話題
剣道 鹿角(かづの)市 菅原孝雄さん(73) (2017年秋田)
剣道の段位は初段から八段までで、昇段は一段ずつとなる。三段までは着装や礼法、基本的な姿勢や打ち方が主な審査基準となり、四段~五段は鍛錬度や応用力、そして六段からは「風格・品位」なども求められる。
菅原孝雄さん(73)
ねんりん・段位ともに「最高位」へ 心を磨く剣道を伝えたい
剣道の段位は初段から八段までで、昇段は一段ずつとなる。三段までは着装や礼法、基本的な姿勢や打ち方が主な審査基準となり、四段~五段は鍛錬度や応用力、そして六段からは「風格・品位」なども求められる。
ただし、昇段審査を受けるにはそれぞれ修業期間が必要となり、例えば二段を受けるには初段受有後1年以上、三段は二段昇段後2年以上…と続き、七段は六段昇段後6年以上。段位が上がるにつれ修業期間も長い。そして最高位の八段は、七段昇段後10年以上を要し、さらに「46歳以上」という年齢制限もある。つまり、初段から八段まで昇りつめるには、最短でも31年を要する。
ねんりんピック秋田に出場する地元3チームのうち、監督・選手として1チームを率いる菅原孝雄さんは七段をもつ凄腕。「20年前に昇段してからずいぶん経ちますが、最高位の八段は誰もが目指したいところ」と、地域の武道場で週1回の稽古、そして自宅では素振りを欠かさない。
迎撃の技とされ、刀を素早く抜く「居合」の心得も深い菅原さんは、素振りに真剣も使用。大鰐町の古物商で安く譲ってもらったという刀のツバ部分には、職人があしらった鋼が巻かれている。「竹刀の重さはだいたい500gですが、この刀は1kgと倍の重さ。トレーニングには最適です」と話す。
実践練習の頻度はそう高くないが、試合に入れば感覚が研ぎ澄まされる。初めて対戦する相手でも、立って構えた瞬間に互いの力量を察知する。経験値がなせる業だ。「試合の駆け引きや間合い、雰囲気が感じられるようになってきたのは高校生ぐらいでしょうか。剣道にようやく楽しさが出てきたのを覚えています」
生まれは青森県の弘前。城下町なのであちこちに道場があり、小学3年生から剣道を始めた菅原さんは朝6時に道場に通った。「まず一番下っ端の私たちは道場の掃除から。終わる頃に大人の人たちが稽古に現れていました。でも、直接の手ほどきはほとんどありません。『見て覚えよ』が基本でした」。
当時は除雪車もなく、冬は家に出ると胸の高さまで積もった雪をかき分けながら道場に向かったという。道場の床が冷たすぎて感覚を失い、足の裏の皮がめくれているのに気づかない、なんてことも。
中学1年で初段を取得。剣道部では先生に容赦なく打ちこまれては立ち向かい、また打ちこまれるという厳しい特訓を重ねた。「間合いに入ってくると、打たれるという恐怖しかなかった。この恐怖感を乗り越えることが、技術的・精神的な成長につながります」と菅原さん。練習はつらいことばかりだったと語るが「誰に言われたわけでもありませんが、続けた先には何かがある、と信じていたことが辞めなかった理由だと思います」と話す。
菅原さんの得意技は「面」を打つと見せかけ、防御しようと相手が腕を上げたところへ「小手」を打ちこむ戦法。ちょっとしたフェイントだ。「ところが、昇段審査ではこれが災いしました」と頭をかく。「剣道の精神として、一本一本を打ちきらない、というのがマイナス評価になるのです」と説明する。
自身の鍛練と並行し、小学生への指導も50年近く行ってきた菅原さん。この「剣道の精神」を伝えることに最も重きを置く。「勝つことの嬉しさや楽しさも大切です。しかし、それよりも剣道本来の人間形成となる部分を磨かせたい。打たれるということは気持ちにスキがあるということ。負けて学ぶ方が多い」。礼は単なる動作ではなく、感謝の心を込める。そうした所作を教え説くのだという。
