連載《プリズム》

高齢化率46%の地域包括ケア

高齢化率46%の地域包括ケア

 全国で最小の人口57万人の鳥取県の中山間部に、人口5308人、高齢化率46.4%の日南町がある(14年3月末)。平成に入った25年前は、人口8000人を数えた。今、全国では団塊の世代の65歳突入により高齢者数が増える。これを尻目に、日南町の65歳以上人口は減っている。(プリズム2014年10月)

 75歳以上のくくりでも人口が減り、唯一、介護ニーズが高まる85歳以上だけが増える。団塊の世代がいない。若いときに、学業や就職で都会に出ていってしまった。

 ところが日南町では、子世代に代わって、広島県御調町(現尾道市)で行われてきた国保病院+福祉行政を拠点とする地域包括ケアシステムの仕組みが、地域の高齢者をしっかりと支えている。日南町地域包括支援センターは福祉保険課や福祉事務所などとともに健康福祉センター内にあり、国保日南病院が隣接する。これに施設や在宅サービスを行う日南福祉会や社協、診療所が加わり、日々、医療と介護、福祉サービスを提供する。

 この連携を支える仕組みが、96年にスタートした「在宅支援会議」。毎週月曜日の午後5時15分~6時に開かれる。日南病院管理者で健康福祉センター所長の高見徹医師をはじめ、医療介護の専門職30人が結集する。「どこどこの誰々さんのその後の経過はどうですか」など、個別ケースの状況が話され、対応が検討される。年に52回開催。

 もうひとつ、84年から続く月1回の「地域包括ケア会議」がある。高齢者支援のネットワークとして、まちづくり協議会や民生児童委員、企業なども加わり、医療・介護・保健・福祉のテーマと合わせて、地域の生活課題が取り上げられている

 「日南町の高齢化は日本の30年先を行く、と報道された。高齢社会に対応した地域医療の仕組みこそが、国のめざす地域包括ケアシステムだが、地域のどこでどういう人がどのように生活しているのかが分ることが第一。支えようとする意思と実践力があれば、どう支えていくかの形は、自ずできあがってくる。 地域づくりなくして高齢社会は成り立たないが、関わりを続けていけば、地域づくりはらせん状に発展してくる」と、高見医師、65歳。

 超高齢地域で地域包括ケアの実践を行う団塊の世代である。

(シルバー産業新聞2014年10月10日号)

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