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ケアマネの負担減らし 働きやすい横浜目指す

ケアマネの負担減らし 働きやすい横浜目指す

 横浜市は横浜市介護支援専門員協議会(YCM)と連携して、ケアマネジャーの業務と役割についてまとめたリーフレットを昨年8月に公開した。市内のケアマネが減少する中で、ケアマネの負担軽減策の1つとして第9期計画の新規事業としてスタートした。利用者や家族の他、行政や医療機関などへのケアマネ業務の理解促進に繋げる。

 横浜市が作成したリーフレット「ケアマネジャーの業務と役割」はA4サイズ4頁で、ケアマネの役割、ケアマネの業務内容、ケアマネができない業務の3つについてまとめている。

 業務内容については▽ケアプランの作成▽定期的な訪問▽介護保険サービスの提案▽サービス事業者等との連絡調整▽サービス担当者会議の開催▽給付管理業務――を挙げる。

 ケアマネができない業務では、▽金銭管理▽通院介助▽連帯保証人や身元保証人――について対応方法と合わせて掲載。金銭管理では成年後見制度と日常生活自立支援事業、通院介助では訪問介護の利用、保証人関連では病院や行政への相談を促している。

 このほかケアマネの本来業務外の依頼事として▽携帯電話の操作や手続き▽害虫やネズミの駆除▽草むしり▽税金等の手続きや支払い――など8つを一例として挙げている。

 健康福祉局高齢健康福祉部高齢在宅支援課長の吉原祥子さんは「ケアマネの役割を正しく理解いただくことで、ケアマネが本来注力すべきケアマネジメント業務に今まで以上に携わることができると考えて作成に至った」と説明する。

 リーフレットに掲載している本来業務外の依頼は、横浜市介護支援専門員協議会(YCM)と連携して行った現役ケアマネへのヒアリングから依頼が多い内容をピックアップした。

 YCMの加藤由紀子代表理事は「本来業務外の依頼を受けた際、口頭でできないことを伝えていたが、『本当に業務外なのか、そのケアマネ個人の判断でできないといっているのか』と、なかなか理解していただけなかった」と振り返る。「横浜市と連名のリーフレットで『介護保険上できない業務』と明記されたことで、理解いただきやすくなった」と評価する。

 リーフレットは区役所の介護保険の相談窓口での制度説明、ケアマネから利用者への説明の場などで活用されている。ケアマネだけではなく、行政職員からも「利用者への説明に使いやすい」と好評だ。

 「利用者を平等に扱うためにも、私たちの業務の理解促進と、ケアマネ自身がきちんと断ることが大切。リーフレットを活用しながら、利用者との信頼関係を築いていきたい」(加藤代表)

他職種へのケアマネ業務の理解やスムーズな保険外との連携が必須

 YCMが会員のケアマネに行った調査によると、業務外の相談は▽部屋掃除▽知人の葬儀への代理参列▽公共料金の支払い▽ペットのお世話▽私的なメールの対応――など日常の困りごとの他、万引きをした際の警察からの連絡対応や、生活保護等の申請、緊急時の対応など多岐にわたる。

 横浜市では、趣味活動の場や日常生活のちょっとした困りごとをお手伝いする活動の情報などを検索できるウェブサイト「ヨコハマ地域活動・サービス検索ナビ」を運用。生活支援では▽買物支援▽ゴミ出し▽外出の付き添い▽草むしりや植木の手入れ▽話し相手――などについて実施団体や料金を検索でき、ケアプラン作成時等にも活用されている。

 リーフレットの作成に携わったYCМ制度対策委員長の松本由美さんは「本来業務外の依頼は説明した上でお断りし、訪問介護やその他サービスを提案しているが、命に関わる事案については、対応しているのが現実」と話す。

 例えば、身体機能や認知機能の低下で支払ができずに水道や電気などが止められた場合、夏や冬など時期によっては命に関わる危険があるため、ケアマネがコンビニに公共料金を支払いに行くこともあるという。

 「利用者だけではなく、行政担当者や医療関係者などより多くの人にケアマネの役割をしっかり理解していただく必要がある。また、介護保険外サービスの申請から実施まで数日~数週間かかることがほとんど。スムーズに活用できる仕組みも必要」と加藤代表は訴える。

 横浜市では、リーフレット公表に合わせて、生活保護などの担当課への説明も実施。また、地域資源の開発についても、地域ケア会議などで情報連携しながら検討していく。

 「現状は『ケアマネが対応してくれる』と思われてしまっている業務もある。ボランティアなのか、インフォーマルサービスとしての運用が必要なのか、ニーズをしっかり把握して支援に繋げていきたい」(吉原課長)

25年度中に改訂版を公開予定

 今回公表されているリーフレットは試行版で、実際に活用したケアマネにアンケートを行い、改訂版の作成に向けた検討を行っている。昨年12月に厚生労働省が取りまとめた「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会中間整理」の内容も反映した上で、25年度中に改訂版を公表する予定だ。

 また、横浜市が発行する介護保険総合案内パンフレット「ハートページ」内のケアマネの項目で、本来業務と役割の掲載に向けて進めている。介護申請の段階で行政担当者が説明しやすくなり、理解促進に繋げる狙いだ。

 吉原課長は「ケアマネにとって働きやすい環境が整えられるよう、横浜市としても今後様々な取り組みを進めていきたい」と語った。
(シルバー産業新聞2025年2月10日号)

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