半歩先の団塊シニアビジネス

「ポケモンGO」 が中高年に根強い人気の7つの理由/村田裕之(連載141)

「ポケモンGO」 が中高年に根強い人気の7つの理由/村田裕之(連載141)

 スマホゲームの「ポケモンGO」は2016年7月に登場した当初、爆発的ブームになったが、その後急速に衰退したかに見えた。ところが、このゲームは中高年層を中心に根強い人気が続いている。

 時々ゲームイベントが実施されるが、休日中だと「こんなにユーザーがいたのか」と驚くほど多くのプレイヤーを見かける(写真)。

 これまで多くのスマホゲームは登場後2カ月で衰退すると言われてきた。だから2年以上経過しても根強い人気を維持しているのは驚異的と言える。実はポケモンGOの主役は50代・60代なのだ。今回はこの年齢層に根強い人気の理由を整理する。

①操作が単純で中高年でも容易に遊べる

 ポケモンGOの基本動作は、出現したポケモンにボールをぶつけるという単純なもの。ポケモン同士のバトル(戦い)の際も、手持ちのポケモンをタップ(指で軽く叩く)する、スワイプ(指で横に移動)する、の2つの動作のみ。スマホなのでゲーム機のような複雑な動作はできない。ところが、これが逆に操作の単純さになり、中高年にも無理なく使えるようになっている。

②ルールがゲーム機でのポケモンに準拠のためよくできている

 ポケモンGOのもとのゲーム専用機の「ポケモン」は第7世代までポケモンの種類がある超長寿商品だ。実際にやるとわかるが、ゲームのルールが非常によくできている。

 18種類のポケモンが、それぞれに対して「こうかばつぐん」「こうかなし」などの相性があり、これを考慮してバトルする。この組み合わせの妙が中高年にとっても面白さの理由となっている。

③外出して歩く機会が増えるので健康によい

 ポケモンを捕まえるために「ボール」などの道具が必要だ。これは現実世界の街中にある「ポケストップ」と呼ばれるチェック第141回ポイントに行くとタダで入手できる。

 ポケモンGOでは、プレイヤーに街中での探索を促す仕組みになっている。このため、必然的に外出して歩く機会が増えるので健康によい。健康意識が強い50代・60代には、遊ぶことが健康にもよいのが継続利用の大きな理由だ。

④ゲームをきっかけに友達ができる

 一般には年齢が高くなるにつれて新しい友達をつくるのが難しくなっていく。ポケモンGOはそうした友達づくりのきっかけになる。

 例えば「レイドバトル」と呼ばれる複数プレイヤーでのバトルの仕組みがある。

 平日の昼間でもこういう場所には50代・60代の主婦や退職シニアが多く集まっている。そのなかには一緒に行動するグループがいくつか見られるが、これらは明らかにポケモンGOがきっかけで知り合った人たちだ。

⑤スマホでできるので専用端末が不要

 オリジナルの「ポケモン」はニンテンドーDSなどのゲーム専用機が必要だ。だが、ポケモンGOはスマホでできるので、ゲーム専用機は不要だ。これが新規ユーザー獲得の敷居をグッと下げている。特に50代・60代でポケモンのゲーム専用機を持っている人は極めて少数だ。

 一方、5年前なら60代のスマホユーザーはかなり少数だっただろう。ところが、今は60代でも団塊世代以下の世代なら多くの人がスマホを使う。

⑥基本無料、 道具購入は有料だが数千円程度

 ポケモンGOは基本、タダでできる。しかし、初心者が効率的にレベルアップするには、有料の道具を購入するのがよい。その場合でも支出金額はせいぜい数千円程度にとどまる。

 ポケモンGOの道具購入に何十万円もつぎ込んでいるという話は聞かない。50代・60代にとっては、数千円程度の出費に大きな負担感はない。

⑦親子・親孫との交流機会になる

 ポケモンGOが子供や孫との交流のきっかけになったという50代・60代の人は多い。「ジムバトル」や「レイドバトル」をする際に子供や孫と一緒に参加する人達がよく見られる。

 最近(18年12月13日から)「トレーナーバトル」と呼ばれるプレイヤーどうしでのバトルが解禁になった。一定レベルの資格があるとお互いに離れていてもバトルができる。このため、例えば新潟に住む親が、東京に住む子供とバトルを楽しむ、といったことも可能となった。

 さらに注目すべきは、ポケモンという元々子供主体の商品の認知度が、ポケモンGOを通じて50代・60代で高まっていることだ。これは拙著「成功するシニアビジネスの教科書」で「子供・若者向けの商品が、大人・シニア向けに売れないかを考える」と述べたことの実践例だ。

【村田アソシエイツ代表・東北大学特任教授 村田裕之】

(シルバー産業新聞2019年1月10日号)

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