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「標準項目以外確認しない」 実地指導指針 大幅見直し

「標準項目以外確認しない」 実地指導指針 大幅見直し

 厚生労働省は5月29日、全国の自治体に向けて、介護事業者に対する実地指導の標準化・効率化を目指す運用指針を発出した。指針では、実地指導に最低限必要な確認項目や文書を定め、原則としてそれ以上の確認や提出は行わないように求めている。実施率の向上や自治体間の指導内容の差を縮小することが狙いだ。

指定期間内の実地指導を重視

 これまで自治体が行う実地指導は、2006年に示された指導監督通知や10年に改定された「介護保険等実地指導マニュアル」に基づき、実施されてきた。しかし、発出から時間が経ち、自治体の指導内容にもさまざまな差が生じている。厚労省老健局総務課介護保険指導室長の里村浩氏は、「確認文書を直近1年分でよいとする自治体もあれば、5年に遡ってチェックする自治体もある」と自治体ごとのバラつきの大きさを指摘する。

 また、同省は指定の有効期間内である6年間に最低1回の実地指導を行うように求めているが、17年度の都道府県、指定都市、中核市の実施率は対象事業所全体の17.2%。これに6(年)を乗じると100%を超え、平均値ベースでなんとか指定有効期間中に対象事業所をまわれている計算だ。実施率が平均を下回る自治体にも、効率化により指定有効期間中の実地指導を呼び掛ける。里村室長は、「介護事業所が増加する中、実地指導の標準化・効率化を図り、より多くの事業所を指導することで、サービスの質確保、利用者保護に繋げる」と今回の運用指針の狙いを説明する。

居宅介護支援の確認項目は4分の1に

 運用指針では06年度に一度撤廃された「標準確認項目」を改めて設定した。ただ、項目数は当時と比べて大きく絞り込んでいる。2年間の調査事業を踏まえ、今回示された標準確認項目は居宅介護支援事業所で27項目。05年度以前のおよそ4分の1にまで削減した。通所介護や介護老人福祉施設など、他のサービスでも同様に項目が大幅に絞られた。「確認項目を削ることでのリスクもあるかもしれないが、6年の間に一度も指導を行えていない方が深刻な問題」と里村室長。「指定期間内に一度は指導する」に重きを置いた見直しであると強調する。

 例えば、通所介護の標準確認項目は45項目で、人員基準の「従業者の員数」では▽利用者に対し、職員数は適切であるか▽必要な専門職がそろっているか▽専門職は必要な資格を有しているか――の3項目を設定。それを確認する「標準確認文書」として勤務実績表・タイムカード、勤務体制一覧表、従業員の資格証が挙げられている。

 同じく運営基準の「事故発生時の対応」では、「事故が発生した場合の対応方法は定まっているか」「損害賠償すべき事故が発生した場合に、速やかに賠償を行うための対策を講じているか」などの5項目が標準確認項目で、事故対応マニュアルや事故発生防止のための委員会議事録などで確認を行う(表)。原則として、指針で示された項目以外の確認は行わず、文書提出も求めないことと明記した。

 ただし、実地指導中に不正が見込まれるなど、詳細な確認が必要な場合は、監査に切り替え、これら以外にも必要な文書を求めて確認することとしている。

 標準確認項目・文書が示されたのは、①訪問介護②通所介護③介護老人福祉施設④居宅介護支援⑤認知症対応型共同生活介護⑥介護老人保健施設⑦訪問看護――の7サービスで、そのほかのサービスについては、自治体ごとに検討し、7サービスの標準項目を適宜反映させる。

利用者記録の確認は3人分まで

 また確認する文書は原則、実地指導の前年度から直近の実績までの書類とし、さらに利用者記録などの確認は原則3人(居宅介護支援事業所はケアマネジャー1人あたり1~2人)分までとしている。 指針では▽同一所在地や近隣の事業所に対しては、できる限り同日か連続した日程で実施する▽老人福祉法などに基づく指導・監査の合同実施は、同日や連続した日程での実施の推進▽原則1カ月前までに通知を行い、当日の流れもあらかじめ示す▽提出文書は一部とし、自治体がすでに保有している文書の再提出は不要――なども記されている。

 さらに、そのほかの留意事項として「担当者の主観に基づく指導や前回の指導内容と大きく異なる指導を行わない」「高圧的な言動は控え、改善が必要な事項に対する指導やより良いケアなどを促す助言について、事業者との共通認識が得られるよう留意」「事業所の対応は必ずしも管理者に限定せず、実情に詳しい従業員や法人の労務・会計担当者などが同席することは問題ない」などを挙げた。

 これらの効率化を図ったうえで、なお十分な実施頻度を確保できない場合、過去の実地指導で問題がなかった事業所については、例外的に集団指導のみの対応の検討も求めている。同指針を先行して運用し、実施状況を踏まえながら、来年以降は運営指導マニュアルの見直しも行う予定だ。
(シルバー産業新聞2019年7月10日号)

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