インタビュー・座談会
「レンタル卸から高齢者の生活支援企業へ飛躍する」 日本ケアサプライ金子博臣社長
介護保険制度の創設に合わせ、日本に福祉用具レンタル卸という事業モデルを創り出した日本ケアサプライ。創立20周年を節目に社是を見直し、レンタル卸から生活支援企業への飛躍を目指す。同社の金子博臣社長に聞いた。
――昨年3月に創立20周年を迎えた。
弊社は98年3月の創立以来、福祉用具レンタル卸という新しい事業モデルを生み出し、「高齢社会への貢献」との社是のもと、安心・安全な福祉用具の供給に努めてきた。おかげさまで、昨年3月に20周年を迎えることができ、福祉用具を通じて「高齢社会への貢献」に寄与できた部分も大きいと思っている。これから先を見据え、20周年を機に、社是を「健康長寿社会への貢献」に改めた。高齢社会と違い、健康長寿社会というのは、そこに意志がない限り実現しないものである。当社は福祉用具レンタル卸を軸としながらも、新たな取り組みを積極的に進め、健康長寿社会の実現に寄与できる企業になることを目指している。
――「健康長寿社会への貢献」に向けた新しい取り組みとは。
インターネットを通じて高齢者の生活に必要な物品を販売する事業や、食事サービスを提供する事業などに取り組んでいる。福祉用具レンタル卸から、高齢者の生活支援企業へと飛躍していくイメージだ。特に食事サービスでは、施設やデイサービスなどにお届けする「バランス弁当(冷凍)」が、介護現場の人手不足を背景に注文が増えている。栄養バランスに優れ種類が豊富で、調理は専用のスチーマーもしくは電子レンジで温めるだけで良く、早朝の時間帯や急なスタッフの退職など、人材確保がままならない時に活用できると好評だ。健康寿命の延伸には栄養が極めて重要な要素であり、こうした取り組みを広げていくことが、健康長寿社会の実現に寄与していくはずだ。
――福祉用具レンタル卸事業について。
従来は福祉用具の品揃え、出荷品質、価格などで他社との差別化を図ってきたが、なかでも当社が力を入れているのが、ICTを用いた福祉用具貸与事業者の業務負担の軽減だ。複数用具の提案や全国平均価格の説明を含む選定提案書の作成など、制度の見直しによって、福祉用具専門相談員の業務負担は大幅に増えている。そこの負担をいかに軽減できるかが、今後も発展的に福祉用具貸与事業を継続していくポイントになると見ている。我々の業務支援ツール「e―KaigoNet」シリーズを使ってもらえれば、請求業務はもちろんのこと、出先でサービス計画書の作成なども行えるようになる。
さらに7月からサービスを開始した「e―KaigoNet Look」では、スマートフォンのカメラを使って、カタログに記載されたTAISコードを写すだけで、全国平均価格などの情報を簡単に表示することができ、法令に則ったサービス提供が簡単に行えるようになる。こうしたツールをうまく活用することで、業務の効率化が図られ、福祉用具専門相談員1人当たりの生産性の向上につなげられるようになる。
――最近では人工知能(AI)が、ケアプランを提案するサービスも出てきている。
AIについては、我々も非常に関心を持っている。そこについては当社だけでなく、親会社の三菱商事とも連携して、どのような活用の方法があるのかを探っている。ただ、はき違えてはいけないのが、開発されるものが福祉用具専門相談員の専門性そのものを低下させるようなものであってはいけないという点だ。AIやICTは、「専門性を向上させるために用いる」という視点がなければいけないと思っている。
――9月には中国の福祉用具レンタル事業会社に出資している。
中国では、政府が全国主要都市で、それぞれの地域事情に合わせた介護支援制度の施行を促している。その中で、江蘇省の南通市が住民から保険税を徴収し、福祉用具レンタル制度を実施することを決めた。当社では、昨年1月から現地の事業法人「華録健康養老服務南通有限公司」とアドバイザリー契約を結び、福祉用具の回収・洗浄・消毒・修理など、一連の福祉用具レンタルのノウハウを提供してきた。今後、中国各地で福祉用具レンタルが拡大していくことを見据え、その第一歩として、同社の持ち株を30%取得し、中国での福祉用具レンタル事業へ本格的に参入していくことを決めた。日本で培われた福祉用具レンタルの良さを海外にも広めていきたい。
