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観察力と技術に限界なし 卓球一筋60年 

観察力と技術に限界なし 卓球一筋60年 

 12年目を迎える十日町市の「ゆうゆう卓球教室」は、9月時点で46人が在籍、平均年齢74歳のシニア卓球チームだ。教室を立ち上げた渡邊さんは卓球一筋60年。指導者でありながら、現在も選手として数多くの大会に出場する。

養われた観察眼

 渡邊一治郎さん(80歳)の声が飛ぶ。ラケットをボールの上からかぶせるように打つと、弧を描くようなスイングになる。それを教えている最中だ。
 新潟県の中でも特に雪深い十日町市。それでも地元の川西体育館には、正月を除く毎週2日、ピンポンの音と活気のある声が交錯する。
  教室を立ち上げた渡邊さんは卓球一筋60年。ねんりんピックも十数回の常連。優勝経験もある。「他の大会は年齢が5歳刻みのものも多いが、ねんりんは『80歳以上』の枠がない。
 70代の人たちと対戦するので、厳しい試合にはなるだろう」と話すが、卓球の腕は今でも上達しているとのこと。「年をとると運動量はどうしても落ちてくるが、技術は伸びている」。それは、相手の心理・クセに対する観察眼が養われてきたからだと説明する。
 渡邊さんがおもむろに取り出したカードに書かれた言葉は「想定外 予測」。「卓球は出し入れのスポーツ。いかに相手が予測しないことをやるかが、勝負の分かれ目となる」(渡邊さん)。
 
新潟県十日町市 渡邊一治郎さん (80)

新潟県十日町市 渡邊一治郎さん (80)

信頼集める指導

 「ゆうゆう卓球教室」は実戦形式の練習が主体。シングルでラリーを行い、10~15分経過すると笛が鳴り、片方が一つ隣のコートにずれる。渡邊さんは後方で一人ひとりのプレーを見ては、アドバイスをする。
 「指導で大切なのは、その人の個性を見極めること。ここに来る人の多くは卓球歴がなく、プレースタイルはほぼ本人の我流です。良い部分を生かしつつ、修正を行っていく」。
 指導歴は40年と経験十分。1975年にジュニア卓球クラブを設立し、現在も地元の小中学生に週3回、卓球の指導を行う。十日町市に卓球を根付かせた第一人者でもある。
 20年前に中国へ勉強に行ったことも指導力に磨きがかかった要因の一つ。「日本では全く手が出ないほど中国とレベルの差があった時代です。現地へ行って驚いたのは、ボールの当たる場所、当て方やこすり方の角度などが全て理論的に解説されていたことでした」と話す。
 そんな渡邊さんについて教室のメンバーからは「細かい部分に気づいてもらえて、上達が実感できる」「色々な大会を紹介してくれるので、続ける目標ができる。試合で負ければ、また上手くなりたいと思う」と絶賛。辞める人はまずいないそうだ。
 渡邊さんも「教室は最初、健康目的のつもりでしたが、始めてみると予想以上に技術の取得に貪欲です」と感心しきり。「何より、こうして暑い日も寒い日も、町のみんなが家の外に出てきてくれるのが嬉しいです」と語った。
体育館の半分を借り切る規模

体育館の半分を借り切る規模

「想定外 予測」と書かれた紙

「想定外 予測」と書かれた紙


(ねんりんピック新聞2019in和歌山)

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