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介護ロボ活用の効果 夜勤帯の負担と人員削減

介護ロボ活用の効果 夜勤帯の負担と人員削減

 富田浜特別養護老人ホーム浜風(三重県四日市市、山口亮施設長)では、介護ロボットやICTを活用した業務改善や夜勤職員の業務見直し・最適化により、無理のない夜勤職員削減に成功した。同施設は80床のユニット型個室で、平均要介護度は3.8。自立支援を希望する入居者もいることから個別対応を実践してきた。また、看取りケアなど重度者対応も行っており、職員の業務負担軽減に取り組む必要があった。「当初から介護ロボットやICT導入による解決が前提だったわけではない」と山口施設長。

周辺施設「成功事例」見学から導入まで

 親交の深い介護施設の理事長の紹介で興味を持ったのがきっかけ。その施設は、見守りシステムの導入・活用で業務全般の見直しに成功したという。早速、見学させてもらい「良さそうだ」と実感を得て導入を検討し始めた。

 いろいろな製品を比較検討し、2021年3月より、見学施設で導入されていたコニカミノルタQOLソリューションズ(東京都中央区、三浦雅範社長)の見守りシステム「HitomeQケアサポート」の全室導入を決めた。

活用のカギ握る「導入前研修」

 機器導入の意向を同社担当者に伝えたところ、始まったのは研修だった。

 介護系資格を取得した同社の専門スタッフにより▽施設に合わせた活用方法を検討する「リーダー研修」▽機器の使い方を学ぶ「スタッフ研修」――など導入前研修が2カ月かけて実施され、全職員が学んだ。

 介護現場の文化・風土として無かった介護ロボット・ICT機器であるため、施設業務の中に機器活用を定着させるには、同じ視点で話し、共感できる介護系資格者との対話が欠かせないという同社の考えに基づく。

 山口氏は「全職員が研修を受けられるよう何度も開催していただけたことで、職員が導入理由や効果を理解し、導入を進めることができた。また、スマートフォンの使い方も学ぶことができ、運用時の不安解消にも繋がった」と話す。

施設主体「介護業務見直しプロジェクト」も

 研修と並行して、同施設では事前に介護業務見直しのためのプロジェクトチームを立ち上げた。

 構成メンバーは、髙木友貴係長を始め、若手からベテランまで各ユニットから送り出される8人の職員、機能訓練指導員など横断的な顔ぶれでコニカミノルタQOLソリューションズの専門スタッフがチームをサポートした。 チームメンバーが集まり機器の使い方や、導入の意図共有、データ分析などを行い、各ユニットからの参加メンバーが職員に説明する。

 髙木係長は「夜勤職員が介護業務に集中できるよう日中に介護助手を採用し、業務効率化にも繋げた」と説明する。
山口施設長(左)、髙木係長

山口施設長(左)、髙木係長

「無理なく」夜勤職員5人から4人に

 これまで同施設では夜勤職員として5人を配置していたが、HitomeQケアサポート導入後は、システムの導入効果と、夜勤業務を絞り、日中の職員を充実させ業務を割り当てることを一体的に実施することで、4人配置に削減することができた。

 同システムの特長は、居室の天井にカメラを設置することで、起床や転倒などの危険な動作を認識した際にスマートフォンに映像とともに通知、転倒は前後1分間の動画をPCから閲覧できる点。また、その場でケア記録や申し送り、連絡事項の入力もでき、リアルタイムで情報共有できる。

 事前にライブ映像で状況を確認することで、準備をしてから駆けつけるなど、職員の精神的負担も軽減された。

入居者の為の安眠確保

 同施設では同システムを導入したことで夜間の訪室回数が減り、利用者の睡眠時間が確保されるようになったという。

 髙木氏は「これまでは定期的に確認に行っていたが、その物音や気配で利用者を起こしてしまっていた。必要なタイミングで訪室することで、日中活動に欠かせない十分な睡眠時間が確保でき、利用者・職員双方にとって快適なケアの実現につながった」と導入の効果を話す。

 ユニット型個室の同施設では、入所者の意向を聞きながら排泄自立や、褥瘡対策など自立支援に向けた取り組みを強化している。日中の活動量を増やすには、睡眠時間の確保が欠かせないことから、夜勤帯のケアの向上は相乗で効果を高める効果も期待できるようになる。

(シルバー産業新聞2022年3月10日号)

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