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ワンダーシェフ やわらか食を簡単調理 圧力鍋の技術で「口から食べる」を支える

ワンダーシェフ やわらか食を簡単調理 圧力鍋の技術で「口から食べる」を支える

 調理器具メーカーのワンダーシェフ(大阪府豊中市、伊藤彰浩社長)はワンタッチでやわらか食が調理できる家庭用電気圧力鍋「やわらかさん」を販売している。作りたての温かい食事を家族で楽しめ、調理負担も軽減する。在宅介護の実態をヒアリングし、誰でもシンプルに扱えるよう、操作性も徹底追究。伊藤社長に開発の経緯、製品の特長を聞いた。

 当社は26年間、家庭用・業務用の圧力鍋を専門的に開発してきた。一般的に、圧力鍋は短時間で食材をやわらかく食べやすくし、かつ形を崩さないため食欲も喚起できる。高齢化・介護ニーズが伸びる中、かたいものが食べにくくなった高齢者にこそ届けていくべきだと考えた。

 しかし、介護に関しては全くの素人だった当社。日本栄養士会の賛助会員に入会し、管理栄養士の方々から在宅介護の実態を学んだ。退院後の自宅での食事、家族の調理負担など困りごとも多い一方で、口から食べ続けること、しっかり食事がとれると本人が元気になる、といった話も聞け、当社が果たせる役割があると感じた。

 転換点となったのが、2014年の電気圧力鍋の発売。これまでの圧力鍋は直火だったため、火加減など調整が手間だったが、電気圧力鍋は材料を入れて調理(メニュー)を選択し、ボタンを押すだけ。忙しい人でも鍋の前で足止めされない。一気に市場が拡大した。

 火の扱いが心配な高齢者でも受入れられると期待したが、しかし、機能が充実すればするほどボタンが複雑化し、「分かりにくい」との声が多くあがった。

色・音で分かりやすく

 19年に誕生した「やわらかさん」は、電気圧力鍋の機能を必要最小限に削ぎ落した製品。設計にあたっては、日本在宅栄養管理学会の前田佳予子理事長に多くの助言をいただいた。

 操作ボタンはスタート・取消・保温の3つと、調理時間のダイヤルのみ。3つのボタンは視力が弱い人でも識別しやすいオレンジ・緑・青とした。蓋の開閉時にはそれぞれ異なる音が鳴り、蓋がきちんと閉まっていないと操作ができないしくみ。調理後は30分おきにアラームで知らせる。

 また、一般的な電気圧力鍋は調理が終われば保温状態となるが、当製品はその機能を外した(「保温」ボタンで手動設定は可能)。おかゆなどは保温が長くなると食形態が変わってしまうためだ。

 メニュー別の時間設定については、前田理事長を中心にレシピブック「おうちの味で介護食」を監修いただいた。食形態は軽度~中度者が対象。UDFだと「舌でつぶせる」「歯ぐきでつぶせる」「容易にかめる」区分が該当する。

 老々介護や男性介助者などの調理能力も考慮し、極力負担がかからないようレシピ全体も工夫。材料の作り置きもすすめている。作り置きしておけば、ヘルパーは来てまず調理をセットし、完成するまで他の支援を行うなど効率も上がるだろう。

 販売ルートはこれまで自社サイトでの直販がメインだったが、介護用品卸での取扱いも始まった。在宅では既に介護食品や配食弁当が普及しているが、当製品も食事をより豊かにするツールになると自信をもって言える。

 ケアマネジャーや訪問介護、福祉用具事業所など在宅介護の担い手へ、より周知に努めていく。
(シルバー産業新聞2024年5月10日号)

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