今回、ねんりんピックで剣道が行われる由利本荘市の長谷部誠市長は、秋田県議会議員時代に県内の武道館の整備に尽力してきた。本人も七段の腕前で、菅原さんともよく稽古・試合をしてきた仲だという。「地元の秋田、しかも剣道にゆかりのあるところで試合ができるのも、一層気持ちが入ります」。
ただし、昇段審査を受けるにはそれぞれ修業期間が必要となり、例えば二段を受けるには初段受有後1年以上、三段は二段昇段後2年以上…と続き、七段は六段昇段後6年以上。段位が上がるにつれ修業期間も長い。そして最高位の八段は、七段昇段後10年以上を要し、さらに「46歳以上」という年齢制限もある。つまり、初段から八段まで昇りつめるには、最短でも31年を要する。
ねんりんピック秋田に出場する地元3チームのうち、監督・選手として1チームを率いる菅原孝雄さんは七段をもつ凄腕。「20年前に昇段してからずいぶん経ちますが、最高位の八段は誰もが目指したいところ」と、地域の武道場で週1回の稽古、そして自宅では素振りを欠かさない。
迎撃の技とされ、刀を素早く抜く「居合」の心得も深い菅原さんは、素振りに真剣も使用。大鰐町の古物商で安く譲ってもらったという刀のツバ部分には、職人があしらった鋼が巻かれている。「竹刀の重さはだいたい500gですが、この刀は1kgと倍の重さ。トレーニングには最適です」と話す。
実践練習の頻度はそう高くないが、試合に入れば感覚が研ぎ澄まされる。初めて対戦する相手でも、立って構えた瞬間に互いの力量を察知する。経験値がなせる業だ。「試合の駆け引きや間合い、雰囲気が感じられるようになってきたのは高校生ぐらいでしょうか。剣道にようやく楽しさが出てきたのを覚えています」
生まれは青森県の弘前。城下町なのであちこちに道場があり、小学3年生から剣道を始めた菅原さんは朝6時に道場に通った。「まず一番下っ端の私たちは道場の掃除から。終わる頃に大人の人たちが稽古に現れていました。でも、直接の手ほどきはほとんどありません。『見て覚えよ』が基本でした」。
当時は除雪車もなく、冬は家に出ると胸の高さまで積もった雪をかき分けながら道場に向かったという。道場の床が冷たすぎて感覚を失い、足の裏の皮がめくれているのに気づかない、なんてことも。
中学1年で初段を取得。剣道部では先生に容赦なく打ちこまれては立ち向かい、また打ちこまれるという厳しい特訓を重ねた。「間合いに入ってくると、打たれるという恐怖しかなかった。この恐怖感を乗り越えることが、技術的・精神的な成長につながります」と菅原さん。練習はつらいことばかりだったと語るが「誰に言われたわけでもありませんが、続けた先には何かがある、と信じていたことが辞めなかった理由だと思います」と話す。
菅原さんの得意技は「面」を打つと見せかけ、防御しようと相手が腕を上げたところへ「小手」を打ちこむ戦法。ちょっとしたフェイントだ。「ところが、昇段審査ではこれが災いしました」と頭をかく。「剣道の精神として、一本一本を打ちきらない、というのがマイナス評価になるのです」と説明する。
自身の鍛練と並行し、小学生への指導も50年近く行ってきた菅原さん。この「剣道の精神」を伝えることに最も重きを置く。「勝つことの嬉しさや楽しさも大切です。しかし、それよりも剣道本来の人間形成となる部分を磨かせたい。打たれるということは気持ちにスキがあるということ。負けて学ぶ方が多い」。礼は単なる動作ではなく、感謝の心を込める。そうした所作を教え説くのだという。
今回、ねんりんピックで剣道が行われる由利本荘市の長谷部誠市長は、秋田県議会議員時代に県内の武道館の整備に尽力してきた。本人も七段の腕前で、菅原さんともよく稽古・試合をしてきた仲だという。「地元の秋田、しかも剣道にゆかりのあるところで試合ができるのも、一層気持ちが入ります」。
(ねんりんピックしんぶん2017in秋田)