連載《プリズム》

医療給付のゆくえ

医療給付のゆくえ

 国民に給付抑制と負担増を求める社会保障制度改革が着実に進む。5月27日に医療保険制度改革関連法が可決成立した。(プリズム2015年6月)

 入院時の食事代は16~18年度に段階的に引き上げられて1食460円になる、大病院の受診は紹介状がないと5000円以上の負担を求められる(16年度)。国民保険では18年、財政運営の責任主体が市町村から都道府県に変わる。75歳以上の後期高齢者医療制度では、低所得者対象の保険料軽減措置が17年度から段階的に廃止される。

 来年1月には、「社会保障・税番号制度」(マイナンバー制度)も始まる。一人ひとりのサービス受給状況とともに資産状況も把握されて、給付のムダを見いだされ、経済力に応じた負担が求められるようになる。高齢化率26%に達する日本にあっては、充実した医療や介護制度をこれまで通りに実施することが難しくなりつつある。政府の役割は、財政収支状況を展望して、所得移転による格差是正を基本に据える一方で、限られた人材や財源を効率的に再分配することだ。痛みを伴う改革には、正しい情報の提供のもとに、議論と納得が欠かせない。

 給付のレベルが下がれば、貧困者はカバーできても、ボーダー層には軋轢がでる。いやが上にも、物価が上がり、年金は目減りするのに、頼みの社会保障制度も細ってしまえば、年金生活者はどうすればよいのか。医療や介護現場の従事者は、アベノミクスの恩恵に取り残される高齢者の現状と、今後の経済状況との間に、深い溝を感じざるを得ないだろう。

 これから1カ月もすると、市町村から、65歳以上の介護保険1号被保険者の手元に、利用者負担が1割か2割かを表記した負担割合証が届く。8月から、昨年度の収入額が280万円以上の高齢者は2割負担になる。同月に、施設などの居住費や食費を低所得者に補てんする補足給付に、単身者1000万円、夫婦2000万円の資産要件が設けられる。この改革で不当ないじめにあう人が出ないようにウォッチするのも、医療や介護の現場の役割だと思う。

(シルバー産業新聞2015年6月10日号)

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