ニュース

21年度報酬改定 関係団体ヒアリング(3)

21年度報酬改定 関係団体ヒアリング(3)

 社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=田中滋・埼玉県立大学理事長)の議論が一巡した。次期介護報酬改定に向けて、地域包括ケアシステムの推進や制度の安定性・持続可能性の確保といった横断的テーマに加え、各サービスの現状と課題、新型コロナウイルスへの対応などについて議論し、これまでに幅広い意見や要望が上げられている。8月3日と19日に行われた関係団体へのヒアリングから、次期報酬改定に「意見あり」とした28団体の要望や主張のポイントを紹介する。

日本福祉用具・生活支援用具協会「介護ロボット・センサー等の更なる活用」

 前回改定で、特別養護老人ホームの夜勤職員配置加算で、介護ロボット・センサー活用の評価が行われたが、次期改定で「評価の拡大」と「全施設を対象」を求めているほか、「導入施設への運用支援」を加えた新たな評価の検討を要望している。
 また、在宅に「ロボット・センサー・新たな福祉用具」の導入を促進させるために、「介護保険福祉用具・住宅改修評価検討委員会」の毎年開催を求めた。

全国有料老人ホーム協会「経営実態調査は介護保険収入のみの収支差で」

 報酬改定の基礎資料となる「介護事業経営実態調査」について、収支は介護報酬に限定した集計へ見直すように求めている。現行の仕組みでは、家賃や食費、管理費なども含めた収支を報告しているが、有老ホームの収益は5割超を保険外収入が占める。その収支差率でもって報酬改定の審議がされることに異議を唱えた。
 またICTやロボットを導入した特定施設に対し、サービスの質を損なわない取り組みに対して、報酬上の評価や基準緩和を要望している。

全国介護付きホーム協会「基本報酬引き上げを最優先事項に」

 人材確保や今後も続く感染予防などに取り組むため、基本報酬の引き上げを最優先の要望事項に掲げる。
 また新たに看取りに積極的に取り組む介護付きホームの評価を主張。現行の「看取り介護加算」では、入居者の急変時など看取り計画の同意を家族から得るのが難しいために算定ができないケースもあると訴える。看取り介護加算に加え、看取りの取り組みに対する評価の新設を要望する。そのほか、准看護師の配置でも夜間看護体制加算の算定を認めることなどを求めた。

高齢者住宅協会「同一建物減算の廃止・軽減を」

 同一建物減算の廃止や軽減を要望している。高齢者向けの集合住宅が浸透する中、一律の減算適用は適切な事業者の運営を阻害すると強調する。
 「併設事業所を利用するサ高住入居者は一般在宅利用者より、サービス利用量が多い」とする財務省の主張に対し、「在宅利用者は半数超が家族同居。介護力がない独居の在宅利用者と比較するべき」と指摘。独居利用者に限れば、サ高住入居者の平均利用単位と大きな差はないとする調査データを提示した。

24時間在宅ケア研究会「人材不足解消に逆行するルールの撤廃」

 人材不足解消に逆行するローカルルールや、事務負担となる指導の撤廃などを求めた。
 自治体によっては「訪問介護事業所への一部委託を認めない」などの独自ルールを設けるなど人材の有効活用に逆行しているケースがあった。
 また、夜間対応型訪問介護について、定期巡回・随時対応サービスの基準に合わせることも提言。
 限られた介護人材を有効に活用しながら、効率的なサービス実施を可能とする観点からの方策を求めている。

日本病院会/全日本病院協会/日本医療法人協会/日本精神科病院協会「リハ連携で病院・通所リハにも加算を」

 前回の改定結果からの課題として、通所事業所で「生活機能向上連携加算」の算定が進まない理由として、調査研究事業の報告では「外部リハ事業所との連携が難しい」「コスト・手間に比べて単位数が釣り合わない」などが挙げられている。「機能訓練指導員のケアの質が上がった」と効果も挙げられているので、病院や通所リハ事業所など「介入する事業所」への加算も必要ではないか。
 医療と介護の連携に欠かせない情報共有項目について厚労省から「入退院時の連携に関する参考書式」が示されているが、不足している情報があるとの指摘がある。医療・介護間で必要な情報を明確にし、周知していく必要がある。
 退院決定から退院までの期間が短く、ケアマネジャーは、その短い日数で退院後の在宅生活を整えるための「退院時カンファレンスへの参加」「アセスメントの実施」「担当者会議の実施」「ケアプランの作成」「介護サービス事業所の調整」「在宅へ帰るための福祉用具の選定、搬入」をすべて行うのは、現実的に困難である。その理由は病院・ケアマネジャー双方の理由で起こるため、この点を議論する必要がある。
 「ターミナルマネジメント加算」の算定が少ないが、「死亡を含む死亡日前14日以内に2日以上在宅を訪問する」「把握した利用者の心身の状況等の情報を記録し、主治の医師及び居宅介護サービス事業者等への提供が難しい」との調査結果がある。看取りに欠かせない内容のため、ケアマネジャーの法定研修等でさらなる周知が必要。ケアマネジメントプロセスの簡素化には主治医の助言が必須のため、医師への周知も必要。
 小規模多機能や看多機が、居宅介護支援に認められる「入院時情報連携加算」の算定ができないことについて、同様に算定できるように見直す必要がある。
 人員の緩和について、看多機に看護師または保健師が「通い1人」「訪問1人」と各サービスに置かなければならないが、通い、訪問にかかわらず「1日2人以上」とすることで、柔軟な対応が可能となるので、要件を変更してほしい。
 定期巡回・随時対応型訪問介護看護の人員要件についても、ICT活用により、利用者等の情報共有伝達が詳細にできると考えられるため、オペレーターの資格要件の医師、保健師、看護師、准看護師を緩和し、資格要件なしとしてはどうか。

全国個室ユニット型施設推進協議会「個室ユニット推進には介護報酬増必要」

 介護報酬や、基準費用額の引き上げを求めた。
 2001年に個室・ユニットケアを行う特養の整備を進めると通達され、03年の報酬改定で制度化された。通常、新規サービスが創設された場合、サービス拡大の観点から介護報酬を高めに設定されるが、05年10月の前倒し改定で大幅に介護報酬が減額された。
 大規模修繕にかかる費用すらないと指摘し、基準費用額の引き上げも必要だとしている。
 ユニット型個室の推進に繋がるような介護報酬改定を強く求めている。

(シルバー産業新聞2020年9月10日号)

関連する記事

2024年度改定速報バナー
web展示会 こちらで好評開催中! シルバー産業新聞 電子版 シルバー産業新聞 お申込みはこちら

お知らせ

もっと見る

週間ランキング

おすすめ記事

人気のジャンル