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地域特集・兵庫 2040年以降も見据えて介護人材確保に注力

地域特集・兵庫 2040年以降も見据えて介護人材確保に注力

 兵庫県は南北に長く、日本海と瀬戸内海の両側に接する。都市部・山間・島嶼部といった文化・生活圏の多様性も特徴。高齢化の進むオールドニュータウンや、1995年の阪神淡路大震災以降盛んなボランティア活動も、現在では地域の見守りを担う人材が高齢化するなど取り組むべき課題も多い。

介護ニーズの地域差に向かい合う

 第8期介護保険事業支援計画(2021年度~23年度)の進捗は、22年4月時点で、8期末見込に対し特別養護老人ホーム92.9%(2万8054床)、介護老人保健施設94.4%(1万4913床)、介護医療院75.6%(1234床)の整備状況。

 兵庫県福祉部高齢政策課長の田畑司氏は「コロナ禍や建材・材料費高騰の中でも、概ね目標値は達成できそう。介護医療院も介護療養等からの計画的な移行によって、最終年度に達成が見込まれる」という。また、北部の但馬地域はニーズがすでにピークに近づいているのに対し、大阪府に隣接する尼崎市、西宮市、芦屋市、宝塚市などの阪神地域はニーズの増加が見込まれている。

介護生産性向上と人材確保・定着のために

 こうした状況下で8期支援計画の重点分野として▽地域の状況を踏まえた介護サービスの充実強化▽高齢者の自立支援・重度化防止▽医療・介護連携の推進▽介護人材の確保及び資質の向上並びに介護現場の生産性の向上▽災害・感染症対策の推進など、地域包括ケアシステムの更なる進化・推進――を掲げて取り組んできた。

 同課副課長の河部大氏は「コロナ禍で当初の予定通りに進めることが難しかった。新型コロナの5類移行もあり、最終年度で積極的に取り組んでいきたい」と語る。

 中でも重点的に取り組むのが人材確保。40年時点で20年度より介護職を3.5万人増加させるため、介護ロボットやICT活用などにより介護生産性を5%向上(必要人数6000人削減)させ、残りの2.9万人増加分を処遇改善や外国人材受け入れ、介護助手の採用施設の拡大などで乗り越えていく(表)。
介護職員の必要数の確保を目指しつつ、介護生産性を5%高めることで、着実に40年時点の必要数確保を目指す

介護職員の必要数の確保を目指しつつ、介護生産性を5%高めることで、着実に40年時点の必要数確保を目指す

年度内の介護生産性向上総合相談センター開設

 介護生産性向上は、国の介護ロボットプラットフォーム事業での「相談窓口」にも指定される社会福祉法人兵庫県社会福祉事業団「兵庫県立福祉のまちづくり研究所」(陳隆明所長)を軸に推進する。

 これまでも21年度に基本編、22年度に応用編(実機使用による伴走型支援)と取り組んできたが、23年度は国の推進する「介護生産性向上総合相談センター(仮称)」を開設し、ワンストップで各種制度・省庁横断の相談・支援が受けられる体制を整える。

地元好きな、幅広い世代の「介護助手」確保

 介護助手は「ひょうごケア・アシスタント」として、住み慣れた地域で働きたいあらゆる層に向けて、空き時間の活用を訴求するポスター・チラシを作成し、募集している。19年~22年は171施設・累計300人の介護助手が活躍している。「介護現場のタスクシフトと共に、活動を通じたフレイル予防の観点から、高齢者にも積極的に参加していただけるようにしたい」(田畑氏)と意気込む。

総合事業充実のための民間連携

 介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)は、多様な主体によるサービス提供や、通いの場の充実が全国的に課題となっているが、同県では、県内民間事業者・団体を県が支援する形で拡充を目指す。

 たとえば買い物支援として、共同購入・訪問販売を展開する民間と協力し▽訪問販売サービスの会員となってもらい食材・日常生活用品等の買い物をしやすくする▽「通いの場」を会場に訪問販売を行い、地域高齢者の参加意欲を高める――など、買い物を通じた社会とのつながり作りを促進する。

 ほかにも、住民主体の訪問型サービスB拡充のために、シルバー人材センターから人材を派遣してもらうことや、共生型助け合い活動の拡充を老人クラブの協力を得ながら進める。

ハラスメント対策強化で働きたい職場に

 今働いている介護職員の働きやすい環境を整えるため「介護職員のハラスメント対策」も実施する。

 訪問先でのハラスメント被害対策のため▽「2人訪問補助」(29市町で実施)として、2人訪問の必要があるものの、本人や家族に加算の同意が得られない場合に加算相当額の3分の2を補助▽「1人訪問補助」(6市町で実施)として、2人訪問体制が難しい事業所に、安全対策に要したセキュリティシステム導入費用の一部を補助――などを実施する。

外国人材の「層の厚み」目指す

 外国人材の確保・定着のための取組としては▽「外国人介護人材受入促進事業」として、初めて外国人を受け入れる不安を払拭するためのセミナーを開催▽「特定技能外国人の資格取得支援」として、最長5年を超えて長期定着してもらうため、介護福祉士資格取得に必要な経費を補助する(上限20万円/施設)▽「外国人留学生の進学促進」として、日本語学校の留学生を対象とした介護福祉士養成校への進学促進のための進路説明会(オンラインとのハイブリッド)開催経費を支援する――などの支援策を講じる。

 「兵庫県に永住して働いてもらえるような支援策を充実させる。人材の層が厚くなれば、新人などの職場での悩みや相談にも応じてもらいやすくなる。定着率も向上するのではないか」(河部氏)。

人材確保の難しい地方部への支援

 地方部への支援では、「福祉の職場体験事業」の一環として、北播磨・西播磨・但馬・丹波・淡路地域の福祉施設を対象に、見学や実際の仕事の流れを体験してもらうイベントへの補助金(補助率2分の1)を整備。交通費2万円まで、宿泊費1泊4000円まで(最大5日間)などを補助する。

 「介護人材確保と介護生産性向上の取組は、次期9期支援計画以降も重要なテーマとなると考えている。8期最終年度の今年度から、しっかりと取り組んでいきたい」と田畑氏は中長期的展望に基づいて、事業支援を推進していく考えを説明した。

(シルバー産業新聞2023年6月10日号)

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