弊社は98年3月の創立以来、福祉用具レンタル卸という新しい事業モデルを生み出し、「高齢社会への貢献」との社是のもと、安心・安全な福祉用具の供給に努めてきた。おかげさまで、昨年3月に20周年を迎えることができ、福祉用具を通じて「高齢社会への貢献」に寄与できた部分も大きいと思っている。これから先を見据え、20周年を機に、社是を「健康長寿社会への貢献」に改めた。高齢社会と違い、健康長寿社会というのは、そこに意志がない限り実現しないものである。当社は福祉用具レンタル卸を軸としながらも、新たな取り組みを積極的に進め、健康長寿社会の実現に寄与できる企業になることを目指している。
――「健康長寿社会への貢献」に向けた新しい取り組みとは。
インターネットを通じて高齢者の生活に必要な物品を販売する事業や、食事サービスを提供する事業などに取り組んでいる。福祉用具レンタル卸から、高齢者の生活支援企業へと飛躍していくイメージだ。特に食事サービスでは、施設やデイサービスなどにお届けする「バランス弁当(冷凍)」が、介護現場の人手不足を背景に注文が増えている。栄養バランスに優れ種類が豊富で、調理は専用のスチーマーもしくは電子レンジで温めるだけで良く、早朝の時間帯や急なスタッフの退職など、人材確保がままならない時に活用できると好評だ。健康寿命の延伸には栄養が極めて重要な要素であり、こうした取り組みを広げていくことが、健康長寿社会の実現に寄与していくはずだ。
――福祉用具レンタル卸事業について。
従来は福祉用具の品揃え、出荷品質、価格などで他社との差別化を図ってきたが、なかでも当社が力を入れているのが、ICTを用いた福祉用具貸与事業者の業務負担の軽減だ。複数用具の提案や全国平均価格の説明を含む選定提案書の作成など、制度の見直しによって、福祉用具専門相談員の業務負担は大幅に増えている。そこの負担をいかに軽減できるかが、今後も発展的に福祉用具貸与事業を継続していくポイントになると見ている。我々の業務支援ツール「e―KaigoNet」シリーズを使ってもらえれば、請求業務はもちろんのこと、出先でサービス計画書の作成なども行えるようになる。
さらに7月からサービスを開始した「e―KaigoNet Look」では、スマートフォンのカメラを使って、カタログに記載されたTAISコードを写すだけで、全国平均価格などの情報を簡単に表示することができ、法令に則ったサービス提供が簡単に行えるようになる。こうしたツールをうまく活用することで、業務の効率化が図られ、福祉用具専門相談員1人当たりの生産性の向上につなげられるようになる。
――最近では人工知能(AI)が、ケアプランを提案するサービスも出てきている。
AIについては、我々も非常に関心を持っている。そこについては当社だけでなく、親会社の三菱商事とも連携して、どのような活用の方法があるのかを探っている。ただ、はき違えてはいけないのが、開発されるものが福祉用具専門相談員の専門性そのものを低下させるようなものであってはいけないという点だ。AIやICTは、「専門性を向上させるために用いる」という視点がなければいけないと思っている。
――9月には中国の福祉用具レンタル事業会社に出資している。
中国では、政府が全国主要都市で、それぞれの地域事情に合わせた介護支援制度の施行を促している。その中で、江蘇省の南通市が住民から保険税を徴収し、福祉用具レンタル制度を実施することを決めた。当社では、昨年1月から現地の事業法人「華録健康養老服務南通有限公司」とアドバイザリー契約を結び、福祉用具の回収・洗浄・消毒・修理など、一連の福祉用具レンタルのノウハウを提供してきた。今後、中国各地で福祉用具レンタルが拡大していくことを見据え、その第一歩として、同社の持ち株を30%取得し、中国での福祉用具レンタル事業へ本格的に参入していくことを決めた。日本で培われた福祉用具レンタルの良さを海外にも広めていきたい。
(かねこ・ひろおみ)
東京都出身。81年一橋大卒業、三菱商事入社。01年日本ケアサプライ営業部長、09年三菱商事ヒューマンケア・メディア本部ヘルスケアユニットマネージャーなどを経て、10年5月から現職。日本福祉用具供給協会理事。
東京都出身。81年一橋大卒業、三菱商事入社。01年日本ケアサプライ営業部長、09年三菱商事ヒューマンケア・メディア本部ヘルスケアユニットマネージャーなどを経て、10年5月から現職。日本福祉用具供給協会理事。
(シルバー産業新聞2019年10月10日号)