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インターライ方式 介護版QIでサービスの質向上を 

 クラウドサービスによるデータ収集・分析・蓄積 ケアプラン作成のためのアセスメントツール「インターライ方式(旧MDS方式)」が、全面刷新された。共通のアセスメント項目と、サービスごとのアセスメント項目を組み合わせることで、根拠に基づき、CAPと呼ばれるケア指針を導きだす。利用者の在宅復帰が重視される中で、提供を受ける介護サービスが変わっても、切れ目なく利用者の自立支援やIADL向上に向けた取り組みが期待できる。また、クラウドサービスによりシステム提供を行う方式を採用しており、国の進める介護サービスの質の評価で重要な、利用者データの収集・蓄積、分析が行いやすい仕組みをもつ。インターライ日本(東京都新宿区、池上直己理事長)の石橋智昭理事(ダイヤ高齢社会研究財団研究部長)に聞いた。

クラウドサービスによるデータ収集・分析・蓄積

――インターライ方式の特長は。

 石橋 日本において、ケアプラン作成に使用するアセスメントツールの統一化は行われていません。ただ、世界に目を向ければ、インターライ方式がアメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国、台湾などで国や州単位で統一的に利用されています。これは、医療・介護連携など多職種がかかわって進めていく中で、どのような立場の専門職も、利用者(患者)の自立やIADLの向上などの目標に向かって、「共通言語」を用いて進めることに向いているからです。3年前にインターライ本部において全面刷新されましたが、日本においても地域包括ケアシステムの推進に合うように見直しました。「コア項目」(78項目)と「固有項目」(居宅版、施設版、高齢者住宅版)をアセスメントし、結果に基づいてCAPと呼ばれるケア指針が導き出されるもので(表)、CAPに基づいて、ケアプランが作成される流れです。コア項目には「機能状態」「認知機能」「アクティビティ」「心理社会的状況」などがあり、固有項目では、居宅版に「同居形態」「日中、一人でいる時間」など、施設版では「活動への平均参加時間」「退所の可能性」などがあります。

 ――インターライ方式は医療向けといったイメージもありますが。

 石橋 それは違います。インターライ本部のリーダーはソーシャルワーカーですし、アセスメントの信頼性検証は介護職でも行われ、多職種が連携して利用できる方式です。実際、日本でも多くのサービスを展開する事業体などで、全スタッフの意志統一に活用されています。世界的に見れば、最も多く利用されている方式だといえます。

 ――介護サービスの質の向上に向けては。

 石橋 医療の分野では、一部で始まっているQI(クオリティー・インディケーター)を介護分野でも導入することが考えられます。簡単に言うと、「ADLの悪化」や「転倒」などケアの方法によって差がつきやすい状態の利用者の割合を、ほかの事業者と比較するものです。ただし、利用者の年齢層の違いや、初めからリスクのある利用者が多い場合も考えられますから「リスク調整」を行って、適切なQI値を算定しています。これにより、全体の中での自らの事業所の質が「見える化」され、どの領域で改善が必要なのかを知ることができ、根拠に基づく対策が図られるようになります(図)。また、個人別の分析も見ることができますから、たとえば「転倒」した利用者のうち、その発生確率が低かった利用者のケアプランを見直して、具体的なケアの質の向上に取り組むといった行動に移れます。
――アウトカム評価のための取り組みは。

 石橋 アウトカム評価の実現には、統一化された指標を用いて、経時的(2時点以上)な計測を行うことが欠かせません。こうしたデータを蓄積する仕組みも必要です。そこで我々はクラウドシステムに注目しました。サーバーにインターネット接続して利用することで、データベースの構築が飛躍的に進みます。これにより、日本の介護の質を「見える化」することができるようになりますし、世界各国で導入されているインターライ方式なら、世界との比較もできるようになります。現在2年目で、大手を含むシステムベンダー10数社を通じて提供されるようになっています。研究事業として居宅5,000人分のデータベース化ができましたが、今後は施設利用者を含む大規模なデータベース化を進めたいと思っています。

 ――日本においては医療・介護費用の適正化が求められています。

 石橋 費用の適正化でいえば、アメリカのニューヨーク州がインターライ方式に統一して、費用の適正化に取り組んでいます。それは費用抑制ということではなく、統一的な指標でエビデンスの蓄積が進み、ベストプラクティス(最善慣行)が集まることで、結果として費用の適正化が図られたということです。

「インターライ方式」・・・アセスメント結果により導き出されるCAPと呼ばれるケア指針を参考に、ケアプラン作成を行うもの。このほど全面刷新された。特長は、利用者の居住環境が居宅なのか、施設なのかにかかわらず聞き取る共通項目(コア項目)に、各サービスに必要な項目(固有項目)を追加して実施すること。注目が高まる在宅復帰などでも、サービスの種類による切れ目のないアセスメントが可能となる。1992年設立の非営利団体(本部・アメリカ)が運営。アメリカを中心に世界各国で研究がなされており、日本では、インターライ日本が推進する。PCなどによる使用では、ASPIC(=ASP・SaaS・クラウドコンソーシアム、東京都品川区、河合輝欣会長)が提供するクラウドサービスを、主にシステムベンダーを経由して使用する。介護サービスの質の評価においても、アウトカム評価に求められるデータ収集・蓄積や分析に向くシステムとして注目されている。
(シルバー産業新聞2014年10月10日号)

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