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「介護予防支援費の増額」など、次期改定で厚労大臣へ要望

「介護予防支援費の増額」など、次期改定で厚労大臣へ要望

 東京都介護支援専門員研究協議会(小島操理事長)は、次回の介護報酬改定に向けて「令和3年度介護報酬改定に関する要望書」を作成し、9月30日付で厚生労働大臣、田村憲久宛に送付した。

 現在、社会保障審議会、介護給付費分科会では、次期改正に向けて「地域包括ケアシステムの推進」「自立支援・重度化防止の推進」「介護人材の確保・介護現場の革新」「制度の安定性・持続可能性の確保」の観点から様々な検討が行われているとし、5項目の要望を掲げた。小島理事長は、「社会保障審議会で検討される介護支援専門員に関することに絞っての要望を、専門職団体として出させていただいた」と話す。

要望項目は、①居宅介護支援費の増額②介護予防支援の報酬上の評価③給付実績に結びつかないケアマネジメントの評価④特定事業所加算Ⅰ(重度要介護者等対応要件基準)の緩和⑤運営基準に関するローカルルールの排除、是正――の5項目。

 居宅介護支援の受給者数は年々増加し、費用額も増加しているが、事業者の収支差率はマイナスの状況が続いている。請求事業所数は横ばいで、近年、顕著に介護支援専門員の希望者も減少している。その減少要因としては、ケアマネジャーの仕事が医療との連携や、地域の多様な資源の活用など役割が増加していること等を挙げ、役割と働きに対する正当な対価を求めた。要望の具体的な数値も挙げた。

介護度に関わりなく、103単位の報酬増を求める

 同会では、近年の調査結果から、都内の介護支援専門員の担当状況を分析。平均して要介護1、2を16人、要介護3~5を11人程度担当し、これを都内1級地で算出すると、報酬額が36万5000円。35人を担当した場合の報酬額は47万2000円程度。この数値は国税庁発表の民間給与実態統計調査(2018年分)で公表する、東京都の平均給与額の512万9000円/年額に及ばない金額である。

 これに、収入に対する給与費割合83.4%で算出すると、事業所は介護支援専門員1人当たり、月に51万3000円程度の介護報酬を得る必要がある。その結果、「当会は、如何なる規模の事業所であれ、人員基準の35人を担当した際には、東京都の平均給与額に達する程度の報酬が得られるよう、居宅介護支援費(Ⅰ)について、介護度に関わりなく103単位の報酬増を求めます」とした。

介護予防支援の報酬上の評価

 地域包括が担う介護予防ケアマネジメントに関しては、外部委託を行いやすい環境整備が不可欠とし、受託する居宅介護支援事業所の介護予防支援費の報酬増額を求めた。その背景には地域包括の業務負担軽減と、外部が受託を行いやすい環境の整備が必要だとし、具体的な数値も挙げた。

 介護予防支援の実際の業務は、ケアマネの訪問回数は1か月以内に1度が9割程度あること、1人当たりに要する時間に要介護者支援と同等あるいは上回る時間を要していること、インフォーマルサービス数のケアプランへの位置づけが多いこと、居宅介護支援にはある入院時情報連携加算も退院・退所加算がない事などを挙げ、「居宅介護支援費[要介護1、2]相当となるよう介護予防支援に対し、初月1057単位/月+初回加算300単位(要望1の内容が反映された際は+103単位)、翌月以降1057単位/月の報酬を求めます」とした。

給付実績に結びつかないケアマネジメントの評価など

 インフォーマルサービスを含む介護保険制度を超えた居宅サービス計画の作成が求められていることから、給付管理を伴わないケースでも支援できる体制を求めた。具体的には「居宅介護支援事業所を地域包括支援センターの(報酬を伴う)支援機関として位置付けるなど地域支援事業で評価すること」とした。これまでも問題視されてきた、給付に結びつかない相談支援について理解を求めた。

 ④特定事業所加算Ⅰの緩和については、同会の調査で加算要件のうち「要介護3~5の利用者割合が百分の40以上」が取得を阻んでいることを把握。利用者の介護度が改善されることが減算のリスクに繋がる現状を、介護度の改善が評価される仕組みに転換することを求めた。また、⑤運営基準に関するローカルルールの排除、是正については、保険者の解釈の違いにより、事業所の運営や特定事業所加算取得のハードルになっている等を指摘し、厚労省に実態の把握と早期是正を求めた。

 当会事務局長の蔵本博樹氏は、「制度検討委員会では、次回報酬改定の議論中であることから、当会にとって重要と考える項目を選んだ。根拠をしっかり示して要望をあげた。現場の負荷を理解して頂き、受け持ち件数など現状は維持して、報酬改善等を要望した」と話している。

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