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周辺業務のテクノロジー活用で生産性の向上へ

周辺業務のテクノロジー活用で生産性の向上へ

 慢性的で深刻な人材不足が進む介護業界では、介護施設に普及し始めた見守りセンサーや移乗支援機器、インカム、タブレット画面で実績入力・データ同期できるシステム、音声入力のできるアプリケーションなどのICT機器など、介護ロボットやICT導入による生産性向上やペーパーレス化、デジタル化が加速している。そうした取り組みはバックオフィス業務やシフト管理など周辺業務の効率化に向けた新製品・サービスとしても広がりを見せている。

介護ロボ・ICT同時導入で「付加価値生産性」向上へ

 注目を集める介護ロボット・ICT機器は、2013年策定の「介護ロボット重点分野」(厚生労働省・経済産業省、17年改訂で「6分野13項目」)を中心に、インカムやタブレットなどのICT機器の導入が進んでいる。

 導入支援のための厚労省の補助金「介護ロボット導入支援事業」「ICT導入支援補助金」(ともに地域医療介護総合確保基金のメニュー)が認められることがその背景にあるが、介護ロボットとICT機器を一体的に活用することでより高い効果が期待できることから、同時導入を支援する厚労省の考えもある。

 一方で、介護現場には「ロボットに介護はできない」「かえって手間がかかる」など懐疑的な見方が多いのも事実。
こうした指摘に対し、厚労省「介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォーム事業」(委託運営:NTTデータ経営研究所)では、介護サービスの質向上と負担軽減、生産性向上の3つを同時に達成するため介護ロボット・ICT機器活用という点を強調している。

 介護ロボット・ICT機器の主な役割は「時間を創出すること」で、その時間を使って▽個別ケアを前提とした自立支援介護の実践▽科学的介護で重視される科学的介護情報システム(LIFE)の取り組み強化▽技術向上のための研修会参加――などに還元されることを見越した「付加価値生産性」を期待するというもの。
職員数10人の訪問介護事業所の例

職員数10人の訪問介護事業所の例

アルコールチェック義務化でどうなる「直行直帰」

 警察庁の道路交通法施行規則の変更により白ナンバーであっても、業務で自動車を5台以上保有もしくは一定台数保有する事業者に①管理者による運転者の酒気帯び確認と記録保管②アルコール検知器による運転前・後の酒気帯び確認――が義務化された。そのうち②については、アルコール検知器の供給不足のため、現在は「当面の間は猶予」とされているが(記録保管義務は施行中)、将来的に完全実施となれば、登録ヘルパーや夜間対応型、随時対応型の直行直帰の働き方が変わってしまうおそれもある。

 カー用品販売大手のオートバックスセブン(東京都江東区、堀井勇吾社長)は、自家用車(白ナンバー車)を業務で使用する介護事業者に向け、クラウド上で▽アルコールチェックの記録・管理▽サービス提供責任者と介護職員の連絡――ができる「ALC(エー・エル・シー)クラウド」の提供を始めた。

 オンラインアライアンス事業開発部の江田雄二課長は「運転前後のアルコールチェックの義務化は、介護事業者の直行直帰に影響を与えかねない。事業所のスタッフにも介護保険以外の管理業務の手間を求めることになる。その両方を解消するため、クラウド型サービスの活用を提案している」と新サービスの狙いを説明する。

 サービス概要は、①システム利用にあたって運転者にIDを付与②コンパクトなアルコールチェッカーを利用③運転前後に息を吹きかけることでクラウドに結果が報告・記録できる――というもの。介護事業所の管理者のメリットとして、測定結果が即時メール連絡として来ることで遠隔でも確認・承認が可能であり、それら記録の1年間の保管義務について、クラウド上で記録・管理されるため業務軽減、ペーパーレス化が実現できる。

 介護保険サービスでは、通所・介護施設サービスの送迎車両のほか、福祉用具貸与事業所や訪問サービスなど、自家用車を使用する場面が多い。特に拘束時間の少ない自由な働き方を求める登録ヘルパーや、夜間対応型や随時対応型サービスなどで、クラウド型の酒気帯び確認の導入により直行直帰が継続できる点で、注目を集めそうだ。

 また、パソコンやスマートフォンのシステム画面を起動させれば、乗車予定時刻や降車予定時刻のほか(今後アップデート予定)、事業所からの「ルート変更」「サービス中止・追加」連絡などの受け取りや、運転者からのメッセージ送信ができる。

 双方向のコミュニケーションができることから、シフト管理システムとして、ICT導入支援補助金が認められる可能性もある(都道府県判断によるため要確認)。

 江田氏は「酒気帯びチェックの義務化は警察庁管轄のため、介護現場には現時点で周知が低いかもしれない。ただ、シフト管理やバックオフィス業務の負担軽減と一体的に考えて、利用いただきたい」と話す。

道交法改正によるアルコールチェック義務化とは?

 2022年4月1日より施行された改正道路交通法施行規則では、安全運転管理者に対し、運転前後の目視等による酒気帯び確認、および結果の記録・保存が義務付けられた。さらに、今後はアルコールチェッカーを使ったチェック義務も発生(「当面の間は猶予」のため義務化時期は未定)。

 対象事業者は、猶予期間中であっても、目視等での酒気帯び確認や記録保持などの義務化規定を遵守するほか、できるだけ早期にアルコール検知器を必要数入手できるよう努めなければならないとされる。

測定結果をクラウド管理 オートバックスセブン「ALCクラウド」

 クラウド管理型の携帯アルコールチェッカー。運転前後のドライバーの酒気帯び状態をチェックし、データをクラウド上で管理することができる。

 専用アプリからBluetoothでスマートフォンと接続した本体(写真左)に息を吹きこむだけで測定が完了。結果は管理者へ自動でメール通知される。場所や時間を問わず利用でき、直行直帰や遠隔地での検査も可能。また、スマホカメラと連動しており、測定時の顔写真とデータがクラウド上に即時アップされるため、なりすまし対策も万全。

 管理者は内容をチェックし確認ボタンを押すだけで、確認者名や日時など保存が必要な8項目がデータとして記録される。

 本体価格は1台あたり1万1000円(税抜)。スティック型で持ち運びやすく、複数人での共有利用も可能。専用マウスピース付属。

 ドライバー全員に必要な識別IDは1人あたり800円/月(税抜)~。ID利用数に応じた割引もあり。

 問合せは同社アルコールチェッカーサポートセンター(TEL0800-222-3045)まで。

(シルバー産業新聞2023年3月10日号)

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