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静岡県の介護保険 切れ目のないリハビリ、居場所づくりを推進

静岡県の介護保険 切れ目のないリハビリ、居場所づくりを推進

 人口364万人の静岡県は昨年4月に高齢化率30%を超えた。今後さらなる高齢化を見据え、県では介護保険事業支援計画に基づく取組みを進めている。全国共通の課題である人材確保をはじめ、切れ目のないリハビリテーション提供、居場所づくりなどに力を注ぎ、健康長寿「ふじのくに」を目指す。

今期計画、初年度の「達成率」68%

 介護保険事業支援計画、老人福祉計画の位置づけの「第9次静岡県長寿社会保健福祉計画」では、①誰もが暮らしやすい地域共生社会の実現②健康づくりと介護予防・重度化防止の推進③在宅生活を支える医療・介護の一体的な提供④認知症とともに暮らす地域づくり⑤自立と尊厳を守る介護サービスの充実⑥地域包括ケアを支える人材の確保・育成――が施策の柱に置かれている。

 計画には、計画期間中(2021~23年度)に実施すべき取組みとして、378の「具体的な取組み」を書き込んだ。このうち366の取組みは初年度中に実施されている。未実施の取組みも、コロナ禍の影響で開催できなかった研修などで、今年度には実施予定だ。さらに、同計画では88の数値目標も設定されている。初年度の「達成率」は68.8%と7割近い上々の滑り出しとなったが、一方で、コロナの影響などで数値が低下した指標も11あった(下表)。県では評価指標の進捗を県の「社会福祉審議会老人福祉専門分科会」へ報告し、必要な見直しを行い、一層の推進を図っていく。
介護保険事業支援計画に位置付けた数値目標の状況(2021年度実績)

介護保険事業支援計画に位置付けた数値目標の状況(2021年度実績)

未資格者や復職者の雇用・育成を支援

 「⑥地域包括ケアを支える人材の確保・育成」は今期の計画から柱の一つに置いた。19年度時点の県内の介護職員数は5万4310人。23年度の目標値には需要推計と同じ5万9449人に設定している。

 目標に向けた施策の一つとして、事業者の直接雇用を支援する取り組みに「介護人材育成事業」がある。介護未経験者の採用と育成を両面で支援する事業だ。介護系の資格を持っていない人と受け入れ事業者をマッチングし、2カ月半の有期雇用契約を結んでもらう。応募者は働きながら、介護職員初任者研修を受講。2カ月半の有期雇用にかかる人件費や初任者研修の受講費は県負担だ。今年度は、有期雇用後に正式採用される人数を120~140人と見込む。過去2年間も平均140人ほどが直接採用に繋がった。

 「介護職経験者復職支援事業」でも年間100人超の直接雇用を支援している。結婚や出産などを理由に離職した介護職経験者に、復職前研修や就職先とのマッチングなどで、復職を支援する。今年度も現在のペースで進めば目標の100人をクリアする見込みだ。

外国人介護職員「読解力」に課題

 県の調査(回答率33.3%)によると、昨年10月時点で、県内の介護事業所で働く外国人介護職員は886人で過去最多。県でも外国人介護人材の定着をサポートする。同調査で事業者に聞き取ったところ、外国人介護人材の「読解力等」を課題に挙げる事業所が65.7%と最も多かった。2番目に多い「会話等」(28.1%)と比べても大きな開きがあり、読み書き、介護記録・引き継ぎなどで課題を感じているケースが多いことが伺える。こうした背景から、県では日本語読解力向上講座の開催などを実施している。また受け入れが多い国では、出身国別での職員向けの交流会なども行う。遠く離れた日本で働く外国人職員に励まし合いながら仕事に向き合えるようなコミュニティづくりを支援する。

 外国人留学生についても、県独自の補助制度を展開している。留学生の場合、来日後まず日本語学校に2年通学して、その後介護福祉士養成校で学ぶケースが多い。地域医療介護総合確保基金のメニュー(外国人留学生支援事業)では、留学生にかかる日本語学校の学費等を補助するが対象期間は1年間に限られる。同基金での事業と県の独自事業を併用することで2年間分の補助が受けられ、学びやすくなる。

 ICT導入支援事業での補助実績は、23年度に累計1300事業所を目標に置く。昨年度の単年度実績だけでも408事業所に上り、現時点で「達成可能性あり」の評価をしている。来年度以降もICT導入などによる働きやすい職場づくりの取組みを進める。

C型実施や専門職派遣、全市町実施へ

 ②「健康づくりと介護予防・重度化防止の推進」では、予防期、急性期、回復期、生活期の各段階を通じて、多職種・多機関が連携した切れ目ないリハビリテーション提供を目指している。計画では、23年度までに▽通いの場に歯科衛生士、管理栄養士が関与している▽訪問または通所サービスC型などの短期集中予防を実施している▽高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に取り組む▽地域ケア会議にリハビリ専門職が関与している――の全市町での実施を目標とした。

 目標に向けて、県では通いの場や地域ケア会議で活動するリハビリ専門職、歯科衛生士、管理栄養士など専門職を育成する研修会を実施するなどにより、派遣件数は、年々増加している。市町・地域包括支援センターと専門職との間で顔の見える関係ができることにより、両者で連携が図れるようになっている。

 生活期のリハビリテーションとして、在宅復帰後の継続したリハビリのため、「退院直後のC型サービスの利用促進」を具体的な取組みとして位置づけるが、現時点でも課題がみえてきた。19年度時点で、訪問か通所のC型サービスに取り組む市町は35のうち24。経営的な面からそもそも担い手がみつからない市町もあるし、「C型でなくても、通いの場や他のサービスでいい」というケースもある。C型の基盤づくりや位置づけの整理が課題となっている。

「通いの場」拡大、コロナ禍の工夫をガイドブックに

 通いの場は20年度時点で4475カ所。高齢者人口に対する参加率は7.6%で、通いの場の数、参加率ともに年々増加・上昇している。ただ新型コロナウイルスによる20年4月の緊急事態宣言が出された当時、およそ8割の通いの場が活動を休止した。そうした中でも、電話での声かけや体調チェック、弁当の宅配、人数制限をするなど、それぞれが工夫を凝らして、地域の居場所や繋がりを守ってきた。

 こうしたコロナの中で生まれた取り組みやアイデアなども含め、県で今年1月に「こんな『いい場所』つくりませんか?~ふじのくに型福祉サービス居場所事例紹介ブック」を作成した。これから居場所を始める方の参考にしてもらうのが狙いだ。好事例の横展開などを図り、23年度の目標である通いの場5500カ所を目指す。
(シルバー産業新聞2023年3月10日号)

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