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埼玉県の介護保険 全国トップスピードで後期高齢者が増加

埼玉県の介護保険 全国トップスピードで後期高齢者が増加

 埼玉県の人口は、2020年時点で、およそ727万人。それに対し、高齢者の数は198万人で、高齢化率は27.2%。全国平均28.9%と比較して1.7ポイントほど低く、現状では比較的「若い県」となっている。しかし、団塊世代が後期高齢者となる25年には、高齢者人口が203万人に、40年には230万人にまで増加し、高齢化率は34.2%となる見込み。中でも同県の場合は、後期高齢者の数が全国トップクラスのスピードで増加していくのが特徴で、40年には125万人に達する予想になっている。また、85歳以上の高齢者で見ると、20年時点の26万人に対し、40年時点は56万人と、全国で最も早いスピードで「倍以上」に増加する。同県では、85~89歳の要介護認定率では47.4%、90歳以上だと73.4%というデータになっており、今後、医療・介護ニーズの高い高齢者の急速な増加に、どう対応していくかが大きな課題と県高齢者福祉課の播磨高志課長は説明する。

日本の縮図とも呼ばれる埼玉県

 埼玉県は、首都に隣接し人口増加が続く地域や、郊外に市街地が点在し都市と田園が共存している地域、そして豊かな自然に包まれた魅力的な環境にありつつも人口減少や高齢化が進んでいる地域もあり、「日本の縮図」とも呼ばれるのが特徴。

 介護サービスの見込量を19年と40年で比較してみると、居宅サービスでは訪問介護が+65.7%、訪問看護が+82.4%、訪問リハ+73.5%、通所介護+53.6%、通所リハ+45.4%、短期入所+60.3%、福祉用具貸与+67.4%、定期巡回+148.5%、小規模多機能+86.0%、看多機+442.9%など、サービスが大幅に増加。特に医療系サービスが大きく伸びる見込みになっている。

 施設サービスも、特養が+60.1%、老健+48.5%、介護医療院+756.2%となっており、居宅サービスと同様、大きく伸びる見込みとなっている。

 全体として施設サービスよりも在宅サービスの見込量の伸びが高くなっている。ただし、地域によって、実情はまったく異なる。たとえば、秩父圏域の場合だと、人口が減少していく中で、高齢者の数も減っていくため、サービス量自体が減少する地域もある。佐竹誉主査は「地域によって、人口動態、高齢化率、地域資源の有無が異なるので、中長期的な視点で地域の実情に応じたサービスの基盤整備を進めていくことが重要」と話し、県としては、中長期的な観点から、今後の高齢化の状況やサービス見込量など、地域の事情を十分に踏まえた上で基盤整備を進めていく考えを強調する。
介護サービスの見込み量

介護サービスの見込み量

全国に先駆けて「ケアラー支援条例」を制定

 介護ニーズが急速に増加していく中、埼玉県では家族介護者らに対する支援にも取り組んでいる。20年3月には、全国に先駆けて「ケアラー支援条例」を制定し、ケアラーが孤立することのない社会の実現に向け、県の責任や事業者らの役割などを明確化。条例に基づいた「埼玉県ケアラー支援計画」を策定し、ヤングケアラーの支援体制の構築などにも乗り出している。

 また、地域包括ケアシステムの構築に向けては、「第7期から市町村の個別の状況に応じた、オーダーメイド型の支援も実施している」と坂弥生主幹。具体的には、地域包括ケアシステム構築に向け、3年間の行程表(ロードマップ)を市町村とともに作成し、それに基づいて市町村と意見交換を行って、個別の課題を共有。課題に応じて、県や社協の職員、理学療法士らの専門職などで構成する「地域包括ケア総合支援チーム」を派遣し、課題解決に向け、必要な支援を行っている。

 さらに、意見交換によって、市町村から聞き取った地域包括ケアシステム構築に関する工夫や好事例については、事例集としてまとめ、全市町村に提供。各市町村の先進的な取組を県内で共有するために、市町村職員や地域包括支援センター職員などを対象とした報告会についても、毎年開催している。

 「我々の施策の基本理念は『誰一人取り残さない』ということ。ケアラーの支援も、地域包括ケアシステムの構築も、目指しているところは同じ」と播磨課長。引き続き必要な取組や支援を行っていきたいと意気込んでいる。

(シルバー産業新聞2023年1月10日号)

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