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トップに聞く レイトロン吉田満次社長

トップに聞く レイトロン吉田満次社長

 特定用途向け半導体や電子機器などの設計・開発などを行うレイトロンは、6月にコミュニケーション・ロボット「Chapit」(チャピット)を発売した。同品は、高齢者などの自立した生活をサポートする対話型のロボットで、日常会話の受け答えのほか、ゲーム機能、スケジュール管理、音声リモコン機能などを備える。先ごろ、日本医療研究開発機構による「ロボット介護機器開発に関する調査」に使用する、コミュニケーション・ロボットの候補にも選定された。同社の吉田満次社長に、チャピット開発へかけた思いや今後の展開などを聞いた。

会話ロボで不便さ補い、生活意欲を高めたい

 特定用途向け半導体や電子機器などの設計・開発などを行うレイトロン(大阪市)は、6月にコミュニケーション・ロボット「Chapit」(チャピット)を発売した。同品は、高齢者などの自立した生活をサポートする対話型のロボットで、日常会話の受け答えのほか、ゲーム機能、スケジュール管理、音声リモコン機能などを備える。先ごろ、日本医療研究開発機構による「ロボット介護機器開発に関する調査」に使用する、コミュニケーション・ロボットの候補にも選定された。同社の吉田満次社長に、チャピット開発へかけた思いや今後の展開などを聞いた。

生活環境で実用に耐える音声認識技術

 当社は、人間の五感にあたる感覚を、半導体技術を用いて再現することを、開発テーマとしている。現在、様々な製品の根幹をなす要素技術として開発を進めている分野に、音声、映像、無線通信がある。音声は言葉の認識、映像は人の状態の認識・解析、無線通信は、例えば4K映像を圧縮せず伝送できる大容量のワイヤレス通信――とそれぞれ取り組んでいる。

 チャピットは、当社独自の音声認識エンジン「Voice Magic」(ボイス・マジック)を搭載し、様々な生活雑音のもとでも人間の声を高い精度で認識できる。約3m離れたところから話しかけても、しっかりと言葉を聞き取ることができ、話しかけてからわずか0.2秒で答えを返すことができる。

 外を走る車の音やテレビの音声など、様々な生活音に囲まれた環境で実用に耐えるコミュニケーション・ロボットとするために、あらかじめ登録された約500のフレーズについては、一般的な生活雑音のもとでも非常に高い認識率を持たせた。「おはよう」「照明つけて」など、一日の生活の流れや行動に沿って必要だと思われる言葉に絞り込んだ。

 従来の音声認識では、マイクから入る周囲の雑音をいかに除去するかで、認識率を高めようとしていたが、完璧に取り除くことは実際には難しい。そこで、雑音も混じった状態で一旦音を取り込み、そこから言葉を抽出する方式とした。これは、人間が様々な環境音の中から言葉を聞き取って認識すのに近い仕組みで、これにより認識率の向上が図れた。

アップデートや安否確認機能も付加

 チャピットは、高齢者の生活の自立を支えることと、衰えてきた生活機能をサポートすることの両面を目指して開発した。また、会話を促したりゲーム機能でのクイズや計算、暗記などにより、認知機能を維持したり、生活意欲を高めたりするなどの効果も期待している。話しかけるだけで作動するので、スイッチ操作など難しい操作は必要なく、会話さえできれば、どんな方にでも気軽に使ってもらえる。

 日常の会話だけでなく、テレビや照明、エアコンなどのリモコンを登録すれば、チャピットに話しかけるだけで電源のオン・オフ、調整などができる。また、食事や入浴、服薬の時間、ゴミの日や病院・デイサービスに通う日などスケジュールを知らせてくれる機能により、規則正しい生活リズムをサポートできる。

 約1年後には、チャピットのアップデートサービスを提供する予定。パソコンを使って、更新ファイルを専用サーバからダウンロードしてマイクロSDカードに取り込み、チャピットに装着すれば、認識できる言葉や話すフレーズ、クイズの出題内容、リモコン操作できる機器の更新などができる。

 また拡張機能として、日々の会話やリモコン操作などの使用状況を記録しておき、もし体調不良などでチャピットとの関わりがほとんどなかった場合などに、Wi―Fiによる通信を介して家族へ知らせるような仕組みも、2~3年後には実現したい。

見守りシステムの開発も

 今後は、高齢者の見守りシステムの開発も進める。主に独居の高齢者が転倒したり、体調が急変してうずくまったりするなどした場合に、それらの異常を自動で検出し、家族や介護職員などの携帯端末へ通知する。

 当社の要素技術の一つである画像認識技術により、意図して座り込んだり寝転がったりした場合と、異常の発生とを正確に区別することができる。

 本人にとって違和感やストレスなく、日々の生活に馴染んで何気なく見守ることができるシステムとしたい。
(シルバー産業新聞2016年7月10日号)

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