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静岡県医師会 「シズケア*かけはし」ICTで地域包括ケアを推進

静岡県医師会 「シズケア*かけはし」ICTで地域包括ケアを推進

 静岡県医師会(紀平幸一会長)は「静岡県地域包括ケア情報システム シズケア*かけはし」を運用している。2012年度のリリース以来、高いセキュリティが確保された医療・介護関係者間の情報共有システムをはじめ、さまざまな機能を拡充してきた。ICTの力で地域包括ケアを推進する。

県内登録機関は1200超

 2月現在、県内で1208の医療機関や介護施設・事業所が登録済。ユーザーはおよそ5300人にのぼる。利用料金は1機関あたり年間1万2000円(税込、来年度から1万3200円に改定)。同医師会の医療介護連携課の望月隆弘課長は、「小さな圏域で、情報共有ツールを定めて使うケースはあるが、県全域で使われているシステムは全国的にみても珍しいのではないか」と説明する。

 同システムは①情報共有システム②施設サービス検索・折衝③セキュアメール④掲示板⑤ビデオ会議システム⑥イベント開催業務支援機能⑦公的文書作成支援機能――など、連携や業務支援のツールが数多く搭載されている。

高いセキュリティと利便性で情報共有

 ①情報共有システムは、患者・利用者ごとに担当事業所・担当者でチームを作成し、情報を共有できる。チームの編成や修正はいつでも可能。情報提供を受けたメンバーは、文章で回答する以外にも、「確認しました」のボタンを押すだけですぐに伝えられるなど使いやすい工夫がされている。

 電子証明書とパスワードでの認証や暗号化通信など、高いセキュリティも同システムの特長。さらに、褥そうの状態など画像や動画を共有したい場合、専用アプリを使えば、撮影したスマホやタブレットのアルバムには保存されない仕組みになっている。アプリに保存された画像や動画は、共有後に自動で削除され、情報の流出を防ぐ。

 新着情報や重要な内容は、通知設定をしておくことでFAXやメールで受け取り、見逃しも防止できる。手書きの診療情報提供書や指示書、報告書などの文書も、システム宛てにFAX送信すると、PDFでチームに共有することも可能。誤送信防止や通信料削減などにもつながる。

 今年度からは、情報共有する対象者の範囲を医療・介護サービスは受けていないが見守りを必要とする人にまで広げるとともに、緊急搬送時に救急隊員や搬送先病院が、患者の既往歴、服薬情報などを確認できる機能も追加された。富士宮市ではおよそ1600人の地域住民が登録。そのうちの44人が昨年4月から11月に搬送され、登録情報が活用されるなどすでに実績をあげている。

 ②施設サービス検索・折衝は転院、転所時などの、地域の病院や施設などの空き状況を確認できる機能。電話やFAXでの照会など、受け入れ先を探す時間や手間を短縮し、地域資源の有効活用にもつながる。③セキュアメールは、メールアドレス不要で使えるメール機能。施設か個人を選択して送信ができる。

実際の災害時にも活用

 熱海市は、シズケア*かけはしの活用を積極的に呼び掛けている自治体のひとつだ。熱海市では、登録機関が支払うシステム利用料を市が全額負担している。特に、医療介護連携の要になる居宅介護支援事業所は市内19のうち16事業所が登録している。登録機関が多いほど、情報共有が円滑になり、システム導入のメリットも高まる。

 19年10月、熱海市は台風19号で大規模断水の被害を受けた。シズケア*かけはしの掲示板機能を使い、市は断水や給水車の情報を発信。掲示板に書き込んだ内容はFAXでも自動送信され、対応に追われて掲示板を確認する余裕がないケアマネジャーらにも最新の情報を伝達できた。その結果、情報が届きにくい要介護者のサポートや安否確認に的確にあたることにつながったという。
(シルバー産業新聞2023年3月10日号)

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