者にとって不利益となり兼ねない問題が残る現状では、自立支援へ繋がらないケースがどうしても存在する。
 
 今までも、ケアマネジャーは利用者と向き合い、自立した生活実現に向けたケアマネジメントを実践してきた。ケアマネジャーへのチェック機能はこうした場面でこそ適切に発揮され、負担を導入したからといってチェック機能が働くことはなく、指摘は現実とかけ離れている。この主張は変わらず、今後も訴え続けていく。

(シルバー産業新聞2019年6月10日号)

関連する記事

2024年度改定速報バナー
web展示会 こちらで好評開催中! シルバー産業新聞 電子版 シルバー産業新聞 お申込みはこちら

お知らせ

もっと見る

週間ランキング

おすすめ記事

人気のジャンル