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特定福祉用具売れ筋ランキング① ポータブルトイレ

特定福祉用具売れ筋ランキング① ポータブルトイレ

 特定福祉用具の主要な品目について、販売卸大手3社(ウェルファン、ケアマックスコーポレーション、豊通オールライフ)の協力を基に、売れ筋商品を集計した。主要メーカー各社とも新製品が出揃い、注目の高いランキングとなった。在宅復帰で重視される「排泄の自立」を助ける用具としての評価も高まってきた。ポータブルトイレの売れ筋と動向を見る。

各社新製品もランキング入り根強いスタンダードモデル

 販売卸大手3社のポータブルトイレの売れ筋で上位を占めたのは、昨年に引き続きアロン化成、パナソニックエイジフリーライフテック(以下「パナソニック」)、リッチェルの3社が中心となったが、各社とも、アロン化成「ジャスピタ」シリーズ、パナソニック「座楽ラフィーネ」シリーズ、リッチェル「きらく」シリーズなどの新製品が出そろい、いずれもランキング入りするなど注目の高い結果となった。

 一方で、スタンダードモデルであるアロン化成「FX―CPちびくまくん」シリーズが、全販売卸の売れ筋でトップを独占するなど、製品提案に影響力の高いケアマネジャーへの知名度による販売面での強さを見せつけた。

排泄の自立、介助者の負担軽減がキーワード

 ポータブルトイレメーカー各社は、ここ数年で新製品開発に向かった。▽移乗のしやすさ▽介助者の負担軽減▽高さ調整のしやすさ・使いやすさ▽ポータブルトイレに腰掛けて自立的な排泄の実現――など、介助者の負担軽減や、自立排泄の実現などをキーワードにしたものが多かった。

 背景には、特定福祉用具販売にも販売計画作成が義務付けられたことや、今年度以降はケアマネジャーにも、ケアプランに位置づけた各事業者のサービス計画の入手が求められたことなどが考えられる。福祉用具専門相談員には、これまで以上に専門性が試されることになる。

 ほかにも、国では地域包括ケアシステムの構築を掲げ、医療機関に関しても在宅復帰率を求めるようになった。在宅で、日常行為の中でのリハビリテーション的アプローチが期待される傾向が強くなることを見越したメーカーから、現場への提案ともいえる。

在宅復帰と排泄の関係

 排泄の自立と在宅復帰の関係性は強い。在宅復帰が今後のキーワードとなる中で、病院・介護施設の退院退所時の直前には、在宅をリハビリ職などが訪問し、住宅環境や家族構成等から日常生活行為が継続できるかを検討する。ポイントは「食事」「入浴」「排泄」の自立であり、中でも食事と排泄は生きていくために欠かせない生理行為であるため、この継続ができるかが重要となる。

 できる限り自立排泄をすることを目標に、まずはトイレまで移動しての排泄を検討する。そのために住宅改修やトイレまでの動線へのレンタル手すりを据え置くなどの方法がある。ただし、トイレ移動ができる人であっても、夜間のトイレ移動は転倒転落の危険があるため、状況に応じて、夜間の使用を念頭にしたポータブルトイレ導入も多く見られる。

 次に、それが難しい人には、ベッドサイドなどにポータブルトイレを置き、移乗して排泄してもらうことを検討する。きめ細やかな高さ調整機能や、ひじ跳ね上げ機能はそうした移乗のしやすさの配慮と言える。

 ポータブルトイレの使用者の要介護別分布(厚生労働省作成。08年7月時点)によれば、「要介護2」25.2%が最も多く、一方で「要介護4」12.0%、「要介護5」4.2%となるなど、ポータブルトイレは軽度・中度者向けの用具と言える。使用に当たっては座位の保持ができることが前提となるため、重度者の使用は少なくなるのがその理由。

 言い換えれば、ポータブルトイレは自立した生活の維持や、ADL向上に向けた非常に前向きな用具ともいえ、その活用が重要ともいえる。

介護ロボットとしての普及も加速

 ポータブルトイレに期待される機能は今後も高まっていく。一つは使用後のバケツ洗浄等の後処理の手間、もう一つは排泄物の臭いなどへの解決策。今後は介護する人も高齢者という老老介護が多くなる。在宅復帰が国の政策として推進されていく中にあっては、喫緊の課題とも言える。

 国を挙げて進められている生活支援ロボットの産業化に関しても、介護分野では排泄支援が重点分野のひとつとなっているのもこの現れ。15年改正で「水洗式ポータブルトイレ」が介護保険特定福祉用具販売の対象とされるなど、これまでの概念を超えた機器の普及はすでに始まっている。

(シルバー産業新聞2015年6月10日号)

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