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ケアプランのデータ連携 実績票修正の省力化などで期待

ケアプランのデータ連携 実績票修正の省力化などで期待

 厚生労働省は、来年度予算案に「ケアプランデータ連携システムの構築」を新たな事業として位置づけている。居宅介護支援事業所と介護サービス事業所間で交わされるケアプランのデータ連携システムを構築し、業務効率化を図るのが狙いだ。

小樽市で実証試験

 ケアプランのデータ連携では国に先行する形で、日本介護支援専門員協会、NTTデータ、NTTデータ経営研究所の三者が連携し、これまで取り組んできた。昨年10月からは北海道小樽市での実証試験に着手している。実証ではケアマネジャーがクラウドシステム「ケアプラン連携ICT基盤」へサービス提供票をアップロード。システムが自動で送信先の事業所を判別し、振り分ける。サービス事業者は同システムからダウンロードしてデータを受け取る。実績報告時は送受信が入れ替わり、サービス事業者がアップロードする。現場ではまだFAXや手渡しが多いが、クラウドを活用してペーパーレスで送受信ができる。

介護ソフトが違ってもデータ連携が可能に

 また、特に省力化やミス防止に繋がると期待を集めるのがデータ連携。提供票や実績の受け取った内容を介護業務ソフトに取り込む機能だ。

 昨年3月、厚労省は「居宅介護支援事業所と訪問介護などのサービス提供事業所間における情報連携の標準仕様について」を一部改正。標準仕様に沿って、各ベンダーが介護ソフトの改修を行うことで、事業者間で異なる介護ソフトを利用している場合もデータの取り込みなどができる環境を目指している。「ケアプラン連携ICT基盤」も、この標準仕様を前提に構築されたものだ。

 日本介護支援専門員協会の垣内達也常任理事は「元々の利用予定と実績とを一つひとつ確認する業務が現場のケアマネジャーの大きな負担になっている」と指摘する。実証試験に参加する小樽市内の「ケアプランセンターきりん」の管理者・上林由加利さんも、「私の担当件数は20人ほどだが、実績と突き合わせて修正するのに毎月2時間近くかかっている。誤って入力してしまうと事業者側にも迷惑をかけてしまうので細心の注意を払わなくてはいけない」と話す。

 全体で240人の利用者を抱える同事業所には、月初めにはサービス事業所から次々と実績が送られてくる。それを担当ケアマネごと、利用者ごとに分けるだけでも一苦労だという。

 ケアプランセンターきりんでは取り込み機能はまだ使えていないが、「法人内の事業所など、同じ介護ソフトを使用しているとボタン一つで取り込みができる。異なる介護ソフトでも、それと同じようにできれば非常に助かる」と期待は大きい。市内の事業所に実証への参画を呼び掛けるなどの協力を行った小樽市介護保険課の担当者も、「実績の入力や印刷、FAX送信などで、ケアマネの本来業務が圧迫されているケースも少なくないと思う。ICT化による負担軽減は、ケアマネジメントの質や就労環境の向上に繋がると期待している」という。

会議体が取り組み推進

 今回の実証を進めるにあたり、全体の舵取り役として小樽市ケアプラン連携システム電子化検討委員会という会議体を立ち上げた。ケアマネ、訪問介護、通所介護、訪問看護、福祉用具など市内の職能・事業者団体の代表者のほか、行政からは小樽市が委員として参画する。各団体が参加することで、それぞれの視点から取り組み方を検討でき、また会員にも呼びかけしやすい。

 同委員会代表の川尻輝記氏(小樽市介護支援専門員連絡協議会会長)は、「データ連携の効果を最大限高めるには、できる限り多くの事業所に加わってもらうことが欠かせない」と話す。「参加する事業所、しない事業所がいると、送受信でも新しい仕組みでの方法と従来通りの方法との両方をやらなくてはいけない。かえって負担が増えるおそれもある」と指摘する。「来年度以降は、国の事業としてデータ連携の仕組みが検討されていくのだろうが、旗振り役となって活用のメリットを事業所に呼び掛けてほしい。我々もこの実証でしっかりと具体的な課題を見極め、共有していきたい」。小樽市での実証は当初の予定を延長し、3月上旬まで実施される。
(シルバー産業新聞2021年2月10日号)

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