インタビュー

専門性を活かす好機に 全国福祉用具専門相談員協会 岩元文雄理事長

専門性を活かす好機に 全国福祉用具専門相談員協会 岩元文雄理事長
 ――まもなく福祉用具専門相談員研究大会が開催されますが。

 昨年度開催予定だった第2回研究大会を1年延期し、いよいよ今年6月開催の運びとなった。今年度は会場とオンラインを組み合わせた研究発表等の実施を予定しており、全国各地から参加しやすくなったのではないかと思っている。

 私は研究大会のように「発表の場が用意されていること」の重要性に注目している。専門相談員が発表に備えて考え、思考をまとめることが専門性の向上につながると思うからだ。また、そういった場に参加して聴講することで、自身の仕事に活かせるようになる。

 注目のテーマは盛りだくさんだが、そのうちの一つに「バーセル・インデックス(BI)導入による福祉用具導入を含むサービス全般の効果測定の試行」がある。

 ADLを量的に評価するための代表的な指標であるBIは、科学的介護促進を目指した「LIFE」でも主要なデータ提出項目となっているが、専門相談員もBIを意識した福祉用具の選定・モニタリングを試行する発表だ。

 例えば、平地歩行の評価項目において、現状では「介助レベル」の10点であるが、歩行器や杖を使用することで「自立レベル」15点の向上した効果判定となる。また、歩行することができないが、車いすを利用することで「車いす駆動レベル」の5点の判定となるため、より高いレベルのADLの実現を目指した福祉用具提案ができるからだ。その数値化された結果を見て、新たな提案ができる点で、福祉用具サービスのPDCAサイクルを科学的に進めやすくなる。

 数値化できることで、多職種連携の意味でも、在宅に関心をもつOT、PTからアドバイスをいただきながら進めやすくなってきているのではないか。

 ほかにも地域、多職種連携への取り組み、新型コロナ感染症に対応する取り組みなど数多くのテーマが予定されているので、会場でも、オンラインでも奮って参加いただきたい。
 ――2021年改定で福祉用具専門相談員の専門性に対する評価が高まったと感じますが。

 一定の評価を頂いたことは喜ばしいことだ。福祉用具専門相談員(以下「専門相談員」)が参加するカンファレンスが居宅介護支援事業所「退院・退所加算」などの要件に明文化された。つまりケアマネジャーの情報連携先である介護施設等から、退所時に福祉用具や住環境整備に関する専門家として参加要請をいただく機会が増えることが期待できる。

 カンファレンスで、必要に応じて助言ができる職能として専門相談員が認められたことは大きなステップアップだ。医療機関に地域連携室の設置が広がるなど、主体的・積極的にかかわりやすい環境も整ってきた。

 専門相談員が関わることの重要性・有効性は、14年度の老健事業「介護保険の福祉用具サービスにおける専門職の関与と適切なケアマネジメントに関する調査研究事業」報告書(日本作業療法士協会)でも示されたが、今回の改定でそれが制度に明確に位置付けられたというわけだ。
 ――チームケアの一員に明確に位置づけられたことが、重責に感じる専門相談員も多いと思います。

 国はチームケアを重視していて、その中に専門相談員も位置づけられた。カンファレンス慣れした多職種が集まる場に参加するにあたって、当会でも、基本的で重要な点をまとめた書籍を作成している。

 こうしたツールも活用いただき、福祉用具の専門家として多職種連携を図ってもらいたい。
 ――カンファレンス参加に対する専門相談員への報酬上の評価がないことを指摘する声もあります。

 そうした指摘も承知している。ただ、多くの専門相談員は退院・退所時のカンファレンスに参加したいと思うはずだ。
 なぜなら本来、専門相談員は「よりよいアセスメントをして、最適な福祉用具や住環境整備を提案したい」と考える職業人だからだ。「どのような疾病があり、予後はどうか。これまでどのようなリハビリに取り組まれて、今現在できることは何か」など、利用者の背景が知りたいと思う。多くの専門相談員は、そうした職責を担っていると理解いただけているだろう。

 同時に、意見を伺い、意見を言える関係は、良い意味で専門相談員の刺激にもなり、専門性の高い提案のためには勉強をしないといけなくなる。少なくとも「言われた通り届けるだけ」ではないということだ。お客様との接点は、今後ますます病院・施設等のリハ室から始まると思う。事業者規模の大小に関係なく、お声かけがあればカンファレンスに参加することが当たり前になるだろう。
 ――福祉用具の安全な利用のために専門相談員の果たす役割も、改定のポイントですね。

 公的機関から一般ユーザーに事故情報がもたらされるが、その情報を専門相談員が利用者に伝え、情報活用を推進することが期待されている。現状では、福祉用具事業者でも情報感度という意味では、専門相談員によって温度差がある状態だ。

 当会としては、福祉用具専門相談員更新研修(ふくせん認定)等の受講を通じて、一人でも多くの専門相談員に新製品情報や、刻々とアップデートされる事故情報に触れてもらうことが重要と考えている。

 安全な製品設計なのに想定外の使用法などにより事故が発生してしまう。「考えもしなかったが、危険だな」と気づいた専門相談員が速やかに情報をフィードバックすることで、他の専門相談員と情報共有できれば事故の未然防止という意味で効果的だと考えるからだ。

 国が検討をしている指定講習カリキュラム見直しで、初任者に「事故情報はキャッチアップして、フィードバックすることが同様の事故を起こさないために有効である」ということを学んでもらい、ベテランにも更新研修で最新の事故情報などに触れてもらうことは非常に有効だと考えている。

 また、20年度の厚生労働省介護保険担当課長会議で高齢者支援課はハンドル形電動車いすの安全性に関する取り組みを上げていたが、これに対応するため、当会では20年度の老健事業で、専門相談員がハンドル形電動車いすを貸与する際に利用者の安全利用に係る考え方やポイントを整理したガイドラインと指導手順書を作成した。成果物はホームページに掲載している。

(シルバー産業新聞2021年6月10日号)

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