連載《プリズム》

うれしいノーベル賞受賞

うれしいノーベル賞受賞

 京都大学特別教授の本庶佑(ほんじょ・たすく)さんが、今年のノーベル医学・生理学賞を受賞する。ヒトの免疫機能を司る免疫T細胞の表面に、逆に免疫を抑制するタンパク質「PD―1」があることを発見した。(プリズム2018年10月)

 多くのがん細胞は、このPD-1を活性化させて、T細胞の免疫機能を抑制してしまう。本庶さんは、免疫抑制機能のあるPD-1にふたをして、がん細胞の働きかけができないようにして、T細胞の免疫機能を守った。この発見が、がん免疫治療薬「オプジ-ボ」の開発の基礎になった。高額な薬価が話題になった保険収載医薬品だが、皮膚がんをはじめ、肺がんや胃がんなどに効き、効能はさらに増える勢い。

 医学・生理学賞の受賞は、iPS細胞の山中伸弥さんや寄生虫研究の大村智さん、オートファジーの大隅良典さんらに続き、日本人5人目の快挙となった。もう一人の受賞者は免疫の遺伝子を解明した利根川進さんで、織物会社のエンジニアだった父の転勤で、小学生時代を富山市で過ごしている。実は地元では、富山から岐阜にかけて、国道41号線沿いを「ノーベル街道」と呼ぶ。利根川さんのほかに、たんぱく質を特定する手法を開発した田中耕一さん、「スーパーカミオカンデ」で宇宙からのニュートリノの存在を検出した小柴昌俊さん、同じくニュートリノの質量の存在を実証した梶田隆章さん、電気を通すプラスチックを開発した白川英樹さん、5人のノーベル賞受賞者を生んだ。富山県教育記念会館の伏黒昇館長によると、「立山連峰から富山湾に一気に流れる県内の河川は昔からの暴れ川で、かつては貧しい地域だった。しかし江戸時代、北陸3国でもっとも寺子屋が多く、庶民の教育に熱心で、富山は教育県の礎が築かれた。ノーベル賞受賞者を多く輩出した先進性もこうした地域性があるかも知れない」と話す(続きは、11月3日刊予定「ねんりんピック富山新聞」で)。

 本庶さんも、若い研究者に向けて、「とことん疑問を持ち続けることが大切」と訴えている。今回の受賞は、あらためて、今後の日本の技術力を発揮する方向性を示している。認知症の治療薬の進展も願ってやまない。

(シルバー産業新聞2018年10月10日号)

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